東部連峰の死霊術師 その三 ~似非考古学者の秘密~

 
 なんだかよく分からないアルゴニアンは、死霊術師の奴隷に奴隷にされていたといった内容の手紙を渡してきた。
 どうやらこの東部連峰にも死霊術師が存在するらしい。ギルドの方針に従い、退治しておこうと考えたのだ。
 そのアルゴニアンの母親ヘランに頼まれて、再び魔女の村南にあるキャンプへと戻ってきたのだが――
 

 なんかおる――
 って、死霊術師じゃないかあれは?
 

 俺達の接近に感づいてやってきたのは、やはり死霊術師だった。
 手紙の内容通り、この地でも死霊術師が活動しているのは事実だったようだ。
 
「ほう、トカゲの相棒が『救出』に現れたようだ」
「別にトカゲの相棒ではないがの」
「これに関わるとは大きなミスを――って貴様は新しいアークメイジではないか!」
「ようやく気がついたか、ゾンビの親玉め」
「今度は邪魔させんぞ!」
 
 やはり死霊術師は、最初から問答無用で襲い掛かってきたな。まぁ最初から戦闘になるのは分かっていたけどね。
 魔女は魔女でただの魔女だった。死霊術師はやはりこのローブだよな!
 

 アークメイジとコンジュラーのコンビな。タイトルマッチの際、負け役はコンジュラーの方でよろしく!
 
 ――とまぁ、戦闘はあっけなく終わったわけだが、ここを死霊術師がうろついているということは、あのアルゴニアン、プル=テガはまた捕まってしまったのだろうか?
 

 と思ったけど、残念ながらキャンプ脇に遺体が転がっていたいわけで……
 
「まいったな、こいつの母親にどう説明したらよいものやら……」
「最初から連れて行ったらよかったね」
「しかしこれで、この地に死霊術師が居ることはわかった。問題は、奴らの本拠地がどこなのか? ということだ」
「どっちかを生かしておいて、尋問すればよかったのじゃないかしら?」
「親玉の方は君が刺し殺したじゃないか」
「あなただって電撃で黒焦げにさせたじゃないのよ」
 
 過ぎたことは仕方がない。
 何か証拠が残っていないか、襲い掛かってきた死霊術師の持ち物を調べてみることにした。
 

「ややっ、これは?!」
「これは?」
「メモだ!」
「そんな大騒ぎするようなものじゃないでしょ」
 

 死霊術師のメモには、ついさっきの出来事が書かれていたりする。
 たぶんこいつがザンジバなのだろうが、あの奴隷、つまりプル=テガは既に他の者に警告したと書かれている。
 警告というのは、あの手紙のことだろう。そしてメモに書かれている「連中」とは、恐らく俺達のことだろうな。
 
 そしてその死霊術師は、どこかの古い塔で考古学の発掘を装って潜んでいるらしい。
 ジョーンズ教授かな?
 
「考古学の発掘か……」
「この辺りに居る人なら、そんな集団を知っている人はいるのじゃないかしら?」
「死霊術師なら問題になるけど、考古学者なら問題ないからなぁ」
 

 そういうわけで、カヌルス監視塔のジェイソンを再び尋ねてみることにしたのだ。
 
「やぁ、まだあのぶら下がった死体は取り除いてないのだね?」
「あんな場所に吊るされて、取り除くのも大変なんだ。どうだろう? ぜひ君に取り除いてもらいたいのだが?」
「やなこった。それよりも、この辺りで考古学の発掘をしている集団を知らないかな?」
「考古学者なら、新たなチームが編成されて追憶砦で活動しているぞ。しかし彼らは、厳格な隔離の方針で研究を行っているらしいぞ」
「そりゃそうだよ、死霊術師なんだから」
「なんだって? それは大変だ! 場所を教えてあげるから、なんとかしてくれ」
「山賊退治は本気になっていたのに、死霊術師問題は丸投げするのな」
「それは魔術師ギルドの仕事であって、帝国軍の仕事ではないのだ」
「はいはい、せめて街道の安全だけは確保してね」
 

 ジェイソンに教えてもらった追憶砦の場所はここだ。
 ここから農場経由で、東へ向かえばよいみたいだな。
 ちなみに、追憶砦は東部経路防御システムの一部で、現在でも最も損なわれていない砦となっている。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 ケインの農場、東部連峰での活動はここから始まったようなものだよな。
 
「あっ、農場! 羊さん!」
「また羊に構う、この羊マニアめ――じゃなくてちょっと待った!」
 

 マズい、ここの羊は山賊の襲撃で皆殺しにされたのだった。
 うかつだった、農場を避けて迂回して行けばよかった……
 

「ちょっとラムリーザ! 羊さんが殺されているじゃないの!」
「殺されているねぇ……(。-`ω´-)」
 
 農夫が居なくなったことは全然気にしないのに、羊の死体には反応するのな。
 なんというか、もう遅い。後の祭りだ……
 

「何よこれ! なんで羊さんがみんな殺されているのよ!」
「えーあー、たぶん死霊術師が殺していったんだよ」
「なんで死霊術師が羊さんを!」
「人のゾンビだけでは飽き足らず、羊のゾンビまで作ってみようという気になったんだよ、たぶん……」
「なにその狂気! 絶対に許せない!」
「うむ、死霊術師は一人残らず殲滅すべきなんだ……(。-`ω´-)」
 
 この際仕方が無い、死霊術師に全責任を被せて、緑娘の怒りの方向を逸らせよう。
 真犯人の山賊集団は、既に全滅しているからな。
 
「ぴよぴよちゃんはどうなったかしら!」
「それよりも早く死霊術師を退治しないと、被害が広がるぞ」
「それもそうね! 早く追憶砦へ行きましょうよ!」
 
 よし、なんとか話を誤魔化して先へ進もう。
 この場合、山賊の責任にするより死霊術師に責任を押し付けた方が、緑娘の死霊術師に対する怒りも増すというものだ。
 どうも緑娘は魔術師ギルドに対して本気ではない。
 ここは一つ、死霊術師が悪だということを刷り込ませようじゃないか。
 
 策士だな、俺……(。-`ω´-)
 
 

 農場から少し北に行ったところで、高台に砦が見えてきた。
 おそらくあれが、死霊術師が考古学者を装って立て篭もっている追憶砦に違いない。
 
 さあ、羊の仇だ!
 ――じゃない、オルテガの仇だ!
 ――じゃない、プル=テガの仇だ!
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ