闘士としての日々 ~ブローラーとしての戦い~
金ではなく名声のために、帝都にある闘技場で闘士として戦う日が始まった。
しかし、戦士ギルドならともかく魔術師ギルドとしての名声が、闘技場で勝ち抜くことによって高まるのかどうかは不明。
「オーケー、ブローラー、やり方は分かるな? アリーナへ行け、そして誰が勝者か見せてこい!」
ただし仕事は簡単、アリーナに出て戦うだけだ。何も考える必要は無い。
――いや、魅せる試合をしないと「塩」と言われるらしい。割と知らんけどな。
そして雨の中、ブローラーとしての戦いが始まった。
相手はごついマスクマン。
なんだ? マスク狩りをしてやろうか?
マスクというものは、真の実力者がその証として身につけるものだ。しかし最近は、実力も無いものが自分を強く見せるためや醜い顔を隠すための単なるおしゃれとなってしまっているのだ。
例えばゲーム大会などで堂々と顔を出して参加できない参加者というものも、何かやましい所があるからマスクで顔を隠して参加するのだろうな。そんなのじゃいつまでたってもその大会は世間に認知されないぜ?
俺もレヤウィンでやましいことがあったから、緑仮面として顔を隠していた頃があったものだ。
こいつもそんな感じだろうな。
闘技場に参加するのにやましいところがあるから、マスクで顔を隠して参加する。犯罪者か何かで顔を隠さないとやばいのか?
デイドラみたいな仮面つけやがって、一人クロスボンバーで剥ぎ取ってやるか!
――と思ったけど、闘技場のルールでは相手の装備を奪ってはいけないということになっているのだ。
それに一人クロスボンバーってなんだよ? モンゴリアンチョップか?
接近戦に持ち込まれたら相手のペースなので、衝撃波を放って間合いを広げる。
戦士ギルドでマスターの次に偉いチャンピオンが、接近戦を苦手と言うのは妙な話だが、俺の本職はアークメイジなのだから仕方が無い。
いつも改良版の霊峰の指ばかり使っているのも「塩」なので、たまには元祖版を披露してやることにしたのだった。
どや、緑娘もノックアウトできる秘術だぞ。これを手に入れようとしたコロールのイラーナは、魔術師ギルドを除名されるほどヤバい魔法なのだ。
そんな魔法を堂々と使っている俺は何なのだ? というツッコミは無しな。
そんなわけで、ブローラーとしての戦いも、順調な切り出しを見せたのだった。
勝利の報酬も100Gに増えました。ギルドの仕事の6分の1、追い剥ぎ装備の10分の1ぐらいになったよ。
しかしすぐに問題に直面するわけで――
ん? ウッドエルフの姉妹が相手?
「二連戦ですか?」
「いや、お前は双子両方の相手をしなきゃならんぞ!」
「なんやそれ!」
「木登り猿どもに、誰がボスなのか行って教えてこい!」
「…………(。-`ω´-)」
なんでこんなカードが組まれるのだ?
この闘技場のマッチメイカーは誰だ? これは俺に死ねと言うことか……(。-`ω´-)
何が「勝つすべはあるのでしょうか?」だ!
ひょっとして相手はピットドッグ二人で、二人がかりなら階級が上のブローラーと釣り合いが取れるという理屈だろうか……
マジで二人で挑んできた。
お前らそんなんで勝って嬉しいのか?
――嬉しいのだろうな、勝ちさえすればどうでもいいみたいだ。
ならばこっちも「塩」がどうのと言ってられん。霊峰の指改一発で終わらせてやる。
見ろ、実にいいタイミングで、いいポイントを衝くだろう?
それにこの位置取りだと、相手の弓兵は前衛が邪魔で俺に攻撃ができんのだ。
伊達に山賊の群れと戦ってきた俺じゃないぜ。
どやぁ!
どうでもいいことだけど、緑娘と闘技場で戦うことになったら、この中央の円形部分に陣取ってやろう。
理由? 知らんなw
まぁ装備を闘技場用のものにしないと参加できないから、関係ないだろうけどな。
………
……
…
「またしょっぱい試合をしたな!」
「やかましい! ハンディキャップマッチなんか組んでおいて塩とか言うな!」
「まあよい。次の相手はカジートだ。斧で重装備だからな」
「とろい奴は大した事無い」
というわけで次の試合だ。
どうやら三回勝てば昇進という仕組みになっているようで、この試合に勝てば今度はブラッドレターだとさ。
血文字というか、血の手紙というか、ろくでもない名前だがな……(。-`ω´-)
先ほどの試合による塩分濃度を薄めるために、あまり使わない魔法を使ってみる。
ツタを絡ませて相手の動きを封じるというものだ。
重装備のトロい奴だから、別に動きを止める必要は無いのだが、魅せるためだよ、魅せるため。
余裕がある試合なら魅せる試合もやってやろうというものだ。
とどめはパロマこんがり亭でこんがりと炎上させてやったぜ。
………
……
…
「よし、お前は戦うことができる。お前の新しい称号はブラッドレターだ」
「いや、もう6戦もしましたよ? ハンディキャップマッチもこなしましたよ? それでようやく戦うことができると判断ですか?」
「また真剣勝負でもっと多くの金のためにもっと多くの血を流せ」
「真剣勝負と言って本気で戦ったら『塩』と言うくせに……(。-`ω´-)」
「ふっ、俺を失望させるなよ」
ランクが上がり、勝利の報酬は150Gになっていた。
際限なく上がるのだったら稼ぎ場所になるのだけどな。
さて、ここらでちょっくらこのブラッドワークスを見て回ってみよう。
オーウィンの傍で訓練しているこのおばさん、なんとイエローチームのチャンピオンだった。
彼女が言うには、俺のランクであるブラッドレターは最初の一歩に過ぎなかったと言う。
そうだろうな、俺もそのつもりだ。
勝ち進めばいずれはこのおばさんと戦うことになるのかもしれないね。
それと、ここではなぜか猪を飼っていたりする。
なんだろうか? 試合で死んだ闘士の処理をしているのだろうか?
奥に転がっている骨は、人間の骨ってわけじゃないだろうな?
そしてこのオークがグランド・チャンピオンのグレイ・プリンスだ。
流れは読めたぞ、勝ち進めばイエローチームのチャンピオン、そして最後はこのグランド・チャンピオンと戦うことになるんだろうね。
しかし変わった髪形だな!
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