草の根分けても ~ウェルキンド・ストーンの秘密?~
「ところでクッド=エイさん」
「なんですか、アークメイジ様」
「この娘に推薦状を出してください」
「それでは規則に従い力試しをしてもらいましょう。ここから東のほうへ向かった場所にあるシルバーフィッシュリバー沿いの宿屋に向かってください」
「そこに推薦状があるのですか?」
「いえ、そこで魔術師レスニリアンから依頼を受けてください。どうも困っているようで。あとついでに、河口入り口付近の教会に死霊術師が居ます、退治してください」
というわけで、緑娘テフラの魔術師ギルド最後の推薦状、ここブラヴィルで出してもらえれば晴れて大学へ入学できるというところまでこぎつけた。
やはりここでも仕事を要求され、少し遠出をすることになったのだ。
目的地まで対岸まで渡る必要があるし、宿屋も川沿いにあるのでボートを借りようと思う。
「このボートを勝手に使うぞ」
「いいの? そんなことして」
「いいんだ、このボートの所有者クルダンは死んだ」
「ふ~ん、何かあったみたいね」
「話をしてやるから、早く乗り込むんだ」
ボートでニーベン湾を横断。
その最中、クルダンや借金の話を聞かせてやった。
「500Gの借金って、戦士ギルドで一度仕事を成功させたらもらえる額なのにね」
「この国の下々は、金を稼ぐ手段に知恵が回らないみたいなんだ。例えば物乞い、3Gぐらいくれと言うのだが、そんなの適当に樽を漁ればいくらでも手に入るのにな」
「そんな知恵も回らないから物乞いなのよ。魔術師ギルドの人も、他人任せばかり。怠慢な人ばかりね」
「まったくだ」
ニーベン湾を渡りきったところで、教会らしき建物が見えてきた。
クッド=エイの話ではあそこに死霊術師が住み着いているという話だが、死霊術師関係は俺が戦わないと負けるからなぁ……
「なんか使い走りばっかり」
「それを利用してのし上がるんだよ」
「魔術師ギルドでのし上がってもねぇ……」
「まぁそう言わずにさ」
というわけで教会である。キャドリュー礼拝堂という名前らしい。
見た感じでは普通の教会なのだが――
――情報どおり、死霊術師のアジトになっていましたとさ。
いや、よく考えて見るとやっぱり死霊術師はアカンわ。
これまではひっそりと遺跡の奥深くで研究しているだけなら俺は気にしない、と語っていたのだが――
これは、アカン。
さすがにこの有様だと擁護できないねぇ……
魔術師ギルドブルーマ支部長ジュラーエルは、蘇生術について研究していたようだが、こいつらは死体で遊んでいるだけじゃないかな?
とりあえず、死体を吊るして燃やして明かりにしている地点で、死霊術師はちょっと狂っているとしか思えないのだ。
ひとまずこれで、教会の死霊術師問題は解決した。
再びボートに乗り込んで、さらに上流を目指す。
ここがクッド=エイさんの言っていた宿屋、インペリアル・ブリッジだ。
そこに魔術師のレスニリアンという人が居るはずである。
なんだねその、どんぐりみたいな頭は。変わった髪形をしているなぁ……
「どうすれば、君が私の研究ノートの回収に協力してくれるのか、思いつかないよ」
「――だとさ、どうしてやるか?」
俺は、レスニリアンの要求を緑娘に受け流して見た。
「そうね、跪いてあたしの靴をなめたら協力してあげるわ」
「き、君はそんな趣味があったのか?」
「冗談よ、言ってみただけ。研究ノートってなぁに?」
「ブランブルポイント洞穴である調査をしていたのだが、襲われて逃げ出してしまったのだ。できる限りのものを持ち帰ったつもりなのだが、肝心のノートを落としてきてしまったらしいんだ」
「何が書かれているの?」
「私の10年の研究の成果だ! 回収してきてくれたら必ずお礼をするよ」
そういうわけで、次の目的地はブランブルポイント洞穴と決まった。
どうやらレスニリアンは、その洞穴でウェルキンド・ストーンについて研究していたらしい。
アイレイドの遺跡に潜った際に、いくつか回収してきたアクアマリンの色をした水晶のことは知っている。
1000個集めたら願いが叶うのか聞いてみたが、レスニリアンはそれ以上は語ってくれなかった。
ブランブルポイント洞穴には、天然の洞窟で成長するウェルキンド・ストーンがあるらしい。
というわけで、ブランブルポイント洞穴。
いびつなかたちをした岩でできた入り口だな。相変わらず木製の扉がついているのな。
洞穴の中は、ミノタウロスなどモンスターの住処となってた。
「よし、役割分担を決めよう。活躍するのと援護するの、どっちがいい?」
「あたし活躍する」
「じゃあ任せた、俺は明かりで照らす役ね」
最近明かり役が多いなぁ。まぁ楽だからいいけどね。
ほれがんばれー。
背後からネズミが襲いかかってきているぞー。
とまぁこんな感じに、緑娘はモンスターを次から次へと退治していく。
さすがに強いな、リリィさんの作った魔剣は!
威力もさながら、麻痺効果まで付いているのがエグい。
一撃で退治できなくても、相手は麻痺して動けなくなるのだ。
そんなこんなでサクサクと洞穴の最深部まで進んでいった。
奥に光るのは、レスニリアンの言っていた天然の洞窟で成長するウェルキンド・ストーンか?
「これを集めて大金持ちになれないかしら?」
「どうだろ、上質のダイヤモンドで宿賃十日分の価値にしかならないからなぁ」
「この国でお金持ちになるにはどうすればいいの?」
「わからん……。むしろ名声集めた方が良いのかもしれんしな。貨幣価値がいまいちわからん国だから……」
レスニリアンの調査メモは、その洞穴最深部にあった寝床の傍に転がっていた。
どうでもいいけど、あいかわらず緑娘のおっぱい、でけーな!
着物からこぼれそうになっているじゃねーかよ!
ひとまずこれで、目的の物は手に入れた。あとは宿屋に戻って届けたら終わりだな。
「どした? また麻痺の反射食らったか?」
「なんなのよこの剣、嫌い!」
「リッチはともかく、ランド・ドゥルーって反射技能あったかな?」
「…………」
「今なら何をしても反撃できないんだよな」
「…………」
おっぱい揉んでやるか?
いや、さすがにそれはかわいそうすぎるかな?
まぁこの緑娘なら、俺なら頼めば揉ませてくれそうな雰囲気ではあるが……(。-`ω´-)
………
……
…
そしてインペリアル・ブリッジの宿屋に帰還。
レスニリアンからの報酬は、毒のポーション。武器に塗って使用するらしいのだが、こちらが使っている武器は魔剣。あまり使い道が無さそうだな、売るかな?
ちなみにレスニリアンの調査メモは以下の感じ。
あまり研究は進んでいないようだ。とくにすごいな、と思われるような発見は無かった。
アイレイドの遺跡の外で光っているウェルキンド・ストーンは初めてとか、そんな感じの内容だけ。
なんだろうねー、あの石は。
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