皇帝陛下 ~緑娘の野望?!~
さて、いろいろと魔術師ギルドの仕事を先取りしていたようで、杖探しも死霊術師退治も以来が来る前に片付ける形となっていた。
合法的な盗品も大量に仕入れたわけだし、再びどろぼうさん――グレイ・フォックスを探し出して逮捕する任務に戻っても良いのだが、しばらくシロディールから離れていたというのもあって、少し帝都インペリアルシティでのんびりしてから次のミッションへと進むことにした。
帝都で最初に向かった場所は、ルーセル・ブロードの宿屋だ。
東部連峰で遺跡発掘の仕事を手伝ってあげたシンドリは、自分の命を狙うかつての仲間から逃げ出すために帝都へ戻ると言っていた。
そしてルーセル・ブロードの宿屋に立ち寄ってくれれば、遺跡で見つけた物の研究が進んでいたらそれを報告しようと約束していたのだ。
これが、エルフ・ガーデン地区にあったルーセル・ブロードの宿屋。
帝都は同じような建物が並んでいるので、地図を確認しながら進まないとすぐに迷ってしまうのだ。
ぶっちゃけ神殿地区と商業地区、そしてこのエルフ・ガーデン地区はほとんど同じ構造だからな。
何故かシンドリはカウンターの中に居たりする。
「おお、研究の手助けをしてくれた方だ。確か今のアークメイジなんだってね?」
「うむ、大学に戻ってくる気があるのなら、いつでも歓迎するぞ」
「まあそれは追々考えていこう。ところで今日は何のご用件で?」
「あの杖と巻物と短刀がどうだったか聞きにきたのだけどね」
「ん~、私もまだ帝都に戻ってきたばかりで、研究はこれからなのだよ」
「大学に戻れば資料とかいっぱいあるのに。あとめんどくさい制約が嫌なのなら、いろいろと取っ払う考えもあるよ」
「そうだな、君がまとめている今の大学なら息苦しくないかもしれないね。旅の疲れが癒えたら大学に戻るとするか」
とまぁこれだけだった。
別にどうしても研究成果を知りたいわけではないけど、関わってしまったものだから顛末まで聞いておいても悪くないかなと思ったわけだ。
それに、山賊や死霊術師が暴れまわっていた東部連峰から、無事に戻ってこれていたのか確認しておきたかったからな。
大学に戻れば警備も万全だし、トラーベンの行動に嫌気が差して去った魔術師グループから身を守ることはできるだろう。
ひょっとしてそのグループは、死霊術師達のことだったのかもしれないけどな……
そしてもう一つの用件。
アイレイドの彫像は、飾っても見栄えがするものでもなし、持っていてもかさばるだけの品物なので、この機会に売り払ってしまうことにした。
何かと縁のあったソロニールの店で下取りしてもらう。
二つ持ってても仕方ないから一つ売る。とりあえず一つは手元に残しておいて、やっぱり必要だったら買い戻せばいい。
こんなでかいだけで何に使うのかわからんような彫像だけでな。
ウェルキンドストーンや、ヴァーラストーンの方は、宝石みたいだから集めても悪くないけどね。
さて、身軽になったところで帝都めぐり。
まだ行った事のないのは、中央の白銀の塔。見たことはあるけど、入ったことは無かったりするのだ。
「おー、これが白銀の塔か!」
「アークメイジよ、皇居で大声を出すのは遠慮してくれ」
「うむ……(。-`ω´-)」
「皇居を訪れるのは歓迎するが、1階と2階にしか入ってはいけない」
「わかりやした! ――ってごめんなさいっ」
お口にチャックで皇居めぐりをする。
薄暗い回廊が続いているだけで、あまり活気があるようには見えないねぇ……
「(ねぇ、皇居ってことはここに皇帝が居るってことじゃないのかしら?)」
「(まぁそういうことになるだろう)」
「(皇帝を何とか懐柔させてやれば、この国を乗っ取れると思うわ)」
「何を言っと――(るのだね君は、不穏当なことを言うんじゃない)」
緑娘は、やはりこの国を乗っ取ることを考えているようだ……(。-`ω´-)
戦士ギルドのマスターになったのも、その第一歩だったと聞いたこともある。
冗談か本気がわかりにくいところもあるので、いろいろと監視しておかないといかんな。
1階の部屋は立ち入り禁止だったが、二階の部屋には自由に入れることができた。
外から見ても円形の塔だったので、通路も部屋も円形だ。
ここからは、1階の会議室が見下ろせる形になっている。
会議に参加はできないが、傍聴するのは自由と言うわけか。意外と開かれた政治を行っているのだね、皇帝陛下は。
そして、白銀の塔見物を終えてから立ち去ろうとしたときだ。
「ん? なんだか立派な人が後から出てきたね」
「ひょっとしてあの人が皇帝じゃないかしら?」
衛兵とは違う光り輝く鎧を着た、たぶん近衛兵に守られながら移動する高貴な人物。
確か名前はユリエル・セプティム七世だったっけ?
しかし下々にはあまり縁のない人物だったりする。
アークメイジに登り詰めたけど、全然謁見することもなかったからなぁ……
そして緑娘は、その後姿をじっと見つめているのだった。
「どしたん?」
「ねぇあなた、あの人の代わりに成り上がってみないかしら?」
「何を言い出すのだね君は」
「あなたをこの国の皇帝にするのも面白いかもしれないわ」
「君の野望に俺を巻き込むな」
「あたしの野望は、あなたを祀り上げる事よ」
「なっ……」
ここに来て緑娘の野望が、少しだけ具体的になってきた。
しかし話では皇帝陛下はまだ元気だし、三人の皇太子や王子も居ると聞く。
俺の入り込む余地がどこにあると言うのだろうか?
力ずくで簒奪しろとでもいうのだろうか……
これか?
緑娘の望むものは、これなのか?