復讐! 前編 ~密輸人?~
シェイディンハルへと向かう前に、リリィに教えてもらった古代の遺物について調べるために、アンヴィル東の集落タスラへと赴いてみた。
岩場にできた、港町か?
いや、港町ならアンヴィルで十分だ。なんだろう、漁師の町か?
いや、それもアンヴィルで十分だろう。
何のために作られた集落かわからないが、岩石酒場という場所があるはずなので、そこへ向かうことにした。
岩場の高台に作られた酒場。
古代の遺物が何かわからないが、とりあえず話を聞いてみよう。消えた海賊の謎とやらもよくわからないしな。
酒場に入ると、何人かの客が居るようだ。
裸の親父は怪しいので無視するとして、とりあえず近くに居たお婆さんに話を伺うことにした。
こういった場合、年長者が一番物知りである可能性は高いのだ。
「お婆さん、このタスラって何のために作られた集落ですか? 港町ならアンヴィルで十分なはずなのに、ここにも港を作る理由って?」
「静かに、貴方に話があります。今夜酒場の裏で会って頂けますか?」
「む、やっぱりこの集落は怪しいのですね?」
「静かに」
これだけだった。
他の人に話を聞いても、やれアルゴニアンはクリーチャーだとか、断崖など知らんしか言うだけだ。
何かあるな? この集落には……
何か話をしてくれそうなのはお婆さんだけだ。しかし話の続きは夜にならないとできない。
というわけで、夜まで時間を潰すことにした。
………
……
…
「暇!」
「俺だって暇だよ」
「釣りって楽しいの?」
「そりゃあ魚が釣れた時は楽しいさ」
「釣れた事あるのかしら? あたしが見ていた限りでは、釣っていたところ見たこと無いけど」
「無いよ! 悪かったな!」
そんな感じに過ごしていたら、いい感じに夜になったので岩石酒場へと戻る。
お婆さんは酒場の裏で待っているそうだが――
寝ているのかよ! しかも屋外に布団を敷いて! 酒場が宿屋になっているのだから、そこで寝ろよ!
「これは、どうするべきか……(。-`ω´-)」
「ふん、簡単よ。こらぁ! 起きんかぁ!」
緑娘テフラお得意の「起きんかぁ」が出た。
ここでようやくシーリアという名前を知ることができたお婆さんに、タスラについて驚きの事実を聞かされた。
なんでもここに居る人達は密輸人なのだそうだ。
で、アンヴィルの衛兵をやっていたシーリアの旦那さんが、密輸人の調査報告のためにここタスラへ送られたそうだ。
しかし、旦那さんは二度と戻ってこなかったと。
そこでシーリアは、密輸人達に殺された旦那の仇を取ってほしいと言ってきた。
相手は密輸人のリーダーであるサージと、衛兵を殺すよう意見したジョンヌ。
うーむ、敵討ちか。どうするべきか……
「それで、えーと、なんだろうね? 敵討ち?」
「あたしたちに見返りはあるのかしら?」
どうしたものやらと口篭る俺の傍から、緑娘が口を挟んできた。
なるほど、見返りがあるなら引き受けてもいいスタンスか。さすが戦士ギルドだ。確かにこれは、戦士ギルド向けの仕事っぽいね。
デイドラ調査の護衛より、密輸団の調査の方を持ってきたらいいのに、アザーンはこのことは知らなかったのだろうか。
「そうですね、私の結婚指輪を贈呈しましょう」
「結婚指輪? あたしやるわ」
「素晴らしいわ! ジョンヌはサージに会うために、毎晩洞窟の中に行きます。その後を付けて行けば簡単に片付くでしょう」
結婚指輪に反応する緑娘。
なるほど、シーリア婆さんと結婚したいのな。
――などと冗談言ってないで、標的であるサージとジョンヌの指輪を証拠として持ち帰ることになった。
アザニ・ブラックハートの時みたいだな。
「しかしか何故アンヴィルは、この密輸団のことをほっておくのだろう? 戦士ギルドも何も言ってこなかったし」
「おそらく密輸人は、アンヴィル当局の誰かと繋がっているのです。たぶん伯爵は、それによって問題が起こるのを望んでいないだけなんでしょう」
「もみ消しているのな、不正はどこにでもあるものだ」
というわけで、再び酒場へと戻る。
ジョンヌは酒場のマスターをやっているようだ。表向きではそうだが、裏で密輸団と繋がっているということか?
シーリアについて聞かれたが、ここでは誤魔化して黙っておくことにした。
ひょっとしたらシーリアが、なんでもないことをでっち上げてジョンヌをはめようとしているのかもしれない。
また、裏でジョンヌとシーリアが繋がっていて、ふらりと立ち寄った旅人を何かの罠に嵌めようとしている可能性もある。
だがとりあえず様子を見よう。様子を見ていたら、シーリアなりジョンヌなり、怪しい方が何かの行動に出るはずだ。
そういうことで、しばらくの間、何かが起きるまで様子を見ることにした。
しっかし、ここの客は行儀が悪いな!
何食い物を散らかしながら食ってんだよ、肉が飛び散りまくっているぞ!
………
……
…
「何も起きないね」
「うーむ、シーリアの婆さんのでっちあげか? よし、君は婆さんの様子を伺ってきてくれ」
「あなたはどうするの?」
「潜む……(。-`ω´-)」
というわけで、緑娘は一旦酒場から出る。
一方俺は、酒場から出るフリをしてそのまま物陰に身を隠した。
ひょっとしたら、俺たちが居るからジョンヌは警戒して行動に出ないのかもしれない。
………
……
…
深夜――
客が誰も居なくなったところで、ジョンヌが動き出した。
どこへ向かうつもりだ?
ジョンヌは、そのまま酒場の奥へと消えていった。どうやら部屋の隅に、抜け道があったに違いない。
俺は緑娘を呼んできて、ジョンヌが消えた辺りを調べてみた。
「こんな所に地下室への入り口が?」
「ここがどうしたのかしら?」
「ジョンヌは確かにこの中へと入っていったぞ」
「怪しいわね、後を追いましょうよ」
そういうわけで、俺達はジョンヌが向かったと思われる、酒場の地下室へと足を踏み入れた。
これは罠か? それとも?
続く――
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