未完の仕事ふたたび 後編 ~インプの胆嚢集め~

 
 さて、現在戦士ギルドの仕事でブラヴィルに訪れている。
 なんでもマグリールがまた契約不履行をやらかしたようで、その様子を伺いに来たわけでもあるのだ。
 しかしマグリールは既に戦士ギルドを抜けた後だった。彼はそのままブラックウッド商会に移籍してしまったらしい。
 それだけならスキングラードの時みたいに後始末をすればこちらの手柄になるわけだが、マグリールの持っていた盾は、ヴィラヌス・ドントンと同行したノンウィル洞窟で、ギャルタス・ブレヴィアが倒れていた傍に落ちていた盾と同じようなものらしかった。
 

「さて、どうする? このままオレインの所に戻る?」
「あいつなんかムカつくけど、仕事を依頼した人を放っておいたらギルドの信頼に関わるわ。あたしがあいつの仕事の続きをやる」
「さすがだ、そうでなくちゃな」
 
 緑娘が帰ると言えば、俺一人でも今回の仕事は片付けるつもりだった。
 なにしろ魔術師ギルドからの仕事だからな、俺的にも放っておけない。
 
 そういうわけで、ブラヴィルの魔術師ギルドを訪れて、戦士ギルドに仕事を依頼したものは居ないか当たってみた。 
 

 一人ずつ当たっていくと、このアライヤリィという人が依頼したことが分かった。
 なにやら研究用にインプの胆嚢が必要らしい。
 うむ、残念ながらインプはあまり見かけないので持っていない。それに胆嚢をわざわざ集めようとは思わないからな。
 やはりどこかで錬金術も学ばねばならんかも。
 
「ところでアークメイジ様が戦士ギルドの人なのですか?」
「いえ、自分はただの付き添い。ギルドの人はこっちのミ――テフラです」
「よろしく! 戦士ギルドのプロテクターであるテフラです」
「あと彼女は魔術師ギルドの準会員でもあるので、気兼ねなく仕事を依頼してください」
「わかりました。それではインプの胆嚢を10個ほどお願いします。強盗グレンの洞穴にインプが住み着いているから、そこで探してみたらいいよ」
「了解しました」
 

 強盗グレンの洞穴、地名に名前が残るぐらいだから、よっぽど有名な強盗だったのだろうな。
 場所は地図で見ればブラヴィルからちょっと北へ行ったところだ。それほど遠くはないな。
 

 というわけで、一気にユニコーンで駆け抜けて到着。
 わざわざインプが住み着く洞穴というのもわからんが、インプなら大して強くないので気にする必要はない。
 
「さて、ここにインプが住み着いているらしい。がんばって依頼の品物を集めてきたまえ」
「嫌よ」
「なっ、嫌はないだろう? それが君の仕事なんだぞ?」
「胆嚢なんて気持ち悪いわ」
「俺も触りたくねーよ」
「手伝ってくれなくちゃ、魔術師ギルドの仕事もやらない」
「…………(。-`ω´-)」
 
 緑娘はすぐそれを口にするなぁ。
 俺に無理強いするときは、必ず魔術師ギルドの仕事を引き合いに出す。
 どこかでガツンと言ってやらないと、わがままが増えるばかりになってしまう気がする。
 だが今回の仕事はその魔術師ギルド絡みだ。仕方ない、集めてやるか。
 
 
 洞穴の感じは、先日訪れたノンウィル洞窟とさほど変わらない。
 確かにインプがたくさん住み着いている。奴は力は弱いし魔法も大して強くないので、適当に戦っていても退治できる相手だ。
 

 インプ相手でも、平常運転で蹴り刺す緑娘。
 飛び回る相手の眉間を、よく一撃で狙えるものだ。
 

 緑娘が退治したインプから胆嚢を取り出す作業を行う。気持ち悪っ!
 なんか背後でグサグサ刺すような音がする。踏み刺すのはいいが、胆嚢は破壊するなよ?
 
 しかしこのインプから胆嚢というものがよくわからない。

 なにやら一時的に魅力が上昇する効果を持っているようだが、なんだ? 胆嚢美容法でもあるのか?
 
「おい、この胆嚢を使えば魅力が上がるみたいだ。美容に使ってみたらどうだ?」
「あたしそんなの使わなくても十分美しい」
「…………(。-`ω´-)」
 
 自分で言い切っちゃったよ、十分美しいと。
 どんだけ自信があるんだよ、まぁ個人的には十分美しいと思うが……
 ひょっとしてアライヤリィさんは、美容のために集めてきて欲しいと言ったのだろうか?
 
 後はこんな感じに同じようにインプを倒しては胆嚢を集める作業。
 洞穴を全て回っても良かったが、マグリールに待たされたということも考慮して、指定された10個を集めきった地点で引き返すことにした。
 
 ………
 ……
 …
 

 
「はいっ、ご要望のインプの胆嚢よ」
 
 そう言って緑娘は俺に視線を向ける。
 結局最後までインプの胆嚢を触らなかったな、この娘は。
 
「新鮮な胆嚢をありがとう。上司の方から報酬が支払われるんでしょうけど、ついでにこれをもって行きなさい」
 
 そう言ってアライヤリィさんが差し出してきたのは「盾の指輪」だった。
 たぶんギルドから出る報酬は600G。この指輪はそれ以上で売れるだろうなぁ……
 
 というわけで、二度目のマグリールの尻拭いは終わったとさ。
 ブラックウッド商会、なんかこの先も商売敵として関わっていきそうな気がするぞっと。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ