アザニ・ブラックハート 後編 ~アタタールの決戦~
ブラックハートが根城にしていると思われた遺跡、アルペニアには誰も居なかった。
オレインは、別の遺跡に心当たりがあると言い出して、今度はアタタールという場所へ向かうことになった。
レヤウィンの町があるブラックウッド地方の茂みの中を進む一行。
ブラックウッド地方のブラックウッド商会か、この地方だけの勢力なのかな?
しばらく進むこと数十分、目の前に見慣れた白い外壁が現れた。
アイレイドの遺跡、アタタールだ。あたた!
これまた見慣れた入り口。
アイレイドの遺跡には、こんな感じの入り口になっている場所が多いよな。
ブレナ川渓谷で見たダムの傍では、赤いウェルキンドストーンの影響で赤く光っている入り口もあったけどね。
アタタールの中に入ると、そこには賊が住みついているようだった。
人が住んでいるということは、ブラックハートもここに居る可能性がある。少なくとも、ネズミや泥蟹しか居ない遺跡と違ってな。
侵入者に矢を放ってくる門番のようなもの。
どうでもいいけど、洞窟のような狭い場所での弓矢は不利だよね?
賊の弓兵は、緑娘テフラとオレインの二人がかり攻撃で沈んだ。相変わらず俺は明かり役だがまあいい。魔術師は前衛ではない、こうでなくちゃな。
「ところでオレインさぁん」
弓兵を退治したところで、突然緑娘はオレインの方を振り返って話しかけてきた。
何か問題でも起きたか?
「オレインさんの武器はどんなものかしら?」
「俺の武器? 見よ、このモールを。この鉄球と針が効くのだ」
「あたしの武器はこれよ、どう? すごいでしょ?」
「ほぅ、魔剣か。珍しいものを使っているのだな。初めて見るぞ、そんな武器」
「どう? どう? えへへ、いいでしょ~」
…………(。-`ω´-)
また緑娘は「魔術師ギルドが作った魔剣」の自慢をしている。
これはもう誰か他の人と出かけたときの様式美となるのだろう。
遺跡には多くの賊が住み着いており、蹴散らしながら進んで行くことになった。
がんばれよ、前衛の戦士たち!
俺も戦士ギルドのメンバーだ? いや、俺はアークメイジだ。前に立って戦うことはしない。
突進するバトルメイジはあまり良い印象がないからなぁ……
緑娘はオレインが居るので、奥の手ニードルヒールは温存してあくまで剣だけで戦っている。
剣での戦いは慣れていないはずだが、魔剣が強すぎるので適当に振り回しているだけで当たった敵は倒れている。
恐ろしい魔剣もあったものだ。いや、だからこそ魔剣なのか。
やはり魔術師ギルドと戦士ギルドが組むと怖いことになりそうだ。歴史はその方向へと進んでおるが……
というわけで、賊を蹴散らしつつ遺跡の一番奥へと到着。
そこには、これまでの賊とは違う立派な装備を身に付けた者が居て、問答無用で襲い掛かってきた。
「居たな、ブラックハート! お前の命運もこれまでだ!」
「戦士ギルドの雑魚どもか、今回も返り討ちにしてやる!」
「ヴィテルスの仇討ちだ!」
「あたし雑魚じゃない!」
緑娘とオレインそれぞれの考えは違うようだが、ブラックハートが共通の敵であることは間違いなかった。
えっと、俺もここでは明かり役に徹しているのでいいのかな?
魔術師ギルドは両者の争いには中立――、といっても俺も戦士ギルドの修行者だからなぁ。
ブラックハートは召喚術も使ってきて、これまた因縁のあるスキャンプを呼び出してきた。
お前はデイドラの使いか!
緑娘も魔剣を飛ばして攻撃しているが、武器を手放していいのかね?
――と思ったらやっぱりそうで、魔剣飛ばしでスキャンプを退治した後に魔剣を拾いに行ってしまった。敵はまだ居るのに……
二人がかりで互角に戦っていたブラックハート。
戦士ギルドの精鋭20人が壊滅したというのもうなずける、オレイン一人相手となるとどんどん圧倒しているようだ。
緑娘は転がった魔剣を拾いに行っているし、オレインもブラックハートに押されていて危ない。
仕方がないな!
霊峰の指(改)!
雷の束を収束させることで、一点突破の攻撃となる!
よろめいたオレインにとどめをさそうと振りかぶったブラックハートの胸を、強烈な雷の束が貫いた!
これぞアークメイジの力なり!
「よくやった! アザラニ・ブラックハートは死んだ。戦友の仇だ」
「何よ! おいしいところだけラムリーザが持っていって!」
「君が無計画に魔剣を投げ出したりするからだろ?」
「奴の指輪を回収してくれ。ブラックウッド商会が奴を倒さなかったことの証拠としてそれが欲しいのだ」
そっか、話ではこいつはブラックウッド商会に退治されているはずなんだ。
元々戦士ギルドがブラックハート退治を請け負ったが失敗して、その後に引き継いだ商会が片付けたはずだったな。
ブラックハートの指輪。
所持金は17Gか、親分の癖にしょぼい持ち金だな。
「手に入れたな。よし、これがあれば奴を仕留めたのがブラックウッド商会ではなく、俺たちだということを証明できる。今回はご苦労だった」
「お役に立ててなによりです」
俺はオレインにそう答えるが、緑娘はおれが最後を持っていったのが気に入らないらしく、頬を膨らませて顔を背けている。
だったら魔剣を投げるな、と。
「よし、お前は昇進だ。修行者ではなく、ソードマンと名乗るが良い」
「いや俺はアークメイジ……」
「お前も昇進、次はウォーダーだ。今後ともギルドのために尽くしてくれ」
「ウォーダーって何よ」
「番人だ。さて、ここから出るぞ。俺はコロルに戻る、また何かあったら連絡する。ひとまずは、アザーンかバーズを尋ねてみるがよい」
そう言い残して、オレインは俺たちと別れて去っていった。
………
……
…
「さとて、俺たちもコロールに戻るか? それとも魔術師大学に行くか?」
「ミーシャに会いに行く」
「…………(。-`ω´-)」
まぁ仕事が終わったら、自由に会ってよいと言ったっけ。
好きなだけおしゃべりでもやってなさい。
俺は白い雲でも眺めているさ……
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