執着の分類法1 ~動物総覧1 バリウォグ~
「足がすごく痛むの。新しい靴が欲しいんだけど、あたしを助けられない? どう?」
「知らんわ、失せろ!」
「なっ、なんつった? なんつった?!」
「にーにーにーにーにーにーにーにー!」
「……?(。-`ω´-)」
なんだあのアルゴニアンは?
家から出てきたと思ったら、俺の元に駆けつけてきて靴が欲しいとかぬかしやがる。
知らんわと言ったら、妙な掛け声をあげながら町の中で輪を回るようにぐるぐると走り回り始めた。
輪を回るだかなんだか言っていたような気がするが、勝手に回ってろ。
シロディールではアルゴニアンは比較的優秀な亜人で、むしろカジートの方が困ったちゃんだった。
しかしこの世界のアルゴニアンは、いったい何なんだ?
まともに名前を名乗ってくれないし……
「すまんが、そこを掃きたいのだがね?」
「おっとすまんな」
潔癖症か何か知らんけど、ブラスカスは町の中でずっと掃除をしている。
頭も掃きすぎてピカピカになったのかな?
「旅の者、シェオシア百科事典動物総覧の手伝いをしてくれませんか?」
「ん、よいぞ」
ハイクロスの妙な住民に困惑していると、比較的まともなミリリが更なる依頼をしてきたりする。
動物総覧という物も仕上げたいらしく、まずはバリウォグからお願いしてきたのだ。
バリウォグと言えば、主に水辺に生息するモンスター。トカゲみたいな奴のことだ。
そいつを近くまで連れてきて欲しいというのだ。
「連れてくるったって、どうやって?」
「支配呪文、生物操作の魔術を売ってあげましょう」
「そんな魔術もあるのか」
一応シロディールでアークメイジをやっていたが、そんな魔術があるなんて知らなかった。
分類は幻術に属するようで、その魔術を使えばモンスターを自在に操れるのだという。
知らなかったよ~、そんな魔術があ~ると~は♪
「ただし――」
「ただし?」
「私がうっかり殺してしまったら、代わりを連れてきなさい」
「それ俺の責任ですか?」
「成功したら礼金を出しますよ」
「さいでっか……(。-`ω´-)」
なんか嫌な予感がするけど、連れてくるだけでいいなら連れてきてやろう。
バリウォグね、水辺に生息するのなら水辺に向かうか。
アルゴニアンの家のベランダから見たけど、ここからだと、北にちょっと向かえば水辺になっていたね。
………
……
…
というわけで、町から北西に向かうと桟橋があり、その近くにバリウォグがのたのたと這っていた。
「こいつに生物操作の魔術をかけてと――って、ちょっと待て!」
敵を見たら飛び上がって踏みつける。オーバーオールとセーターの、ひげのおじさんじゃないけど、すぐに緑娘が飛び掛かっていくのだ。
殺してしまったら失敗だというのに!
しかし緑娘が踏みつける前に、押し出してしまえばいいだけだ。
「ちょっと何よ!」
「殺したらダメだろうが」
「あっ……」
敵を見たらすぐに始末しろ、悪即斬も悪くないけど、状況は確認しろよ、と。
モンスター退治が目的ならそれでもいいけど、今回は連れ帰らなければならないからね。
この世界を支配するなら、住民の支持を得られなければならない。住民の一人であるミリリのために、バリウォグを連れて帰る必要がある。
緑娘もその理屈を思い出したのか、突き飛ばされたことに関してそれ以上文句を言ってくることは無かった。
バリウォグが襲い掛かってくるのをかわしながら、ミリリから購入した生物操作の魔術をかける。
すると、こいつは大人しくなるではないか。
「操作する、俺についてこい」
こうなれば、ペットみたいなものだ。
30秒しか魔術の効果は無いらしく、しばらくしたらまた襲い掛かってくる。
その度にかけなおして、町まで連れて行くのだった。
………
……
…
「ねぇ、リンゴとか持ってない? ニンジンは? 何かサクサク食べられるものおいしいものちょうだい!」
「今忙しいから後にしろ」
「いやいや。い~やいやいや。いやいやいやいやいやいやいや!」
「……?(。-`ω´-)」
なんだあのアルゴニアンは?
バリウォグを連れて戻ってきたと思ったら、俺の元に駆けつけてきて食い物が欲しいとかぬかしやがる。
構っている暇が無いから追い払ったら、妙な掛け声をあげながら町の中で輪を回るようにぐるぐると走り回り始めた。
輪を回るだかなんだか言っていたような気がするが、勝手に回ってろ。
とある事情で毒リンゴ持っているのだが、こいつを食ってみるか?
「バリウォグを捕まえたのね! 早速調査しましょう! はいっ、お駄賃の545Gよ!」
「忝い……」
謎の柵は、モンスターを閉じ込めるための檻だったわけか。
ミリリは俺の連れ帰ったバリウォグを、さっさと檻の中へと押し込んで、お礼の報酬をよこしてきた。
他のモンスターは今は十分らしく、こいつに飽きるまでは錬金素材の方を重ねて依頼してきた。
今後はいろいろと拾いながら旅を続けて、時々ここに戻ってきたらよいわけね。
こうして、ミリリの最初の依頼は完遂したのであった。
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