ウェルキンドストーン集め ~願い事は何ですか?~
「おはようございます、夕べはお楽しみでしたね」
「ほう、言うようになったな。アンコタールをけしかけて、また透明にしてやってもいいんだぞ?」
「冗談です、またのお越しをお待ちしております!」
むろん俺は手出しなどしていない。
記憶にない過去の俺は既にこの娘とやっているみたいだが、今の俺は一緒に旅を始めた初日から手を出すほど野獣ではない。何と言っても、魔法使いの長なのだ!
守り抜くぜ! ユニコーンに乗れる権利を! ――って何だよそれは!
とまぁそんなことは、どうでもいい。一晩眠って娘も回復したようなので、ディラムの経営するエイルズウェルの宿を出発した。
「ねぇラムリーザ、あれは一体なぁに?」
「なんだっけ、アイレイドの遺跡といって、死霊術師や山賊が住み着いている危ない場所だな」
詳しくは知らないが、かつてシロディールを支配していたアイレイドというエルフ族が築いた建物らしい。
帝都の町並みも、元はアイレイドが造った物をそのまま使っているらしいのだ。
まぁ潜る価値はある。千個集めると願いが叶うと言われているウェルキンドストーン、白く輝くヴァーラストーン。こういったものを集めるのも悪くない。
同行している娘が一度見ておきたいというので、せっかくだからこの遺跡に潜ってみよう。
遺跡の名前はセルセン。サーセンとも呼ばれているらしいが、名前に何の意味があるのかはわからん。
「まずい時に道に迷ったようだな!」
「出たな山賊! 狩り狩りしてやる!」
出るのがわかっていたので、落ち着いて対処する。
先ほど述べた通り、これまでの経験上、死霊術師か山賊が住み着いていることはわかっているのだ。
プリズム・スプラッシュを放つ。同行の娘には効かなかったが、普通は弾け飛ばしたり麻痺させたりする便利な魔術なのだ。
「どうだ、こうして動きを封じておいて、今回は山賊こんがり亭でもやっちゃいますか」
「こんな敵一撃よ! ニードル・ストンピング!」
怖いことをする娘だこと。
自分の武器の使い方を熟知していらっしゃる。要はミスリル・ニードルで刺しているようなものだしな、自分の体重をかけて。
しかし娘は、山賊を退治した後の俺の行動に驚いたようだ。
「ちょっとなにあなた、何で山賊の身包みを剥ぐの?」
「教えておいてやろう。この国でお金を稼ぎたければ、真面目に働くよりもこうして山賊などを退治してその装備を売るほうが手っ取り早く稼げるのだ」
「すごい価値観の国ね……」
「いや、凡人は3Gのお恵みを――などと言っているのだ。こいつの鎧だと一着で500Gは固いな。ちなみに上質なダイヤモンドで100G。宿賃は一泊10Gだ」
「それだと追い剥ぎが出没しまくってそうね」
「よく知っているな、俺は追い剥ぎ狩りもやっている」
そんな感じに、この国で裕福に暮らしていく方法を伝授してあげたりする。
絶対おかしいとは思うが、この方がお金を簡単に稼げるのだから仕方がない。
「さっそく入りましょうよ」
「死霊術師に捕まってゾンビにされるなよ」
死霊術師はマニマルコを退治したので大人しくなっているとは思うが、用心に越したことはない。
そういうわけで、俺達はセルセンの遺跡へと足を踏み入れていった。
「これが目的だったりもするぞ。なんか青白く輝く石が飾られているだろう? あれがウェルキンドストーン、千個集めると願いが叶うそうだ」
「それじゃあ千個集めてあなたの記憶を戻してもらいましょうよ」
「君に会うまでは過去なんてもうどうでもよくなっていたけど、こうなったら意地でも千個集めなくちゃな」
「お前のゴールドを数えるのが楽しみだ!」
「誰だ!」
――と言うまでもなく、遺跡の中は山賊のねぐらとなっていたようだ。
二人の山賊が、俺達めがけて駆けつけてきた。
「金が欲しければ追い剥ぎをするんだな!」
「殺してから盗むほうが簡単だからな!」
「分かってるじゃねーか!」
そういうわけで、山賊を退治する二人であった。
うん、君達の装備は生活費に変えさせてもらうぜ。
やっぱり共闘できるところは楽かもしれない。これまではほとんど一人で戦ってきたようなものだからなぁ。
時々連れ立って行ったジ=スカール先輩は、戦闘タイプってわけでもなかったからね。
「さて、邪魔者も居なくなったしウェルキンドストーンを回収しますか」
「今どのくらい持っているの?」
「ん~、五十個ぐらい?」
そこで俺は、今持っているものをいくつか並べてみた。
「へ~、近くで見たら綺麗ね。これもらっていいかしら?」
「別にいいけど、何か願い事でもあるのか?」
「千個集めてあなたの記憶を戻してもらうの」
ん、それならどっちが持っていても同じか。全部やる。
「おれはこっちのヴァーラストーンを集めるかな」
「そっちは集めたら何になるの?」
「わからん、今度ジ=スカール先輩に聞いておく」
「誰その人?」
とたんに娘の目が険しいものになる。
なんだ? 俺が知らない奴と関わるのが不安か?
「ブルーマギルドにいた獣族、カジートの魔術師だよ」
「ああ、あの人――、人でいいのかな?」
「一応獣人というくくりだから、人であることには間違いないだろう」
たぶんこの娘は、アルゴニアンやオークに出会うとビックリするな――
などと思いながら俺は、宝石を漁りつくした遺跡から立ち去るのであった。
前の話へ/目次に戻る/次の話へ