アリーナ伝説の戦士 ~熱狂的なファン~

 
 さあ、新しいアリーナグランド・チャンピオンの誕生だ!
 最後の戦いはなんだかいろいろとあったが、結果的に俺はアリーナの頂点を極めた。
 そこでイザベルと話をすると、今後の予定について聞かされたのだった。
 
 なにやら試合のルールを変えて、新しい形式の試合を作りたいそうだ。
 週変わりでモンスターや猛獣を相手にショーをするのだ。
 ショーになるのか? というツッコミもあるが、シロディールの民は新しい刺激を求めているらしい。
 勝利は貪欲に次の勝利を要求するとはよく言ったものだ。
 どうやら俺は、定期的にアリーナでショーバトルを開かなければならなくなったようだ。塩でいいのなら何でもやるのだけどな!
 

「まだアリーナで戦うの?」
「週に一度で良いらしい。ちょっとした小遣い稼ぎだな」
「あんた、相手はミノタウロス・ロードだけど、一匹と二匹と三匹、どうする?」
「一匹に決まっているだろうが!」
 
 そんなわけで、最初のショーバトルが始まった。
 ショーバトルだと言うことはブックがあるのだろうな?
 もちろんミノタウロス・ロードが負けというケツキメ有りなんだろうな?
 
 ………
 ……
 …
 

 確かにミノタウロス・ロードが向こうのゲートに居るね。
 それにしてもこの実況、俺の事を「アリーナ伝説の戦士」だとさ。まだ現役であって伝説じゃないのにね。
 現役が終わってから伝説になるのだ。伝説が終わったらどうなるのかだって?
 
 歴史が始まるのさ(。-`ω´-)
 
 

 さあ、アリーナ伝説の戦士の第一戦目開始だ!
 アリーナ伝説の戦士と言っても、おてんば姫ちゃうで!
 ミノタウロス・ロードは巨大なハンマーを俺に叩きつけようと振りかぶって――
 

「遅い!」
 
 避けるのもこうクルクルッと観客を意識してだな!
 グランド・チャンピオンが塩であってはいけないのだ。
 命がけの戦いに塩もクソもあったものではないというのが正直な気持ちなのだがな!
 

 ミノタウロス・ロードの次の攻撃を待っている必要は無い。
 素早く傍の柱に向かって飛び上がる。
 

 棒立ちだぞ?
 俺を見失ったか?
 

 出たーっ!
 数々の難敵を仕留めてきた、そして投獄もされたこともあるラムリーザキック炸裂!
 緑娘の蹴りとは違って重みがあるで! 向こうは重みの代わりに針があるけどな!
 

 どやぁっ!
 このように、蹴りを放った後も観客を意識してだな。
 アリーナは俺を成長させた。魅せる戦いをすることにおいてな!
 

 さて、かねてから研究中だった新技を披露してやるぜ!
 たった今思いついたということはナイショだけどな!
 

 ヘッドバット! 頭突きだぜ!
 
 
 …………(;-`ω´-)
 
 

 痛すぎる……
 相手も痛いだろうが、俺も無茶苦茶痛いじゃないか……
 
 
※ショーバトルにおける頭突きは、相手の髪などを掴んで、その手に自分の頭をぶつけるのだとラムリーザが知ったのは、ずっと先の話であった――
 
 
 その間にミノタウロス・ロードは、何事もなかったかのようにゆっくりと起き上がり――
 

 マズイ、頭が痛すぎてこれ以上の交戦は難しい。
 十分魅せる試合はしたと思うので、終わりにするからな!
 素早くバックステップからの――
  

 新グランド・チャンピオンのフェイバリット・ホールド、霊峰の指改!
 これで終わりだからな! いや、ケツキメとか無いけどな……
 
 

 こうしてショーバトル第一戦目は、無難な流れと無難な終わりを迎えたのであった。
 観客の興奮と引き換えに、俺は頭痛に悩まされていた……
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

「試合どうだった?」
「なんだか演技みたいだったわ」
「魅せる試合をしたんだ。多少演技は入れていたさ、命がけの演技だがな」
「それで報酬は?」
「1190G。でも向こうもモンスターを仕入れる準備が必要だから、次の試合は一週間後だけどね」
「へー、ギルドの仕事の二倍ぐらいの報酬じゃないの」
「山賊の鎧を剥ぎ取ってやれば、緑色の鎧とかなら一着でそのくらいで売れるけどな」
「ふ~ん、まあいいわ。これからどうするの?」
「そうだなぁ、戦士ギルドの運営が軌道に乗るまでしばらくのんびり暮らすのも悪くなかろう」
「戦士にも休息が必要ってことね」
「そういうことだ」
「グッ、グランドチャンピオーーーン!」
「なんぞ?」
 
 緑娘テフラと今後について話し合っていると、アリーナの外から妙に甲高い男の声が響いてきた。
 

 何者かが駆けて来る、刺客か?
 武器は持っていないようだが……
 

 どうやら敵ではないようだが、若干うっとーしいな。
 まあでもあのわけ有りだったグレイ・プリンスとの戦いを見て最高だと思ってくれる者が居たのか。
 なんとか演出してみせた甲斐があったというものだ。
 

「ミノタウロスとの戦いも最高でありました! 僕はあんたについていくよ!」
「失せろ小僧、ファンなど要らぬ!」
「そんなこと言わずにさ、うっわーほんとにグランドチャンピオンだ! 握手してください!」
「まぁ握手ぐらいなら――」
 

 ……いや、違うからね(。-`ω´-)
 
 そんな怖そうな目で睨みつけないでね、緑娘さんよ。
 こいつが勝手に抱きついてきただけであって、俺にホモッケは無いからね!
 
「グランドチャンピオンは僕のもの、僕のものはグランド・チャンピオンのもの」
「何を言ってんのよ、婚約者はあたしだからね!」
「僕がグランドチャンピオンの婚約者になるんだ!」
 

「ええい離れろ! 気持ち悪い!!」
「あんたなんかにラムリーザはあげないわ!」
 
 いろいろと危険を感じた俺は、自称ファンを名乗る小僧を跳ね飛ばしてやった。
 こいつ、弱いw
 

 すかさず倒れた小僧に飛び乗る緑娘。
 飛び上がって全体重を小僧の尻にかけているようだ。
 いつものことだがそれ、刺さっているだろ?
 
 
 まあ何だ?
 
 
 妙な終わり方になってしまったが、これはこれでいいだろうね。
 突如現れた許婚、緑娘も戦士ギルドのマスターになれたし、俺もアリーナでグランド・チャンピオンになったのだ。
 そのおまけで変な奴が現れたりしたけど、そんなことは些細なことだ。
 

 シロディールは今日も平和です!

 

The Elder ScrollsIV:oblivion 第二章 ~完~

 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ