フリンジ奪還 その2 ~ゼデフェン遺跡にて~
現在、グレイマーチに飲み込まれたフリンジを奪還すべく、オーダー軍と戦っている。
オーダーの騎士は、オベリスクが起動している限り、次々に現れて襲い掛かってくる。
この流れを断ち切るのは、オベリスクを停止させるしかない。
その方法は、そこにオーダーの心臓を捧げることのみである。
フリンジに現れたオベリスクは、どうやらゼデフェン遺跡の奥にあるらしいのだ。
ダーク・セデューサーの隊長グラケンドがオーダーの騎士を引き付けている間に、俺たちは遺跡に潜入し、起動しているオベリスクを探すこととなった。
この遺跡には、戦慄の島に来てすぐの時期に、入り口周辺だけ見て回ったことがある。
確かバリウォグが居て、グラマイトの住処だったはずだ。
そのグラマイトが、遺跡の中で始末されていたりする。
オーダー軍にとっては、人類だけでなくグラマイト族も敵だと言うのだろう。
ということは、グラマイトも含めて戦慄の島の住民?
いやだぞ、こいつらを統率するのは。
グラマイトはグラマイトで、勝手に文明を作っておれ。
そしてグラマイトを始末した張本人が、しっかりと襲い掛かってくる。
外に出してしまったら、あんまり強くないセデューサーたちに戦わせることになるので、遭遇するたびに殲滅させておく。
剣を持っていない、格闘家タイプのオーダーも居たんだね。
奥に進むたびに、どんどんオーダーの騎士は迎撃してくる。
これは、おそらく一番奥にあるであろうオベリスクを早く停止させないと、きりがないだろうね。
迫りくるオーダーの騎士を、飛び掛かっては噛みついて――は、犬のチロジャル。
蹴り刺しては踏みつけては緑娘。
俺は松明で照らして照明係。前衛の撃ち漏らしに、霊峰の指を放つだけの仕事です。
ここまで最前線で戦う公爵も初めてだろうね。
今後は、戦慄の島の公爵は陣頭に立つことを義務付けようかな?
そして、ついにオーダー軍の戦力源、オベリスクを発見した。
このオベリスクから、パスウォールの尖塔へと動力が流れているのだろう。
「よし、ここまでの戦いでオーダーの心臓は確保済み。心臓を捧げる間、敵を引き付けていてくれ」
「わかったわ」
「わんっ」
さてと――、誰かこっちに来ているな?
オーダーではないようだが。
「あ、あんた! 覚えているぞ!」
「ん? ああ、君は――」
「いやあ、あんたがゲートキーパーと戦うのを見たよ。狂気の門の番人が倒されると思った者などいなかったのに、あんたはそれを皆に見せつけてやったんだ! ハハハハハ!」
「そうですねぇ……(。-`ω´-)」
こいつが言う分には、文句を言わずに受け入れてやろう。
遺跡の奥、いよいよオベリスクと対面、といった時に現れたのは、パスウォールの村長シェルデンだった。
「それともう一つ、あんたがシル公爵を打倒したのを見たよ。公爵が代替わりすると思った者などいなかったのに、あんたはそれを皆に見せつけてやったんだ! ハハハハハ!」
「伝書鳩、乙。で、村長自ら敵の本拠地を突いているのですか?」
「違うんだ! ここなら安全だと思って逃げ込んだら、敵の懐だったなんて!」
「あー、間違えたのね。で、フェラスは?」
彼は、オーダーが襲ってきたときに、フェラスと共にこの遺跡に逃げ込んだというのだ。
敵に本拠地に逃げ込むとは、馬鹿なのか運が悪いのか……
フェラスと言えば、最初にパスウォールへ訪れた時、シェルデンと一緒にゲートキーパーを見に行ったダークエルフだ。
「あいつは俺を見殺しにして敵に付きやがったんだ! 恩知らずな奴だ!」
「なんとまぁ」
フェラスはセイドン派だったのかな?
寝返ったらしきフェラスに関しては後で考えるとして、今はシェルデンと共に行動して、オーダーのオベリスクを止めることに専念しよう。
「ところでマシューとルノーという親子が居たと思うが、彼らは無事なのか?」
「あの親子なら、あんたがゲートキーパーを退治した後しばらくして、二人で狂気の門の向こうへ行ったぞ」
「そうか、それならどこかで無事でいてくれたらよいと言うことで」
シェルデンを加えた俺たちは、オベリスクのある広間に一気に流れ込んだ。
すぐに光めがけてオーダーの心臓を投げ入れる。
一つ投げ入れるごとにオーダーが現れるが、三つ投げ込むとその動力を失うのは実証済みだ。
オーダーの心臓を投げ込むと、オベリスクは激しく輝く。
シェルデンや緑娘、チロジャルも右へ左へと走り回ってオーダーの騎士を撃破している。
その間に、俺はオベリスクに三つの心臓を投げ込んだのであった。
「止まったそ、そっちはどうだ?!」
「こっちもあらかた片づけたわ」
「わんっ、わんっ」
「よし、敵の本拠地は叩いた。後は地上に戻って、敵の残軍を掃討しよう」
その時だ。
突然天井が崩れだしたのであった。
「いかん、急いで遺跡を脱出するぞ!」
「ええい、こんなところで死んでたまるか! パスウォールの皆は俺を必要としているんだ!」
来た道を戻っていくが、その間にも壁は崩れ、天井は降ってくる。
場合によっては、ここから脱出した瞬間エンドロールを迎えられることもある。
しかし、崩れてきた岩で帰り道を塞がれたら、ゲームオーバーだ。
「崩れてきた岩で帰り道を塞がれたら、ゲームオーバーだ(。-`ω´-)」
困ったことに、本当に帰り道を塞がれてしまった。
俺たちが入ってきた通路は、既に土砂で埋まっていたのだ。
「慌てるな、反対側の壁が崩れて新しい道ができている」
「ぬ、そうか」
シェルデンの案内で、別の道を通って脱出を図る。
「慌てるな、天井が降ってくるから気を付けろよ」
「ぬ、そうか」
なんだかさっきと立場が逆な会話も発生するが、ひたすら逃げるだけ。
オベリスクを停止させるという任務は達成したのに、その結果生き埋めになったのでは――自己犠牲か。
「あいにくと、玉砕覚悟は趣味じゃない!」
行きに通ってきた道とは違い、帰りは別の道となる。
そこにはオーダーの騎士の残党が居て、最後の抵抗を仕掛けてくるのだ。
一匹たりとも逃したくないので、別の道を通らなければならなくなったことも怪我の功名か。
オーダーの騎士は、叩けるだけ叩いて数を減らしてやろうではないか。
その内、鉄格子が閉まったりしてシェルデンとはぐれてしまったりする。
「ぬ、しまった。シェルデン大丈夫か?!」
「こっちはまともな道を見つけたぜ! そっちはどうなんだいー?」
「無事なら大丈夫、外で落ち合おう」
オーダーの騎士の、最後の一人をチロジャルが始末する。
この遺跡では、緑娘が5、チロジャルが4、俺が1ぐらいオーダーの騎士を退治したかな。
はっはっは、頼もしい者たちだ。
こうして俺たちは、ゼデフェン遺跡の崩壊から辛くも生還した。
シェルデンも先回りして脱出していたようだ。
ここはパスウォールの村はずれのようだ。
さて、ダーク・セデューサーの隊長グラケンドの方はどうなっているか?
続く――
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