沈黙の会話 ~ギルドの過去~
カーリアの後を追って、雪帷の聖域という遺跡に向かうことになった。
辺りは雪が舞っている。
スカイリムの雪が俺を冷やす……
寒い……
雪が冷たいからか?
いや、それだけじゃない……
心も寒い……
今まではどこに行くにもいつも俺の傍には……
メルセル「やっと来たな」
メルセルの一言でハッと我に返る。
雪帷の聖域に到着したか。
メルセル「遺跡を偵察したが、カーリアは間違いなくまだ中にいる」
レイジィ「彼女を見たのか?」
メルセル「いや、でも彼女の馬を見つけた。もう始末したから心配するな、馬を使って逃げられることは無い」
レイジィ「さすが、用意周到ですね」
メルセル「さあ急ごう、中に入って捕まえるんだ。先に行ってくれ」
俺が先導かよ。
しかしマスターの言うことは絶対だ。
レイジィ「分かった……」
メルセル「慎重に進めよ、カーリアは剣のように鋭いからな。罠にかかってこちらの存在に気づかせるわけにはいかない」
俺はマスターと二人きりになれたことを利用して、ギルドの過去を聞きだしてみることにした。
先代ギルドマスターガルスは、25年前、ここでメルセルと落ち合うことになっていた。
だが、ガルスが出てくるや否や、1本の矢が彼の喉を貫いたと。
そして2本目の矢がメルセルの胸に刺さった。
カーリアは弓の達人で、不意打ちが彼女の最大の武器だったという。
幸いにもメルセルは急所を少し外していたようで、命を落とすことは無かったのだ。
メルセルが最後に見た光景は、ガルスの死体を遺跡の開いた穴に捨てる光景だった……
ガルスが死んだ後、ギルドはバラバラになってしまった。
そしてギルドマスターの地位をめぐって、派閥抗争が起きて、ラットウェイは血の海になったという。
メルセルは、カーリアを捕まえたかったが、他の者はガルスが死んだ事は気にかけてなかったんだと。
その内輪もめは数ヶ月続き、カーリアはそれを利用して身を隠したのだ。
カーリアは、数人の盗賊が1年で稼ぐ金を、一ヶ月もかからずに稼ぐほどの凄腕だったと。
それでガルスはカーリアを信用しすぎた。
そして彼らの間には関係もあったという。
ガルスは彼女の事を「かわいいナイチンゲール」と呼んでいて、完全に骨抜きだったという。
しかしそこまで可愛がられていて、なぜ殺すことになるんだ?
メルセルは、それは欲望か、嫉妬か、憎しみだと推測している。
だが、何が原因であんなひどい事ができたのかは、誰にも分からないだろうと……
メルセル「一つ確かなことは、彼女が死ぬ前に俺が突き止めてやるってことだな」
レイジィ「…………」
とまぁ聞いた話だ。
俺はなんとなくだが、メルセルの言葉の端に暗い影のようなものを感じていた。
それが何なんだかよく分からないが、直感的な何か不信感を……
本当にそうなのか? ……と。
だが、マスターを疑っていても始まらない。
とにかくカーリアを捕まえて真相を聞きださないとな。
雪帷の聖域の入り口は、封印されていて侵入できないようだ。
だがメルセルの腕にかかれば、どうって事はないらしい。
早速仕掛けを解きにかかる。
メルセル「これでいいはずだ。先に行ってくれ」
さて、いよいよ遺跡に侵入だ。
罠が多数仕掛けられているという。
慎重に、な。
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