狂気の縁を抜けて2 ~レルミナの涙~
ゲートキーパー対策の武器、骨の矢が完成するまでにはまだまだ時間がかかる。
また、もう一つの武器であるレルミナの涙を入手できるのは深夜だと言う。
だから、時間つぶしにこのフリンジという地を見て回ることにした。
フリンジの南方には、もう一つの建造物があったりした。
名前は知らないが、ゼデッフェンの砦だという噂だ。
何のために造られた砦かは知らないが、意味は――考えなくていいだろう。
狂気の世界だ……(。-`ω´-)
砦の壁の内側には、バリウォグという生き物が居たりする。
例によって、緑娘に踏まれ刺されてしまうわけだが、なんか普通の骨も落ちているねー。
とりあえず、今回は外観をざっくりと見るだけにしておいた。
砦の内部へと入るための扉には鍵はかかっていなかったが、結構深い造りになっているようなので、また後で回ることにする。
今は、この世界の地理を知るために、いろいろと回ってみるだけだ。
内部の調査は、追々必要になるか、気が向いた時にやるのでよいだろう。
さて、パスウォールの村に戻り、ものぐさ財布亭の個室で夜まで時間をつぶすことにする。
骨の矢の完成を待つのと、レルミナが動き出すのを待つだけだ。
「俺はレルミナが動き出したら後をつけてみるので、君はその間ジェイレッドに会って矢を回収してくれ」
「わかったわ。でもひんま~、こんな宿屋の個室でやることやらない?」
「何を言いたいのか知らんが、まだ昼間だと言っておくぞ」
「夜になったらやるのかしら?」
「骨の矢が手に入り、レルミナの尾行が終わったらな」
物音から察するに、レルミナは隣の部屋で、出たり入ったりを繰り返しているだけだ。
何をやっているのだろうねー。
………
……
…
夜更け――
「おっ、動き出したな」
「何よ、レルミナとどっかにしけこんでしっぽりするんでしょ」
「黙れ緑娘。お前はジェイレッドの所に行ってこい」
「何よもう! ジェイレッドとどっかにしけこんでしっぽりしてもいいのかしら?」
「それが正しいと思うのなら、汝の欲することを為すがよかろう……(。-`ω´-)」
――とは言ってみた物の、こいつはこんな煽情的な格好をしている癖に、貞操観念だけはまともだから人間不思議である。
緑娘が言うには、自分は経験人数一人だそうで、その相手は俺らしいのだ。
不思議なことに俺は経験人数0人なのだ。少なくとも記憶の中では……(。-`ω´-)
馬鹿な事言い合ってないで、レルミナの尾行を本格的に開始。
こんな所で、黒歴史な出来事で培われた技能が役に立つのが腹が立つ。
どうせなら、ジ=スカール先輩直伝の透明化で乗り切るのが簡単だと思うけどね。
そして、レルミナはゲートキーパーの元へと向かって行った。
ゲートキーパーは、レルミナが近づくと傍に駆け寄ってくる。
ここでレルミナが襲われたら意味不明なのだが、奴はレルミナの傍で立ち止まると、そのまま大人しく立ち尽くしているではないか。
そしてなぜか、その場で泣き出すレルミナ。
確かルノーは、レルミナはゲートキーパーの前では涙もろくなるとか言っていた。
なんで奴の前でそうなるのかわからないけどね。
強引に理由付けするとしたら、レルミナは奴のことを「坊や」と呼んでいた。ひょっとしたら、自分の死に別れた息子の肉体を使って――考えるのはやめとこう。
見つからないように観察していると、レルミナは涙を拭いていたハンカチをその場に落としたのだ。
そのまま落としたことに気づかずに、再びパスウォールの村へと戻っていくのだった。
ゲートキーパーが広場から離れた隙に、こっそりと近づく。
これがレルミナの落としたハンカチだ。
これに浸み込んでいる涙を武器に塗れば、ゲートキーパーに対して有効な武器となるはずである。
ん、ゲートキーパーに見つからないように門まで行けば――と思ったけど、たぶん鍵が必要な扉が塞いでいるのだろうなと思ってやめておく。
その扉に必要な鍵は、奴の身体に埋め込まれているということなのだ。
一方その頃――
「ジェイレッドさぁん」
「なんだ? ラムリーザと一緒に居た娘か。危ないから近寄るな」
「何よ、あたしテフラ。骨の矢はできたの?」
「テフラか。お前も骨と話すのか?」
「骨なんかとは話さないわ、気持ち悪い。骨の矢が欲しいだけなのよ、できているのかしら?」
「矢ならできているぞ。ほら、おまえの分だ、あとは俺が持つ」
「ありがとう。じゃあね」
「待て、ゲートキーパー狩りに向かうなら、俺も行くぞ。討ち死にしようとも、やらんよりはマシだ」
ラムリーザSide――
さて、レルミナの涙を回収できたので、俺も一旦パスウォールの村に戻ることにする。
もしも骨の矢が完成していたら、緑娘が回収しているはずだ。
「あっ、ラムリーザ!」
「ん、骨の矢ができたのだな。――ってなんやその弓は?」
「矢はあたしが撃つのよ」
「ほーお、撃ったことあるのか?」
「無いけど当てるから」
「どこからそんな自信が出てくるんだよ」
とりあえずは、今夜の出撃は止めておくことにした。
矢を撃つと言っても、ほとんど素人の俺たちが、暗闇の中で撃ったからといって逆に命中率が下がるものだ。
凄腕スナイパーでもないのだから、明るい所で撃った方が良いに決まっている。
今夜は宿に泊まって、明日の朝、出直すことにする。
ジェイレッドにも今日は戦わないこと告げて、一旦自宅に戻ってもらうことにした。
「何をしているのかしら?」
「その弓に、レルミナの涙を塗るのさ」
「弓に塗ってどうするのよ、矢に塗らないと意味が無いでしょう?」
「あ……」
なんで毒を弓の方に塗るのかねぇ?
まあいいや、明日はゲートキーパーとの決戦だ。
今夜はぐっすりと寝て、明日に備えるとしよう。
「ねぇ、骨の矢が手に入り、レルミナの尾行が終わったらな――って言ってたよね?」
「……(。-`ω´-)」
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