北へ向かうの山道 ~逢わせ眼鏡~
さて、アイレイドの遺跡探索も終わったし、ブルーマへ向かいますか。
ただの移動にすごく時間がかかっているような気がするけど、気にしない。
元々ユニコーンとか使って一気に駆け抜けるつもりだったけど、この娘の要望で徒歩移動となったからなぁ。
ブルーマの道は、ここから山道へと変わっていく。
以前も通ったことあったけど、ブルーマって北にある高地にある街なんだよね。
途中、アカグマなどが襲い掛かってくる。相変わらず街道に猛獣が出没する危ない国だ。
ユニコーンに乗っていたときは無視して駆け抜けることも可能だったが、自分の足ではクマの追撃を振り切れない。
というわけで、退治することになる。
相変わらず身体の柔らかい娘だの。
スプリガンと違ってアカグマは耐久力があるので蹴り一発で仕留めるとかはならないようだ。誤爆に気をつけて戦わなければならなくなってきた。
「あるー日、山のー道、熊さんに、出会った」
なんか歌っている。
それは良いとして、この近辺に来たときに俺は、そういえば? と思うことがあったので寄り道してみた。
「へー、こんな山道から逸れたところに村があるのね」
「ちょっと因縁のある村でな」
「やっつけるの?」
「やっつけた――じゃなくて、俺にもよく分からないうちに、メファーラという神にそそのかされて……」
「いけないわ、神のことを悪く言ったら」
「じゃあ今度メファーラの祭殿に、ベラドンナを持って近づいてみろ」
村の中には、一人だけぽつんと立っている人がいるだけだった。
他の人は、まさか――?
「えっと、他の皆は?」
「皆やられてしまった、私が最後の生き残りだ……」
「いったい何があったの?」
娘はなんか興味津々だが、あまり深く考えないで欲しいところもある。
「この村は元々二つのグループが仲良く暮らしていたんだ。しかしある日、それぞれの長がお互いに殺しあってしまったんだ。それから村は二分して争い、そしてこうなってしまった……」
「酷い話ね……」
「メファーラという邪神に注意せよ――」
俺はそう言う事しかできなかった。
まさか俺が邪神にそそのかされて、二人の長を暗殺したと言えば、この娘はどんな顔をするだろうか?
それでも俺に好意的でいてくれるのだろうか?
あの時暗殺しに入った長の家に行ってみる。
なんなんだろうね、気晴らしに世の中の情勢に干渉する神だと言われているが、気晴らしで村を滅亡させてどうするんだろう?
宿屋ももぬけの殻。
先ほどの男性を残して、マジで全滅してしまったのかもしれない。
まいったな……(。-`ω´-)
………
……
…
気を取り直して、再びブルーマへと向かう。
別ルートを通って、タイターの家にも寄ってみよう。
途中、どこかへ続く石段があったりした。
「向こうに祭殿みたいなのがあるけど、あれはなぁに?」
「あれか、分からん(。-`ω´-)」
石段の先にあった崩れかけた祭殿。
ここはアカトシュの祠らしいが、これに関してはまだあまり詳しくない。
何かの力を得られるみたいではあるが……
そしてタイターの小屋。
とりあえず領主から報酬をもらって、悠々自適な生活を送っているらしい。
気が向いたらブルーマの魔術師ギルドに参加してもいいんだぞ。メンバーになるには全ての街の推薦状が必要だけど、名誉会員というのもある。
まぁこの人は、魔術向きじゃなさそうだから別にいいけどね。
そのままタイターの小屋から北へと向かう。
「そういえばさ、初めて出会った時に俺の使っているモノクルレンズと同じようなもの持っていたような気がしたけど、あれは何?」
「あたしは初めてじゃないんだけど、まあいいわ。逢わせ眼鏡ね、あなたがずっと身に付けていたからあの時は安心したんだけどね」
「う~ん、なんだかこれだけは外したり無くしたりしたらいけないような気がして、ずっと身に付けていたんだよね」
「覚えてないのね……、でも深層意識では大事なものって認識しているんだ」
「――で、これは何?」
娘は自分の懐から、俺の持っているものとそっくりなレンズを取り出して話を続けた。
「元々一つのグラスだったものを二つに分けてお互い持っていれば、たとえどれだけ遠くに離れても、いずれまた巡り合える。そういう話を二人で作ったじゃないの」
「なんかロマンチストだったんだな」
「はぁ……、でもおかげでこうしてめぐり合えたんだし、あたしはこの逢わせ眼鏡の話が本当なんだなって実感したわ」
「さっきの話だと、自分達でそういう話を作ったんだよね?」
「そう、私達が伝説を作ったのよ、こうして!」
この娘はともかく、俺ってロマンチストだったんだな。
過去の俺も、意外と悪くないのかもしれない。
さて、いよいよブルーマの城壁が遠くに見えてきた。
なんかただの移動にすごく時間をかけてしまったようだが、これでブルーマギルドの進展を確認できるぞ。
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