「ところでで、それは何の格好だ?」
 

 新生シェオゴラス誕生祭の朝、目が覚めると緑娘が全身緑娘になっていた。
 
「結婚式を挙げてくれるって言ったでしょう? こんなこともあろうかと、用意していたのよ」
「ああ、それ系統の衣装だったか」
「あなたもそれ系統の衣装に着替えなさいよ」
「別にこのままでもかまわんが――」
 
 でもまぁ折角だから、いつもと違う俺を見せてやろうか。
 ――と思ったけど、実は今日の日に相応しい衣装があったりするのだ。
 
 

 どうだ!
 シェオゴラス二世になるつもりはないが、便宜上シェオゴラスの後を継いだことになっている。
 公式の場では、この衣装で現れる方がよかったりするのかもしれん。
 
「よし、これで君はシェオゴラス夫人となるのだ」
「やっぱりシェオゴラス二世になるのね」
「……えーと、ネレウ――?」
「ネレウテリア」
「ネレウテリア夫人でいいです」
 
 思い出せない限り、この名前にはしっくり来ない。
 しかし、俺の本名フルネームは、どうやらラムリーザ・ネレウテリアらしいのだ。
 それだったら、ラムリーザ=シェオゴラス・ネレウテリアとして生きていくと決めたばかりだったので、慣れるしかないというわけだ。
 
 

 今日の予定は、朝から晩まで宴となっている。
 午前中は、サセラム・アルデン=スルで緑娘との結婚式。
 午後からはずっと、ニュー・シェオスで新生シェオゴラス誕生祭だ。
 どうせこの世界の住民、特にマニア地方の住民は、年がら年中頭の中がお祭り騒ぎなのだろうがな。
 俺の治世で、少しずつまともな世界へと導いてやる。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

 そして、戦慄の島のしきたりに従って、俺と緑娘の結婚式は始まった。
 

 それぞれの村から集まってくれた人たちが、サセラム・アルデン=スルの講堂に並んでいる。
 

 まずは、俺と緑娘は祭壇に向かって並んで進まねばならぬのだ。
 

 ハスキルに聞いてリハーサル済み、ただ歩くだけではない。
 これも狂気の世界の名残り、踊るように入場するのがポイントなのらしい。
 

 俺と緑娘が動くたびに、招待客は「わあっ」と沸いて拍手喝采。
 妙な風習もあったものだ。
 

 

「ああ、誇らしげな花婿と、美しき花嫁がやって来た。式を始めよう」
 

 聖女マーラは初めに創造物を産み、同胞を神の子として守護することを誓い給うた。
 民を愛し給う聖女の教えにより、我らは相互の愛を学んだ。
 そしてその愛から、独り身の人生が全き人生ではない事を我らは学ぶ。
 今日ここに、聖女マーラの愛の眼差しの下、我らは会して二つの魂が永久の交わりで結合することを証言する。
 神の子らが、この世と次の世を通じて、富める時も乏しき時も、また喜びと難をも共にすることを念ずる。
 
 教会に居る二人の司祭が、声を揃えて宣言する。
 これが巫女だったら、伝説の不死鳥の卵を守っていそうな雰囲気ではあるが、残念ながらここにいるのは二人のおっさんだ。
 ちょっと気になったことを尋ねてみる。
 
「マーラなん?」
「結婚式は、どこであろうともマーラです。それでは花嫁テフラよ、夫を未来永劫、愛し続ける事を誓うか?」
 
 どうやらタムリエルでは、九大神の一つであるマーラが結婚を取り仕切っているらしい。
 マニア側の司祭、ダーヴェニンは緑娘に尋ねてきた。
 
「はい、これからもずっと――」
「花婿ラムリーザよ、未来永劫、妻を愛し続ける事を誓うか?」
「そうだな、永命の者となったし、たちまちは一万年と二千年ぐらいは愛し続けてみよう」
「その後はどうなるのかしら?」
「たぶん八千年過ぎた頃からもっと恋しくなると思うので、一億年と二千年後も愛しているだろう」
「五億年ボタンは押す?」
「君と一緒に居られるなら、押すさ」
「雑談やめい! 愛の神マーラの名において、二人の婚姻をここに認める!」
 
 二人には、マーラの神聖なる愛の祝福を受けた揃いの指輪を授けよう。
 二人の新たな生活において、互いを護ってくれるであろう。
 

 こうして、俺たちの結婚式は終わった。
 

 ………
 ……
 …
 
 

 午後は、予定通りニュー・シェオスでの宴会だ。
 まずは全員で乾杯と行こうではないか。
 みんなに酒が行き渡ったところで、俺は――
 

「乾杯! ――と俺が言ったら乾杯だぞ~」
「乾杯~っ!」
 

 ラナル・ジョーだけの声が響き渡る。
 引っかかったな王様!
 
 さて、せっかちな奴をあぶり出したところで、改めて――
 

「さあ、新しい時代の始まりだ! 乾杯!」
 

 俺の音頭に合わせて、王様以外の乾杯が響き渡った。
 

 なぜカップを地面に叩きつける?!
 お前らこれから出征するのか?
 
「何カップを叩きつけているのよ」
「あれっ? 俺もやってた?!」
 
 ぬ、プロージットということで……
 いや、それ出征前祝いやん……(。-`ω´-)

 まぁ、なんというか――
 
 
 平和だよな。
 
 シロディールから戦慄の島にかけて、いろいろと辛い事もあったけど……
 俺は今、たぶん幸せだ。
 
 さあ、新しい世界を創っていこう!
 緑娘と共に!
 
 
「さて、最後にみんなで記念撮影と行こうか」
「ほらそこ真ん中に寄って」
「王様、女王様、お前らも入ってこい」
「あれ? ランズ・イン・サークルが居ないよ」
「またどっかに走っていったか。まぁ、ワ=マワーレ一人ぐらい欠けたところで問題ない」
「それではみんな撮影機を向いて笑顔でーっ」
 
 

 パシャリ!
 
 
 
 




 
 
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