ウォーロック・ラック ~アンデッドの領域~
魔術師大学、リリィ研究所オゥム・クォート・オゥムにて――
テーブルには、たくさんの金塊があったりする。
「アークメイジよ、あなたが投資の手伝いをしてくれたおかげで、多くの金塊を得ることができました」
「こんなに金塊集めてどうするのですか?」
「炎魔獣でも復活させてみよう――というのは冗談です。現在帝国は混乱の時期に陥っています。お金よりも、物資を集めておくのがよいでしょう」
「なるほどね。通貨は国家が変われば屑になるかもしれないが、金塊や宝石は価値が残りますからね。それはそうと、先輩――」
「どうしたラムリーザ?」
「むっちゃ嬉しそうに袋を抱えていますが、その中は?」
「ふっふっふっ、金塊どっさり。投資した分定期的に送られてくるから万歳だ」
「食べ過ぎたら鼻血が出るぞ、と」
ま、金塊は25Gだけどね。
通貨以外にも、貯められる物は貯めておくに越したことは無いか。
「また余剰資金ができたら、投資をお願いしますね」
「次は先輩が行ってくださいね」
「それはそうと、アークメイジよ。ウォーロック・ラックをご存知でしょうか?」
「ウォーロックと言えば、ラドラムのことですか?」
「いえ、茶髪ロンゲ渋谷系ではなく、七人のエメロ=エルです」
リリィの新しい情報は、アンデッドの魔術師達の話であった。アイレイド時代からのもので、現在の死霊術師とはまた別のものらしい。
なにやら七人のアンデッド魔術師が、我々の世界を脅かしているというのだ。
リリィの掴んだ情報では、七人の魔術師、要塞、封印は二つ、とのことだった。
デイドラの侵攻とタイミングを合わせて、どさくさにまぎれてアンデッド王国を作ろうとでも言うのだろうか?
「私の調査したところでは、どうやらブラヴィル城の地下に、秘密のポータルが開いたらしいのです」
「また微妙なところから侵攻してきますね」
「すぐにブラヴィル城へ行って、調べてきてもらえないでしょうか?」
「――だそうですよ、ジ=スカール先輩」
「ジ=スカールは、金塊の質を調べるので忙しい」
「困ったものだ」
そんなわけで、ブラヴィル城へ直行。
思えばあまり縁のない城だね。自宅購入の時ぐらいしか、立ち寄ったことがないと思う。
城に入って、衛兵に「最近城の地下で怪しいものを見なかったか?」と尋ねたところ、「おお、アークメイジが来てくれましたか!」などと返してくるのだ。
やっぱりアークメイジは、使い走りだね!
「地下牢の奥に、不可解なルーン文字が現れて、対処に困っていたのです。魔導系だと思い、魔術師ギルドに調査を依頼していたのですが、まさかアークメイジ自身が来ていただけるとは!」
「他の奴らが出不精なだけだよ。あと、他の奴が出たら負ける可能性が高いのよ。ムシアナスとかフィスラゲイルとかね」
「ではこちらに来てください」
衛兵は、そのまま地下牢の奥へと俺を案内する。
地下牢からは「俺は無罪だー」とか、「出してクレー」とかベタな騒ぎ声が聞こえる。
精々数日だろ、我慢しろ。俺なんか、グレイフォックスとして数週間閉じ込められていたのだからな!
「これです。いったい何なのでしょうか?」
「悪魔召喚の儀式に使う魔方陣のような……」
「先日など、突然城にゾンビが現れたりして大騒ぎだったのですよ!」
「う~む……」
エロイムエッサイム……ってか?
一方通行でなければ、こちらからも乗り込めるはずだ。
そこで俺は、魔方陣の中央へと手を伸ばした――
………
……
…
「はっ? ここは?」
そこは、土砂降りの墓場であった。
遠くからは、頭なしゾンビが駆け寄ってきてたりするのだ。
どうやらここが、七人の魔術師、エメロ=エルによって支配されている、アイレイドのアンデッド領域のようだ。
ゾンビを軽く始末して、周囲を伺う。
ずっと夜なのか、ずっと雨なのか、陰気な場所であった。
よく見ると、遠くにかがり火が見えていた。
暗闇の中を闇雲に走り回っても仕方が無いので、まずはあの火を目指して進むことにした。
「――ってか、なぜ君まで?」
「魔方陣の上であなたの姿がぼやけだしたので、慌てて手を伸ばしたら巻き込まれたみたい」
「向こうに残って、俺を連れ戻す任務をこなしてくれても良かったのに」
「だーめ。あなたの行くところへは、どこへでもついていくわ」
「まーええけどね」
さて、遠くに見えた火に近づいていったところ――
そこは骨軍団が屯する地獄であった。
初めて見る影のような奴まで出てきた。シャドウか? かげのきしか?
後者なら、本体は地面の影――って地面真っ暗やーっ!
めんどくさいので、範囲魔法でまとめて始末する。
死霊術師は本体がいて召喚してくるが、ここではアンデッドそのものがうろついているらしい。
本体がおそらくエメロ=エルの魔術師なのだろう。どこに居るのだ?
遠くに見えていた火は、かがり火というよりは焚き火のようなもの。
その近くでひときわ明るく輝いているもの。
足元にあるこれ、ゾンビなんだぜ? 燃えながら襲い掛かってきて、やっかいなことこの上ない。フィア・アーマンか?
焚き火からさらに奥へと道が続いていた。
辺りが非常に暗いので、素直に道なりに進んでいくのが良いのかもしれない。
そして遠くに壁のようなものが見えたと思ったら、大量の骨がまたしても襲い掛かってきたのだ。
えい、ワイルド・ファイアだ。全部燃えてしまえばよいのだよ。
雨が激しいので炎の威力が下がってしまうのか、骨軍団を退治するのに数発打ち込む必要が出てきたりする。
その次の瞬間――
突然何者かに撃ち抜かれてしまった……
リッチのようだが、リッチとはすこし違う、エルドリッチ――、こいつがエメロ=エルか?!
その後は、壮絶な魔法合戦。
緑娘には残った骨の掃討作戦を任せて、敵の親玉と一騎打ちを展開する。
魔法を放てば放つほど、周囲にエネルギーのようなものが広がっていくのだ。ここは剣で戦った方がよいのか?
とまぁ、そんなこんなでボス格のリッチを退治した。
やはりこいつがエメロ=エルの首領であり、エルドリッチの灰という珍しいものを持っていたりした。
錬金術はやらんが、何かの研究に使えるだろう。とりあえず持ち帰って、後はリリィさんに任せよう。
エメロ=エルは七人居るという話だから、これがあと六人出てくるということだろうね。
そしてこの近くには、こんなものがあったりする。
まるで髑髏を模ったような岩、そして口の部分には奥に魔方陣のようなものがあるが、爪の門とやらで閉じられているのだ。
これがリリィさんの言っていた要塞ならば、封印は二つあるということだ。
どこかにこの封印を解く鍵があるのだろう。
続く――
前の話へ/目次に戻る/次の話へ