新たな打撃 最終話 ~帝国の逆襲?~
さて、東部連峰にはびこる山賊一味に潜入して、その首領であるメイソン・ドレスが生きているという証拠を持ち帰った。
林務兵ジェイソンは、このことを指揮官レインに伝えてくれと言い、メモも預かってきた。
ちょっとメモを盗み見してみたら、こんなことが書いてある。
俺が潜入捜査に成功したこととか書いてあるね。
というわけで、レイン指揮官である。
指揮官は、「ドレスは死なねばならん」と言って、ジェイソンが必要としている兵を送ることを認めてくれた。
これでいよいよ山賊に逆襲することができるのか?
――って、四人かよ。
ロック・カッター賊は10人以上居るし、さらにシック=スカルという集団も居ると言うのに……
まぁブラックウッド商会に攻撃を仕掛けたのは、戦士ギルドの中の俺と緑娘だけという前例があるけどね。
しかしどこが戦力差で10倍有利なんだ?
明らかに山賊の方が多いじゃないか?
「というわけで、レイン指揮官は『四人だけ』動かしてくれましたよ。
「よし! ついにドレスは来るべき制裁を受けるのだ!」
待てよ?
カヌルス監視塔で山賊と戦ったとき、確か半数を失ったと言っていたよな?
このキャンプに居るのは三人、元々六人。
今回増援で来たのが四人、合わせて七人。
一人増えたぐらいで勝てると思っているのなら、最初からなんとかなったのではないかね?
それともも俺も戦力の頭数に数えられているのだろうか?
「どうしたの? 行かないのかしら?」
「んあ? あれ、いつの間に?」
「みんな駆けていったわよ」
どうしてこの地域の人間は、みんなせっかちなのだ?
帝国軍も山賊もな……(。-`ω´-)
そもそもジェイソンは、ドレスが潜んでいる洞窟であるスコーンド・ホールドアウトの場所を知っているのか?
急いで後を追う――というより、最短コースで洞窟へと向かうことにした。
………
……
…
「ここが山賊の拠点だよ」
「早速飛び込んでやっつけちゃいましょうよ」
「それでもいいか」
ジェイソン達が先に到着しているのかどうかわからない。
とりあえず俺は山賊の仲間と言うことになっているから、先に入って様子でも見てみるか。
洞窟の中へ入ってみると、最初の広間に居た山賊達が居なくなっていて、残っているのは一人だけだった。
「きっ、貴様、裏切り者だな?!」
「知らん! 元から帝国軍だ! 裏切ったわけではない!」
「帝国軍を率いて戻ってきたのだろうが!」
「ほー、ジェイソン達はもう奥へ行っているのだな? よし、こいつは任せたぞ、ミ――テフラ!」
「またミドリムスメって言いそうになった!」
知らん知らん。
山賊の生き残りは緑娘に任せて、俺は奥へと急ぎジェイソンと合流することにした。
途中でまた別の生き残りが居たが、さっさと片付けてしまう。
緑っぽい鎧を着ていないのもいるのだな?
非戦闘員か? 襲い掛かってきているけど。
そして奥の間は、もう無茶苦茶な状況。
帝国軍山賊入り乱れて争っているのかどうかわからんが、とにかく無秩序で収拾のつかない様子。
しかし密集して戦っている、なんか爆発魔法をぶち込んでみたいけど、争いが起きているということは、この中に帝国軍も居るということだろうな……
仕方が無い、プリズム・スプラッシュだ。
これなら対象の行動を封じるだけで、命に別状はあまり無い。
一旦落ち着いてから、戦局を再構築しよう。
………
……
…
無理でした……(。-`ω´-)
緑娘、帝国軍、山賊、ハザー、ドレス入り乱れての大騒ぎ。
これはもう俺が手を出してどうこうできる状況ではない、傍観させてもらうぞ……
………
……
…
「とまぁ、こいつがメイソン・ドレス。山賊の総大将ってところだ」
「帝国軍は奥へと駆けていったよ?」
「掃討作戦だろう、乱戦はめんどくさいから俺は傍観する。潜入作戦成功の地点で、俺の仕事は終わりだからな」
「ふ~ん」
とりあえず、ドレスと話をした中央部で、戦いが終わるのを待つことにした。
ドレスがやられたので、後は烏合の衆と化すだろう。
それほど総大将は重要なわけだ。
「何をしているのかしら?」
「いや、俺は山賊の間では、獲物の指を集める悪党ということになっているから、大将の指も取るべきかなってね」
「気持ち悪いわね、それに取るべきは首級でしょ? 首じゃなくて指集めてどうするのよ?」
「知らん……(。-`ω´-)」
とまぁそんなこんなで、山賊の一味は増援の加わった帝国軍に全滅させられたのであった。
加わった帝国兵四人がかなり強かったのか?
ジェイソン達は、林務兵だから弱かったのか?
「ハハッ! ついに糞野郎を退治したぞ! 君の助力全てに大いに感謝する」
「それはよかったですなぁ」
「レイン指揮官が君に報酬を与えてくれるだろう。私はカヌルス監視塔に戻るよ。奇麗にするにはしばらく時間がかかるかもしれないが、今の我々なら元に戻せるだろう」
ジェイソンは、「帝国ある限り、我々は一人一人が大切なのだ」と言い残して、その場を立ち去っていった。
さて、どうするか。
国境検問所に戻る前に、とりあえず監視塔の様子を見に行くかな?
「行きに見たけど、ここが監視塔なんだ」
「死体がぶら下がっているわね」
「まだジェイソンは戻っていないか」
ん? 戻ってきているじゃないか。
ダークエルフの兵士は居たっけ? さっそく林務兵増員か?
「ジェイソン、まずはぶら下がっている死体をなんとかしような」
「しばらく時間がかかると思うが、大丈夫だ」
「さいでっか?」
二階に登ると、キャンプに居た林務兵と、追い剥ぎが居た。
ん?
追い剥ぎ?
改心して林務兵に加わったのか?
「てめージェザ、100G返せ」
「嫌じゃ」
「林務兵! こいつ追い剥ぎですよ!」
「ジェザは追い剥ぎじゃない、林務兵に加わった」
「じゃあ100G返せ」
「それは追い剥ぎのジェザが奪ったものだから、林務兵のジェザは返せない」
「……(。-`ω´-)」
カジートの癖に、屁理屈を抜かす奴だな。
まあいいや、100Gぐらいやる。
指揮官からの報酬も出ることだし、100Gぐらい経費だと思ってやるから感謝しろよな!
そんなわけで、国境検問所に戻ってきた。
指揮官レインは、笑顔で俺を迎えてくれたのであった。
「ドレスへの襲撃が成功したと聞いて嬉しかったよ。ジェイソンがすぐに知らせを送ってくれたのだ」
「それは何よりです」
「君に報いるべき特別な物があるぞ」
そう言って指揮官が取り出したものは、一つの護符、アミュレットだった。
なんでもダンマーからこの砦を取り戻したとき、地下室の隅に隠されていたものだという。
それはヴェロシの護符と言って、身に付けると腕力と耐久力と防御力が上がったような気になれる、不思議な護符であった。
「その贈り物は、将来の戦いの中で疑いなく君を助けてくれることだろう」
「ありがたく頂戴致します(俺アークメイジのソーサラーだけどな、緑娘にあげようか)」
「それはそうと、罰金80G」
「なんでやねん?」
「戦いの中で、味方を攻撃したからだ」
「…………(。-`ω´-)」
あのプリズム・スプラッシュは、やはり誤爆があったか……
……80Gやる!
それもついでに経費じゃ!
ってかなんで指揮官がわかるんや、誤爆食らった部下がチクッたか?
乱戦の中、仕方ないだろうが!