未完の仕事 ~職務の怠慢?~
さて、森を抜けてようやくスキングラードの近くまでやってきた。
ちなみにこの森の名前は、グレートフォレストというらしい。
一度スキングラードから帝都にかけて横断したことがある。あの時は、幽霊の居る池や、大人しい熊の居る場所を通ったものだが、ほかにもいろいろあるもんだなぁ
というわけで、砦である。名前はヘイヴン砦。何から守る砦なのかはわからんが、とにかく砦である。
この国は砦よりね、きちんと害獣駆除をしてくれる巡回兵士を増やすべきだと思うのだ、うん。
念のために訪ねてみる。
「砦よりも、害獣駆除を重視するべきだと思いますが?」
「砦の中の害獣は駆除しておる」
「いや、だから街道の……」
「街道は管轄外、衛兵に述べよ」
砦に駐留しているアルベシ軍曹はこんな感じだ。
まぁ駐留部隊に街道の環境の悪さはわからんだろうな。
その衛兵が役に立たんのだから困る。アンヴィルではとうとう街中にまでマウンテンライオンが入ってきたしな。
「マウンテン」ライオンだぜ? 山の獅子。山と名がついておきながら、港町に入ってくるのだ、世も末だ。
俺は強いからいいよ、緑娘テフラも。でも一般市民はどうするのだ?
ライオンに勝てぬもの、シロディールに住むべからず? まあいいや。
ヘイヴン砦の外には、王様でも模ったかのような石像が。
神様か? しかし語りかけてこない。安全な神様だ。
さて、ようやくスキングラードに到着だ。
まずは戦士ギルドで未完の仕事について尋ねよう。俺の仕事じゃなくて緑娘の仕事だけどな。
食事に紛れ込んで、情報収集。
「そういえば、未完の仕事が残っているというが、そんな仕事ありますかかねぇ?」
「あのマグリールのこと? ウェストウィルドの居酒屋で見掛けたよ。聞いた話だと何日も前から入り浸っているみたい」
「マグリールですね、わかりました」
なんか俺が交渉しているけど、これは緑娘がやるべきだ。
なんだ? やっぱり俺が面倒みてやらなくちゃダメ? 俺は17歳、もうじき18歳、ホントの年齢は知らんけどね!
というわけで、居酒屋と言うか宿屋。
「俺はシンデリオンに会って薬草届けてくるから、マグリールは自分で探しな」
「ちょっと待って、シンデリオンって誰よ?」
「雄である……(。-`ω´-)」
これで黙るから緑娘も単純だ。
エリクサーが役に立つのかどうか分からんが、ニルンルートに使い道もないし、欲しがっている人が居るなら譲ってやろうというわけだ。
ニルンルートをシンデリオンに届けて戻ってくると、丁度緑娘が戦士らしき人と話をしているところだった。
どうでもいいが、小さすぎないかこの戦士? それに顔つきがグラアシアに似ていて嫌なこと思い出させる奴だ。
緑娘も身体をかがめて話をしている。子供と会話しているみたいだ。
「職務の怠慢って何かしら?」
「ブレナス・アスティスの日誌を探す仕事か? 労力に見合う報酬がないからやらん」
「その日誌はどこにあるのかしら?」
「落石洞窟にある。俺は行かないからな、あんなはした金のためには。俺には大切な家族も居るからな、お前が行けよ」
「何よ! あたしには家族がいないとでも言うの?」
「居なさそうだな、尻も軽そうだし」
「んまっ!」
なんか雰囲気が悪くなりかけたので、間に入ってやる。
そんな色っぽい衣装を身に付けて、いつも誘惑紛いのことをやっているから尻軽とか言われるんだ。
俺だってお前がそんなじゃなかったら、魅了の魔術で試したりしなかった!(`・ω・´)
というわけでグラアシア――、じゃなくてマグリールの言っていた落石洞窟へと向かう。
スキングラードの北西辺りにある洞窟だ。以前魔術師ギルドの仕事で向かった、寂寥平原洞窟の近くみたいだね。
位置的にはこの先だ。
その道中、緑娘は俺に尋ねてきた。どうやらマグリールの言っていたことが気になるらしい。
「ねぇ、労力に見合う報酬ってなぁに?」
「それを気にしたらおしまいだ。山賊を狩ってその装備を売る仕事しかできなくなる」
「でもさっきの人は報酬が悪いから仕事しないって」
「この国では、報酬のために仕事をするのではない。名声のために仕事をするのだ!(言ってやった言ってやった)」
「アークメイジにまで登り詰めた人が言うと、説得力あるわねぇ……」
「さて、ここが落石洞窟。がんばって行っておいで」
「名声のために仕事するんじゃなかったの?」
「君の仕事だろ?」
「手伝ってぇ~」
「わかったからクネクネするな!」
そのしぐさが男を誤解させるのだ、いつか襲われるぞ?
普通に返り討ちにしそうだが……(。-`ω´-)
というわけで落石洞窟に入ると、普通に落石していてその犠牲者の骨がある。
「なんかやーね」
「確かに割りに合わないね。放置して帰る?」
「んーや、小さな仕事もこなして、ギルドの頂点に登り詰めるんだ」
どうやらこの娘は、報酬や名声のためではなく、野望のために仕事をしているらしい。
洞窟の中に居た、リッチに霊峰の指を炸裂させる。
魔力耐性を鍛えた緑娘にも通用する、数少ない高火力魔術だ。
「あっ、霊峰の指使った!」
「たまには使わないと錆び付いちまう」
「奥の手は最後の最後まで取っておくのよ」
そんなことを言いながら、さらに奥で遭遇したゾンビに前蹴りを炸裂させる緑娘。
ニードルヒールは奥の手ではなかったのか?
今回はグサッでもザリッでもなかった。グチャとか言って、足先が腐った肉にめり込んでやんのw
「やだなにこいつ気持ちわるっ!」
「ゾンビは燃やさないといろいろと汚いからな」
「やーん、変な汁が足についた、取ってよ~っ!」
「知らん、先に進む」
俺もさすがにゾンビを殴る気にはなれない。
こんな奴は、燃やしてやるのが一番だ。
洞窟の奥は水溜りになっていて、緑娘も先ほどついたゾンビの汁を洗い流せて落ち着いたようだ。
そしてその奥に、目的のものを発見した。
「これかなぁ、たぶん」
「他にそれらしきものはないし、たぶんそれだろうね」
「でもなんでこんなところに日誌を置いたのかしら」
「知らん、ゾンビにでも盗まれたのだろう」
「よし、これで未完の仕事も完了ね」
「グラア――マグリールに報告する?」
「なんで? あたしがこなしたのだからあたしの手柄」
「ま、それでよかろう」
というわけで、マグリールの残した未完の仕事をこうして解決させた。
たぶんマグリールは潔癖症だからゾンビと戦えないんだ。
俺からしたら、報酬は気にならないぐらいの労力だと思えるけどな。たぶんマニマルコ事件のせいで、仕事の難易度に対する感覚が歪んでいるのだろうけどね。
以上、未完の仕事おしまい。
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