支部の人事 前編 ~三人の候補~
さて、逃げるように魔術師大学へと戻ってきた俺は、ブルーマギルドの支部長にについてラミナスに相談した。
何故逃亡生活みたいなことをしているのかわからんが、俺は過去を恐れているのだろうか?
あの娘と深く関わったら、今の俺の生活が崩れてしまうのではないだろうか?
そんな不安にかられるのだ。
少なくとも今は、俺はシロディールの魔術師ギルドの最高峰アークメイジだ。
ギルドのメンバーは、すれ違うたびに「アークメイジ様、ごきげんよう」と声をかけてくれる。この生活は悪くない。失いたくない。
でもあの娘は俺のことをなぁ……(。-`ω´-)
さっそくラミナスに切り出す。ブルーマ支部の人事について。
どうやら最近は、立派なギルド支部長を見つけるのが難しいそうだ。たぶんファルカーのせいだな、あの裏切り者。
俺はジ=スカールで良いと思うのだが、彼には彼の野望があるのだ。無茶苦茶しょうもない野望だが。
そこでラミナスは、現在三人の候補が考えられると言ってきた。
一人目はイラーナ・ソニミア。たいていは、信頼できて、誰にでも好かれている。たいていはという言葉がひっかかるが……
二人目はジ=スカール。元ブルーマ所属だからブルーマに馴染みがあると。俺もそう思うのだが、あの人はなぁ……まったくしょうもない野望を……(。-`ω´-)
三人目はジュラーエル。最も相応しかったのでしょうが……、となぜかラミナスは口をつぐんでしまった。
まぁイラーナかジュラーエルに絞って話を聞いてみるか。
しかしイラーナってまさかコロールのイラーナさん? あの人、霊峰の指を持っているんだぞ? やばいぞ? いや、実力的には支部長候補だろうけどね。
そのイラーナは大学に居るらしいし、ジュラーエルについてもいろいろ聞いてみよう。
大学の研究室、錬金術館、カイロナジウムなどでいろいろな先生と話して回って見たところ、なにやらイラーナの評判がすこぶる悪い。
曰く、イラーナは安物のラミナスだから、ジュラーエルを探すべき。イラーナのことは好きではない。イラーナは相応しくない、彼女が特に尊敬を得ることは無い。
酷い言われ方だな。でも新人の学生達には評判がいいらしい。
とりあえず会ってみた。
うん、小柄で優しそうなおばさんだ。
ジ=スカールの獲物として、これほど相応しい人は居ないだろう。この人を支部長にしたら、気の毒な未来しか見えん。
しかしここの生徒には慕われているようだから、無理に引き離すこともないだろうし、ジュラーエルにも一度会ってみないとね。
ジュラーエルについて詳しい話は、カイロナジウムのデルマールから聞くことができた。彼には以前、魔術師の杖を作ってもらったことがある。いろいろ役に立ったよ、麻痺の杖。
で、ジュラーエルだが、最も優秀だったとかベタ褒めしまくりんぐ。そんなにすごかったのか? ならば何故ここに居ない?
それは、約七年ほど前に、評議会でトラーベンと口汚く言い争い、大学を去ったのだという。
おお、評議会は元々四人か。一人は喧嘩別れ、二人は裏切られ、ハンニバルも気の毒なこった。
そのジュラーエルは生と死について研究していたので、なにやら死霊術師と間違えられていたらしい。しかしデルマールの知る限りでは、死霊術ではなかったと。
そして最後に、レヤウィンギルドのアルヴェス・ウーヴェニムなら、かつてジュラーエルと親しかったので、彼がどこにいるか知っているだろう、と。
レヤウィンか、シロディール最南端のジメジメした気候の場所だな。
あ、ちなみにデルマールは、イラーナのことを「彼女は馬鹿です。この人事でまたギルドを駄目にしてしまうでしょう」と言ってきた。イラーナはもういいよ、ジュラーエルと話してみよう。
問題は大学の面々が、揃ってジ=スカールは可哀想だからそっとしておけ、彼は挫けていると言うことだ。既に立ち直っていて、新しい支部長に仕掛けるイタズラを考えているのですけどね……
というわけで、南へ向けての旅を始めた。
旅はいいねぇ、アークメイジの部屋なんか、戻りたくない戻りたくない。
南への旅路の途中、久しぶりにある場所に通りかかった。
白馬騎士団の隊舎である、白馬山荘。
俺はここで、マゾーガ卿と同棲――していない!
もうここはマゾーガ卿にやることにしていた。だが久しぶりなので、ちょっと会ってみようか。オークは顔が怖いけど……
しかし、彼女はまだ眠っていた。
俺は、その寝顔を見つめて思った。
「うーん、やっぱりオークは怖い……」
それに比べたら、あの娘はやっぱり……
あまりじっくり見たわけではないが、思い出して見よう。多少美化されるかもしれんがw
うーん……(。-`ω´-)
女性はトカゲやオークやおばさんとばかり知り合うこの国。しかしあの娘は、けっこう美人で可愛いかもしれない。
あの娘と向き合って、過去と対面するのも悪くないかもしれない。
これまでは逃げてばかりだったけど、一度じっくりと話し合う必要もあるかな?
過去がどうだったであれ、あの娘と新しい世界を築き上げるという選択肢はあるはずだ。
少なくともあの娘は、敵というわけではなさそうだし……
いや、許婚だっけ? そこが怖いんだよ……
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