バルクウォード砦と古い鉱山 ~怠け者の衛兵とスクゥーマ・ロードの恐怖~
「シロディールに帰らないのかしら?」
「んや、この砦の地下室で護符を見つけたという司令官の話を聞いてな、まだ何か残っているかもしれないと思ったわけだ」
東部連峰にて、この地域にはびこる山賊は、林務兵ジェイソンの活躍で首領のメイソン・ドレス共々壊滅したのだ。
フローミルの氷杖らしき杖も見つけたことだし、このまま帰ってもよいのだが、たぶん二度とこの辺りに来ることも無いだろうということで、少しでも気になった場所は見ておこうと思ったのだ。
ここは現在国境検問所として使われているが、砦の名前はバルクウォード砦という。
司令官の話では、ダンマーから取り戻したのだと言う。ダンマー、ダークエルフな、黒い人だ。
ちなみにグラアシアとかはボズマー。どうでもいいことだけどね……
まずは外回りと砦の二階に登ったのが間違いだった。
「犠牲者がそのままだ……」
「この国には埋葬するって文化は無いのかしら?」
「いや、至る所に墓があったぞ?」
「衛兵は仲間の遺体を放置するのね……」
「この国の衛兵は、ちょっと妙なところがあるからなぁ……」
それともひょっとして、ダンマーから取り戻したのは俺達がここを訪れる直前だったというのだろうか?
まあいいや、深く考えるのはやめとこう。
砦の屋上には、偵察用の高台があったりする。
見渡してみても林が広がるだけで特に変化は無い。
しかし北側に、粘板岩室よりもさらに北にある建物が見えたりする。
このバルクウォード砦の探索が終わったら行ってみるか。
というわけで、早速砦の中へ突撃だ。
ダンマーが山賊なのか野盗なのか追い剥ぎなのかわからんが、残党が残っているかもしれないので慎重に進む。
「むっ、誰だお前は? ダンマーの残党か?!」
「あっしはただの倉庫管理人でさぁ」
「倉庫だと?」
見渡してみると、そこには大量の食料や飲み物が陳列されていた。
この様子だと、ダンマーの残党はこの辺りには居ないかもしれないな。
「うむ、俺は帝国軍に一つ謝らなくちゃいかんことがあるみたいだ」
「何か悪いことでもしたの?」
「んや、山賊の物資の準備が十分だったので、帝国も見習えと思ってたんだよ」
「てっきり食料をどろぼうさんしたのかと思ったわ」
「これだけあったら一つぐらい盗ってもわからんだろうしな」
「雨垂れ石を穿つ」
「は?」
「たった一つでも、毎日盗めば100日で100個よ」
「…………(。-`ω´-)」
悔しいので言い返してやった。
「君は今までに盗んだパンの数を覚えているのか?」
「0個よ」
「…………(。-`ω´-)」
さて、砦の奥を調べるか。
地下二階は、衛兵の装備置き場となっていた。
これは……、盗めというのか?
いやだめだ、帝国軍と言う所有者が居るから迷惑がかかる。
でもこれだけあれば一つぐらい盗んでも雨垂れ石を穿つ……
「なんだか本格的な倉庫だなぁ」
「これって何っていうのだったっけ、ドヴァキンかしら?」
「マネキンだったような気もするが、まぁいいか。ドヴァキンだろうがマネキンだろうがどうでもいい」
「ラムキンは?」
「動画配信者――いや、なんでもなかとですばい(。-`ω´-)」
しかし俺は、この砦で帝国軍の実体を見る事となってしまった。
地下二階には武器防具の倉庫とは別に、もう一つ部屋があったのだ。
「こ、これは――」
「寝てるわね、結構人数多いんじゃないかしら?」
「帝国軍が数で勝っている山賊に負ける理由はこれか……(。-`ω´-)」
つまり、総数では帝国軍と山賊は10対1かもしれんが、その内の8ぐらいは砦の奥でずっと寝ているのだ。
残りの1.5が国境検問に、0.5が林務兵として勤務。
実働数では山賊の方が多かったのだ! 帝国軍、そのほとんどが怠け者だったのだ!
……あほだな、帝国軍w
この砦の地下三階は、牢屋となっていた。看守兵が一人、見張りとして立っている。
ダンマーの残党が捕らえられているのだろうか?
――などと思ったけど、牢屋の扉は開け放たれたままだった。
そしてダンマーでもなんでもない、普通の人間がそこで寝泊りしていたのだ。
こいつは犯罪者か?
しかし牢屋の扉は開けっ放しだった。
ということは、ここをねぐらにしているのか?
寝室に収まり切らない衛兵は、地下牢を住処としていた。
看守と言う見張りつきで……
帝国軍、いろいろとあほだな……(。-`ω´-)
………
……
…
バルクウォード砦では、帝国軍の退廃した部分を見せ付けられてしまった。
正直行かないほうがよかったかもしれん。
そういうわけで、気を取り直して国境検問所の屋上にある見張り台から見えた村? を目指してみることにした。
方角は、粘板岩室の北だから、この方角かな。
そして、その場所には建物が三つあったりするが、人気は全く無い。
さらに、三つある建物のうち二つは、入り口に木の板が打ち付けてあり、ずっと昔に放棄された場所らしかった。
村の傍には、入り口が埋まった洞窟が一つだけ。
「これは、いったい何なのだろうか?」
「閉鎖された鉱山ってところじゃないかしら?」
「うむ、無駄足だったか……」
「一つだけ入れる家があるわよ」
村の全景から見て、右側にある家だけが板を打ち付けられていなくて、まだ入れる状態になっていた。
さしずめ廃鉱の住居といったところか?
「お邪魔します!」
「まずい時に道に迷ったようだな!」
「山賊の住処かよ!」
「違うな、俺の名前はスクゥーマ・ロードだ! 今日死ぬ気分はどうだい?」
「なんか知らんけど、やばそうなので退治させてもらう!」
「お前のゴールドを数えるのが楽しみだ!」
なんだか突然襲われて戦闘になったけど、俺達の敵ではなかった。
突然入ったのがまずかったとしても、話し合わずにいきなり襲い掛かってくるのだから退治するしかない。
だいたいスクゥーマ・ロードというのがわからない。
ロードは道以外に、君主とか神を意味する。つまり、スクゥーマの道、スクゥーマの君主、スクゥーマの神となるわけだ。
スクゥーマって何だよ!
そしてスクゥーマ・ロードの居た部屋には、小さなビンがたくさん転がっていた。
中には少量の液体が入っているようだ。
「これがスクゥーマかな? 聞いたことあるかい?」
「あたしは知らないわ。飲んでみたら?」
「こんな得体の知れない奴が飲んでいたような物を飲むのは怖い!」
とりあえず、変な奴が居たという証拠としてこの――薬? 酒? ――何だかよくわからんが液体は持ち帰ろう。
魔術師大学に持ち込んで、錬金術師のジュリアン・ファニスに聞いてみれば、スクゥーマが何であるかわかるかもしれないな。
以上、バルクウォード砦と古い鉱山から、実況生中継でお送り致しました。
それではごきげんよう、さようなら!
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