ブルーマ防衛 後編 ~グレート・ゲート、大いなる門~
「よかった、間に合ったようですね」
「あれ? リリィさん、それに先輩?」
「後輩がシロディールのために戦おうとしているのに、先輩が暢気に金塊を磨いているわけにはいかないのだ」
マーティンに続いてプルーマのタロス教会から出たところ、そこでシシィさんとジ=スカール先輩が登場したのだ。
よかった、一人でも人手が欲しい場面だったんだ。
民衆に拍手で送り出されているマーティン。
皇帝陛下のご出陣だぞーっ! ってか?
いいね、陣頭に立つ皇帝。俺も俺の使命を果たしてやるさ。
それぞれの町から集まった衛兵は、ブルーマの外に待機していた。
調子に乗ったハゲの爺さんが、感極まって皇帝の列に加わって先導しているみたいな感じになっているが、無理しなくてもいいのだぞ。
「急げ! ゲートはあっちだ!」
マーティンの掛け声でみんな一斉に走り出す。
ゲートはブルーマの東側にある盆地に、その姿を現していた。
「爺さん、無理するんじゃないぞ」
「ふぅ、はぁ、わしはもうダメじゃ、ついてゆけぬ。クヴァッチの英雄よ、わしにかわって陛下をお守りくだされ」
「わかっとるわかっとる」
先ほどのハゲ爺さんは、みんなのダッシュについてゆけぬようで、道端に座り込んでいた。
だから無理しなくてもよいというのだ。
そしてシロディール各地から集まった兵士達は、ゲートの前に集結したのであった。
「シロディールの兵士達よ! 帝国の存亡は今日この時、我々の肩に掛かっている!」
兵士達を鼓舞するマーティン。
マーティンは、一人一人を見やりながら、声高らかに宣言する。
「デイドラどもがクヴァッチへしたことを、ブルーマにもさせるのか? やつらに家々を焼かせるのか? 同胞が殺されるのを見過ごすのか?」
「クヴァッチの英雄がグレート・ゲートを破壊するまで、ここを死守する! ゲートから何が来ようとも、倒さなければならない! シロディールの兵士達よ! 我と戦うか?!」
「アンヴィルのために!」
「スキングラードのために!」
「クヴァッチのために!」
「コロールのために!」
「シェイディンハルのために!」
「ブラヴィルのために!」
「レヤウィンのために!」
「全員、突撃せよ!」
マーティンの号令とともに、ゲートから飛び出してきたデイドラ軍に突っ込んでいく兵士達。
戦いは始まった!!
「ラムリーザは突撃しないのか?」
「俺には特別任務がある。まだ動く時ではない」
「ラムリーザは怖がっている。ジ=スカールにはわかる」
「透明化したまま俺の傍から動こうとしない先輩に言われたくないですなぁ」
俺は、脇をリリィさんと先輩に守らせて、戦況をじっと見据える。
まだ、俺の動く時では、ない。
間もなく二つ目のゲートが開いた。
敵の攻撃も最初の二倍となり、少しずつマーティンの軍勢が押し返されているのがわかる。
そこで俺は、マジッククリエイターリリィを戦局に投入した。
しかし、毅然とした態度で俺は待つのだ……
「ラムリーザ、押されているぞ。ジ=スカールにもわかる」
「それなら先輩も、リリィさんに続いて突入してくださいよ」
「ジ=スカールは、ラムリーザを最後まで守ってやるのだ」
「透明化したまま言われても、全然説得力ありませんよ」
そして三つ目のゲートが開いた。
三つのゲートから絶え間なく出現するデイドラに、マーティン軍は防戦するのに精一杯だ。
「おっ、おい、ラムリーザ!」
「毅然!」
うろたえる先輩を、一言で押し返す。
マーティンなら持ちこたえるはず。それにここに集まったのは、シロディールから集まった、選ばれし者たちなのだ。
なに、通常の三倍のデイドラ軍など……
「ちょっとやばいわよっ! 敵の数が多すぎるわ!」
「お、落ち着け……」
緑娘もあまりにも激しい敵の波状攻撃に、俺の所まで戻ってきた。
流石にやばいかも……(。-`ω´-)
しかしその時、俺の待ち望んでいたものが姿を現した!
出た!
グレートゲートだ!
良くぞこらえたシロディルの兵士達よ!
もうすぐ勝利がもたらされるであろう!
俺は乱戦状態の戦場を一気に駆け抜けた。
俺の任務はただ一つ、マーティンたちがデイドラ軍を抑えている間に、グレート・ゲートに飛び込んでグレート・シジルストーンを奪取することだ。
クヴァツチなどで経験している分、ここはマーティン自ら飛び込むより、俺に任せたほうが確実だという作戦なのだ。
しかしグレートゲートが出現したということは、デイドラの攻城兵器が飛び出してくるのも時間の問題。
持って10分程度ってところか?
本気ででかいグレート・ゲート。
ここから巨大な攻城兵器が飛び出してくるのだろうな。
というわけで、突入だ!
そこは、これまでに何度でも見てきたオブリビオンの世界。
ただ一つ違うのは、正面に見える巨大な兵器。
たしかにあんなのが突撃してきたら、ブルーマの外壁は一発で破壊されてしまうだろう。
あの兵器が門を潜って出てくる前に、俺はシジルストーンを奪わなければならないのだ。
デイドラ軍も必死だ。
攻城兵器は火球を飛ばして攻撃してくるし、ドレモラもしつこく追いかけてくる。
しつこく追いかけてくる。
ここ大事なポイントだから二回述べたぞ。
俺は、道中待ち構えているドレモラは、全て無視して一気に駆け抜けた。
例えばこの作戦を実行するのにバード隊長とか選んでいたら、ドレモラを殲滅させてシジルストーンを奪取するまで30分ぐらいかかることになるだろう。
しかし俺は違う。
必死なデイドラ軍を、するりするりとかわして先へ進むのだ。
その結果、大量のデイドラ軍を背後に構えることになるが、そんなことは全然関係ない。
シジルストーンさえ取ってしまえば、俺は元の世界に戻り、こいつらは閉じ込められるだけなのだ。
戦う必要は、全く無いのだ。
――――――
その頃、グレート・ゲートから飛び出してきた攻城兵器が、エネルギーを充填して最初の砲火を浴びせかけようとしていた。
――――――
ダイビング・キャッチ!
最頂部には、これまでに見てきたシジルストーンの数倍は大きなものが。
グレート・シジルストーン、頂きだぜっ!
気が付くと、俺はいつものように元の世界へ戻ってきていた。
門から出現したその巨大な砲塔は、グレート・ゲートからのエネルギー供給を絶たれて動きを止めていた。
周囲からは万歳の声が挙がっている。
やった、我々の勝利だ!
緑娘も無事戦い抜いたかな?
「あれ? またこいつ?」
「戦闘中にいきなり襲いかかってきたから、返り討ちにしておいたわ」
「ブラックウッド商会もしつこいねぇ」
「乱戦の中ならあたしを討てると思ったのでしょうが、残念だったわね」
またよくわからないブラックウッド商会の残党みたいなのにも襲われていたが、無事に戦い抜いたようで安心した。
さて、グレート・シジルストーンをマーティンに届けよう。
「友よ! やってくれな!」
「何を言いますか、取ってくると約束したはずですが?」
「これで儀式に必要な物は揃った。神殿の大広間で、最後の準備に取りかかることができるよ。それはともかく――」
そこまで言うと、マーティンは周囲で沸き立つ兵士達の方へと向き直った。
「我々は今日、ここで偉大な偉大な勝利を収めた! マイカー・キャモランの手から王者のアミュレットを取り戻す手段を手にしたぞ! それもこれも、皆の働きのおかげだ。シロディール万歳! クヴァッチの英雄万歳!」
マーティンは、俺から受け取ったグレート・シジルストーンを掲げてみせる。
この時、兵士達の熱狂は頂点に達したのだ。
「シロディール万歳!」
「皇帝陛下万歳!」
「クヴァッチの英雄万歳!」
「ジーク・カイザー・マーティン・セプティム!」
皆の様々な叫び声が、雪に覆われた大地にこだまする。
やがて歓喜の声は、一つのものに集約されていった。
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
「ジーク・マーティン!」
すごい連呼だな。
まるで全世界に向けて発信しているような叫びっぷりだ。
この日、シロディールは一つとなった。そして――
シロディールに新たな皇帝が、誕生した――
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