裏工作 前編 ~狙われたフローミルの氷杖~
さてと、そろそろ盗賊ギルド潜入の仕事を再開しよう。
スクリーヴァに認められるまで、小出しでアイレイドの壷や花瓶を盗品商に売りさばいていくのだ。
「それじゃあ盗賊ギルド潜入してくるから、留守番よろしく」
「はぁい」
緑娘も魔術師ギルドでウォーロックに昇進したのだから、その地位を楽しめばよいのだ。
もっとも、仕事を押し付けられるぐらいだけどな。
そんなわけで、単身ブラヴィルへと向かうことになった。
………
……
…
ブラヴィルもジメジメしたところだったが、カヌルス湖の町を体験した今となっては大した事無い。
向こうは湖の上に作った集落、まさにアルゴニアン専用と言った町だったからね。
スクリーヴァは宿に居なかったので、自宅へ赴くことにした。
「おじゃましまくります」
「誰か? ああ、こそ泥のラムリーザ」
「違う……(。-`ω´-)」
俺の名前はラムリーザ、アークメイジでありグランドチャンピオン。しかし盗賊ギルドではこそ泥である……
もうやだー
「ちょうどあんたの力を必要とした問題が起こっているんだ。何とギルドから報酬も出るよ」
「こそ泥の力が必要なギルドなんですね」
「こそ泥も重要、ヒエロニムス・レックスが、帝都の港湾に侵攻したのさ」
「またですか。レックスも懲りないですねー(棒読み)」
「グレイ・フォックスはまだ無事だが、こんな状態では盗賊ギルドは活動できない」
「……(よいことです)」
「港湾の貧民はグレイ・フォックスの子供のようなものだから裏切ることはないと思うが、多くのギルド員が投獄される恐れがある。帝都にいるメスレデルと会ってくれ。彼女はギルドの対応策の取りまとめ役だ」
「…………(。-`ω´-)」
えっと、最初の入隊試験で俺はメスレデルに勝っていたのだよな?
なのに現在俺はこそ泥、彼女はギルドの対応策の取りまとめ役。
どこでこんなに差がついた?
クリーンなどろぼうさんをちまちまとやっていたからか? 東部連峰まで遠征していたからか?
それとも、潜入している事実が実はばれていて、要職には就けないようにしているのか?
まぁアークメイジだということがばれていない方が不思議とも言えるけどね。
なんか作戦変更して、盗賊ギルドを乗っ取るところまでやってやろうかな……(。-`ω´-)
そんなことを考えながら、ユニコーンをかっ飛ばして帝都に戻ってくるのであった。
メスレデルも現在盗賊ギルドにとって帝都は危険な場所なので、どこかな潜伏しているらしい。
ちなみにレックス隊長は、俺がアークメイジだということを知っているので俺を疑っていない。
やはりグレイ・フォックスの居場所を見つけ次第、その瞬間裏切ってレックス隊長に報告してやるのが一番な気がする。
だから今は無駄に兵を動かさないほうがよいのだけどなぁ……
まぁ俺が非公式で動いているのだから、レックス隊長と連携が取れていないのは仕方が無い。
でも表立って連携を取ると、マィヴリーナのように盗賊ギルドにハメられて身の破滅を招くかもしれん。
あくまで俺とレックス隊長は別物なのだとしておくのが安全なのだ。
「というわけで物乞い!」
「どんなわけなのでしょうか?」
「気にするな、2Gやるからメスレデルの場所を教えろ」
「5G下さい、タバコが欲しいです」
「贅沢な物乞いめ、ほらよっ」
「ありがとうございます。メスレデルなら、このタロス広場にあるダイナリ・アムニスの家に潜伏中です。レックスの港湾侵攻の際に脱出できた数少ない仲間だ」
こう聞くと、つくづく俺はレックス隊長に信用されているのだなと思う。
俺も港湾に家を持っているのだが、まったく疑っていないからな。
というわけで、ここがダイナリ・アムニスの家。
鍵がかかっていたので、不壊のピックで開けてやる。
ピッキング中にばれたら、家の中の者も見つかってしょっ引かれるのかな?
でもメスレデルを捕まえても何の意味もない。グレイ・フォックスを捕まえないとな。
「オコンニチハ」
「よく来たね」
「グレイ・フォックスって何者なのでしょうねぇ?」
「ギルドに入りたての頃は深く考えなかったけど、最近妙な噂を聞いたわ」
「伺いましょう」
「彼が被っているグレイ・カウルは、なんとノクターナルからくすねた物だって。デイドラ神から盗みを働くなんて大した玉ね」
ほとんどモブみたいな奴の中に、ノクターナルの目を盗んだ奴も居るけどな。
しかしノクターナルもよく盗まれるものだ。
盗賊ギルドの守護神と言われているが、いろいろと盗まれて本望なんだろうなきっと」
「それよりも、港湾地区への侵攻が深刻よ。アーマンドは缶詰状態に逆戻り、港湾における活動は封じ込まれたわ」
「ではどうしろと言うのだ?」
「ある作戦を計画しているの。あなたにも協力してもらうわ」
「協力しましょう」
メスレデルの作戦では、俺を含む4人の腕利きが、同時に派手な窃盗事件を起こすというものだった。
うまく行けば、警備兵を元に戻すよう、レックス隊長に圧力をかけられるらしい。
どうやらレックス隊長は、帝都の警備兵総動員で港湾地区の捜査を行っているようだ。
そして俺のターゲットは魔術師大学だと言ってきた。
俺は一瞬ドキッとして「魔術師大学?」と尋ね返してみた。
「そう、私達はフローミルの氷杖を狙っているのだけど、魔術師達の目が免れるのを待っていたの」
「…………(。-`ω´-)」
俺達が苦労して持ち帰ったフローミルの氷杖を、早速こいつら狙ってきやがったか。
確かにアークメイジの私室に保管したから、ちょっとやそっとでは盗めない様になっている。
そこで腕利きの俺に、フローミルの氷杖を盗んできて欲しいと言ってきたのだ。
――ってか、フローミルの氷杖は俺が見つけた俺の物だ……(。-`ω´-)
「……協力しましょう」
非常に腹立たしいが、一時的に盗賊ギルドにくれてやる。
フローミルの氷杖は、その内に逆泥棒でも仕掛けて取り戻してやる、と考えていた。
しかしメスレデルはさらにイラッと来るような事を言ってきた。
「やっぱりグレイ・フォックスに頼りにされるだけはあるわね。杖はアークメイジの私室にあるわ、そしてアークメイジの就寝時間は午前1時から7時の間よ」
「……(#^ω^)ピキピキ」
こいつら俺の生活を監視してやがる(#^ω^)ピキピキ
しかし、アークメイジの行動をそこまで知っておきながら、なぜ俺がアークメイジだと気がつかないのだろうか?
ひょっとして、やはり俺は泳がされているのだろうか……(。-`ω´-)
「どうしましたか? 杖を持ち帰る前に、このメモを彼のナイトスタンドに置いてきて。杖を手に入れたら、私の所に持ってきてね」
「……わかった(。-`ω´-)」
すんげえハメられているような不安を感じながら、俺はダイナリ・アムニスの家を出た。
魔術師大学に帰りながら、この任務をどう処理しようかと考えながら……
やっぱり身内にどろぼうさんを仕掛けるべきかな……?
こっそりと自室に侵入――
「何をしているのだ、ラムリーザ?」
「おっとぉ、ジ=スカール先輩! 魔術師のローブ似合ってますよ。前のぼろっちい茶色のより絶対そっちの方がいいっす!」
「ジ=スカールもそう思っている。やはりこの者は地方のギルドでくすぶっているより、大学に出てくるべきだったのだ」
「またいつか一緒に仕事しましょう!」
だめだな、昼間は人の目が多すぎる。
夜まで時間を潰してから潜入した方が良さそうだな。
続く――
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