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裏工作 後編 ~自作自演の謎~

 
 港湾地区の捜査を全力で仕掛けてきたレックス隊長を引かせるために、帝都で大きな盗みを4つ同時に行うことになった。
 そして俺に割り振られた仕事は、魔術師大学からフローミルの氷杖を盗み出すことだった。
 

 しっかりと計画はねらなければな。
 まず1階、ラミナスさんとボシエルさんが居なくなるのを待って、二階の会議室まで入り込めたらアークメイジの私室まで障害は無い。
 しかし現在アークメイジの部屋には、アークメイジの婚約者らしき娘が泊まっている。
 彼女の目を誤魔化すために、やはり夜まで待つ必要が――
 
 
 ――って、なんで俺の部屋に入るためにコソコソしなくちゃアカンのや!
 あほらし、正々堂々と盗みに行ってやる!
 
「あ、ラミナスさん、ボシエルさんお疲れ様です、おやすみなさい」
 
 堂々と挨拶して、二人とすれ違う。
 そして一気にアークメイジの私室まで――
 

 ん、緑娘は寝てるな。
 このフローミルの氷杖は頂いていくぞ、俺のだけどな。
 

 それと、メスレデルから言付かったメモをナイトスタンドに置いていかなければな。
 
 よし、これで任務完了。
 あとはこの杖をメスレデルの所へ持って――
 

「あっ、ラムリーザ帰ってたの?」
「おわあっ、びっくりした!」
「何してるの? フローミルの氷杖をどこかに持っていくの?」
「実はな――」
 
 緑娘には隠す必要が無いので、俺は現在盗賊ギルドで行われている仕事について説明してあげた。
 
「それであなたがアークメイジだって盗賊ギルドにばれてないの?」
「わからん、すっげー不安になっているんだよ」
「まあいいわ、あたしにできることなら何でも手伝うよ」
「戦闘にはならないと思うけどな……、あ、そうだ」
 
 俺は、先ほどナイトスタンドに入れたメモを取り出した。
 ちょっと読んでみよう。こいつはアークメイジ宛の手紙、つまり俺に対して書かれた手紙なのだ。 
 

 グレイ・フォックスからの手紙だった。
 大事な遺物がまた消える前に警備兵を戻させることだと?
 どれだけ警備兵が戻ってきたところで、俺の窃盗を防げるわけ無いだろうが。表向きには私物の持ち出しだしさ……
 
「この手紙をラミナスさんに渡しておいてくれ。あと、何者かにフローミルの氷杖が盗まれたとも」
「わかったわ、自作自演がんばってね」
「自作自演言うな……(。-`ω´-)」
 
 これで、アークメイジの私室からフローミルの氷杖を盗み出す――、持ち出すことに成功した。
 もっとも、俺がこの杖を持ち出すことに反対する奴は大学内に一人もおらんけどな。
 さて、何事も無かったかのように外に出て――
 

「おおっ、君はアークメイジの――」
「おわあっ! ってシンドリさんじゃないですか! 大学に来ることにしたのですね!」
「うむ、いろいろ考えたけどまたお世話になることにするよ。ところでアークメイジの名前をまだ聞いてなかったんだ」
「俺の名前はラムリーザ、アークメイジでありグランドチャンピオンでありこそ泥――」
「こそ泥?」
「なんでもなかとですばい」
 
 ふー、出くわしたのがシンドリさんでよかった。
 彼は今大学に来たばかりだから、まだフローミルの氷杖の存在を知らない。
 俺は何事も無かったかのように、大学から抜け出して――、外出するのだった。
 どこにコソコソする必要があるのだ。
 

 フローミルの氷杖を持っているところを衛兵に見られても、何の後ろめたいところも――
 待てよ?
 
 下手に見せびらかしていたら、盗まれたーと騒ぎになった時に、アークメイジが持ち出していたよとばれるかもしれない。
 まぁ衛兵はフローミルの氷杖とか知らんから大丈夫だろう。
 
 

「というわけで持ち出し――、盗んできてやったぜ! アークメイジはぐっすり眠っていたよ!」
「すばらしい、あなたので最後よ。あとはレックスの包囲が打ち切られるのを待つだけ」
「待つだけでいいのな?」
「ん~、レックスの傍でこっそりと聞き耳をたてて、衛兵を元の配置に戻すようになったら私に知らせて」
「…………(。-`ω´-)」
 

「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。レックスの所に行ってくる」
 
 俺の杖に、少しの間の別れを告げていただけさ。
 すぐに取り戻してやるから待ってろよ。
 
 ………
 ……
 …
 

 そして港湾地区である。
 レックス隊長と衛兵がうろうろしまくっている。前もあったな、こんな景色。
 

 しばらく待っていると、ドレモラが姿を現した。
 なんだ? ここで敵襲か?
 
 しかしそのドレモラは、レックス隊長に何か手紙を渡しただけで、そのまま立ち去ってしまった。
 手紙を読んだレックス隊長は、衛兵の引き上げを命じるのだった。
 そして隊長自身も、手紙を投げ捨ててから港湾地区から立ち去っていくのだった。
 

 何だろう、レックス隊長を動かしたこの手紙は。
 

 それは、ラミナスさんからの手紙でした。
 ということは、緑娘はきちんと報告してくれたようだな。
 先ほどのドレモラは、ラミナスさんが召喚したものか。俺もドレモラを操って何かできた方がかっこいいよな?
 召喚魔法はあまり使ってなかったな、ちと本腰入れて学んでみるか。錬金術も――
 
 

「というわけで、レックス隊長は撤退したよ」
「すばらしいわ。そこであなたに最後の仕事があるの」
「伺いましょう」
「誠意の証として、盗賊ギルドはフローミルの氷杖を魔術師大学に返します」
「ほう」
「でも魔術師は信頼できない奴らよ。きっと杖があった場所は見張られている」
「大丈夫、俺ならうまく潜入してやるさ」
「杖が戻ってきてあなたを見つけたら、何のためらいなくあなたを殺すでしょうね」
「…………(。-`ω´-)」
 
 魔術師大学内戦突入ですか?
 見つかるといっても、むしろ自作自演がばれた時にものすごく怒られそうだ。
 ラミナスさん、あの人無茶苦茶真面目だからな。
 緑娘も推薦状集めるまで、アークメイジ特権発動しようとしても大学に入れてくれなかったからな。
 
「そこで、オントゥス・ヴェイニンの家に行って、金庫の中に置いてきてほしいの。オントゥスは大学の元研究員だから、その内何事もなく大学に杖が戻るはずよ」
 

 なんか知らんけど、フローミルの氷杖はあっさりと魔術師大学側に戻ってきた。
 俺がそのまま持ち帰ることも可能だけど、よく考えたら盗まれた杖を何事もなかったかのように俺が持ち帰ったら、俺が盗賊ギルドと裏で繋がっていることがばれるかもしれないな。
 逆に大学側から咎められなくても、そのことで盗賊ギルド側が不審に思うかもしれない。
 ここは素直に従って、オントゥスの家に置いてくるか。
 なんかオントゥスが杖を盗んだ犯人に仕立て上げられそうな気もするが、俺が彼に貸したと言えばみんな納得するだろう。
 

 というわけで、オントゥスの家である。
 入り口の鍵は不壊のピックでピッキング。その現場を衛兵に見られなければ問題ない。
 それにしても、めんどくさ。なんでこんな仕事を俺が――
 やっぱり盗賊ギルドは一斉検挙して無くしてしまうべきだな。
 

 くそ、元研究員のくせに良い部屋に住んでいる。
 アークメイジの私室と交換しませんか?
 ――とまぁぼやいてないで、杖を部屋にあったチェストに入れて任務完了。
 後はオントゥスが大学に杖を返還してくれるのを待つとしよう。
 
 あー、なんか精神的にいろいろと疲れた。とっとと部屋に戻ってゆっくりと――

「アークメイジ!」
「おわあっ! 断じて自作自演などしていません!」
「何を言っている、フローミルの氷杖が盗まれたのだ! 私あなたの部屋に誰も来なかったのか? 犯人は見かけなかったのか?」
「……見たような、見てないような……、じゃなくて、この通り散歩していたのだから私室に居なかった。犯人なんて見てないよ」
「そうか、折角君に取ってきてもらったのに実に残念な結果になってしまった」
「なぁに、いずれ取り戻してやるさ。それよりも、オントゥス・ヴェイニンって知ってます?」
「う~ん、聞き覚えのある名前だね。魔術師大学の関係者だろう」
「それじゃあ大丈夫ですね」
 
 ふぅ、なんとか誤魔化した。
 絶対に自作自演をラミナスさんにバレてはいけない。
 俺はラミナスさんと別れて、自室へと向かっていった。
 

「お疲れ様、楽しかったかしら?」
「全然楽しくない、むしろ俺は一体何なのか分からなくなってきた」
「あなたはあたしの婚約者、それ以上でも以下でもないわ」
「そうだな、今夜は君に慰めてもらおう」
「おいでらむたん、あたしが存分に癒してあげるわ」
 
 らむたんじゃねー、それは羊の名前だ!
 ――などと突っ込む気力のなかった俺は、緑娘の膝枕ですぐに眠りについてしまったのである……
 
 
 おしーまいっ
 
 

 
 
 
 
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