ブルーマの門 後編 ~オブリビオン攻略の手引き~
ブルーマ近郊に、オブリビオン・ゲートが開いた。
グレート・ゲートではない囮なのだが、ジョフリーの作戦では、この機会に衛兵達にゲートの閉じ方を教えておこうというものだった。
そこで、何度もゲートを閉じてきた俺が、ブルーマの衛兵隊長バード達に、ゲートの閉じ方を教えるために現地へと向かったのである。
「バード隊長、あれが何だかわかりますか?」
「通天閣?」
「なんやそれ。あれがオブリビオンの塔です。まずは一目散に塔へと向かってください。ただし、気をつけることがありますが、それは何だかわかりますか?」
「二つ塔があって、悪い魔法使いが住んでいるとか?」
「おしい。複数の塔がある時は、頂上部が輝いているものが本物である。それ以外の塔は、囮だということだ」
「なるほど!」
「それでは、塔の最上部まで一気に駆け抜ける。途中の敵は、全て無視して結構!」
「承知した!」
「それでは突撃!」
――は?
何故戦っているのだ……
そんな雑魚共は相手にする必要は無いと言うのに……
「隊長、作戦を復唱してください」
「塔の最上部まで一気に駆け抜ける。途中の敵は、全て無視して結構!」
「なんで相手してんねん!」
「すっ、すまない! しかし敵を前にすると、戦わずに逃げるなんてできないと考えてしまうんだっ!」
「隊長、この戦いの目的は何ですか? ――って話がループしている。とりあえずここに待機!」
「承知した!」
結局俺は、一人で先へ向かうことにした。
その目的は――
先に道中の敵を一掃しておくこと。
こいつらが居たら、バード隊長達はいちいち相手にしていて進まないのだ。
先に露払いをしておいてから、隊長の所へ戻って先へ進むように促す。
「そんなわけで、塔の入り口まで辿りついたわけだが、思うところがある」
「何でしょうか、クヴァッチの英雄殿」
「俺が一人で敵を片付けるのも、隊長達が戦って敵を片付けるのも、結局は同じことだと気がついた」
「なるほど!」
「作戦変更、ゲート内の敵を掃討する……」
「承知した!」
もうめんどくさいので、隊長達には好きなだけ戦わせることにした。
別に俺が苦労するわけではない。戦いたいなら、勝手に戦うがよい。
俺が閉じるときは、道中の敵は無視してシジルストーンだけを取るだけだ。隊長達がやるときは、殲滅しながら進むがよかろう。
はいがんばってねー
戦う必要が無い相手だけど、がんばって退治してねー
俺は戦いに参加しないよ、意味が無いからねー
俺抜きで勝てないのなら、衛兵達だけでゲートを閉じるのは不可能だからねー
そんなわけで、俺は後方指揮官として、戦いを監督するのであった。
「突然ですが、オブリビオンの塔講座を始めます」
「何でしょうか?」
「外から見て、本物の塔か囮の塔かわからなければ、塔に入って一階を見てください。ここに何がありますか?」
「溶岩の柱ですか?」
「そう、なんらかのエネルギーの柱のようなものがあれば正解。囮の塔には、この柱が無いのだ。ただし、囮の塔を攻略して橋をかけなければいけない場合もあるが、たいていは本物の塔へ直接入れば何とかなる」
「勉強になりました!」
「それでは先へ進む」
こんな感じに、このオブリビオンの世界についていろいろ勉強させながら、塔を登って行くのであった。
途中に出てくるデイドラやドレモラを、全て掃討しながらね。
ん、全て掃討とは、頭痛が痛い表現になるのかな? まあいいや。
普段なら、ゲート攻略では相手にしないドレモラであるが、今回は退治しながら進む。
見ているだけだと時間がかかるということも分かったので、自分が相手にできるときはしておこうと考えたのだ。
ただし乱戦になると、誤爆を避けて傍観するけどね。
そんなこんなで、塔の最上階、シジル・ストーンの間に到着。
「あのエネルギーの柱の先を見てください。何がありますか?」
「なんだろう、黒い玉かな?」
「そう、それがシジル・ストーン。オブリビオン・ゲートの攻略は、あのシジル・ストーンを奪うことが目的となるのです。あれを取ってしまったら勝ちなのだ」
「これまでの敵を無視して、さっさとそのシジル・ストーンを取ってしまったらどうなるのだろうか……」
「それで、勝ちとなるので、ある」
「なんと! それでは戦いなど避けて、さっさと取りに来たらよかったのではないか?!」
「だから最初からそう言ってたやん……(。-`ω´-)」
この隊長は天然なのか?
それとも平時は冷静でいろいろと頭が働くが、敵を目の前にすると作戦とか全て吹っ飛んで、ただ戦うだけとなってしまうのだろうか?
どっちみち、厄介な人だ。
まぁここでゲートの閉じ方を教えたら、今後共闘することは無いだろうけどね。
ゆっくりと説明する為に、最上階に居る敵も退治しておく。
さっきシジル・ストーンを取れば勝ちと理解した隊長も、やっぱりドレモラと戦っている。
ダメだこりゃ……
「というわけで、これを取ったら任務終了です」
「触って大丈夫なのか?」
「じゃあ取ってみてください」
「う、うむ……」
バード隊長がシジル・ストーンを手に取ると、周囲は赤く燃え上がりだした。
ああ、いつもは手に取るとすぐに表に出てしまっていたけど、ゆっくり見るとこんな感じになっていたのね。
………
……
…
「お供ができて光栄だった! 方法は分かったから、ブルーマ近郊に新たなゲートが出現しても、我々だけで対処できると思う」
「ん、無駄な戦いは避けて、シジル・ストーンだけを狙うように」
「承知した!」
ま、無理だろうな……
こうして、ブルーマ近郊に出現したオブリビオン・ゲート――恐らく囮――は、無事に閉じられたのであった。
あとはバード隊長と、その部下に任せても大丈夫だろう。
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