カザ=ダンにて ~妖刀サマラーム~
翌日、早朝からお出かけとなった。
ブルーマから東に連なるジェラール山脈。
との途中に、カザ=ダンの遺跡が隠されていた。
今日はその遺跡へ赴いて、リリィさんからの情報で知った「妖刀サマラーム」とやらを見つけ出す、が目標だ。
ブルーマ北にある竜牙の岩から東へ向かうと、こんなだだっ広い氷原に出たりする。
エヴァーウィンター渓谷というらしいが、とくに何かがあるわけではない。
ただ観光名所にはなっている。何を見るのかわからないけどね。
そして、目的であるカザ=ダンの遺跡だ。
正確な位置的には、アイレイドの遺跡であるセドールから真北へ向かった所にある。雪山の上だけどね。
この遺跡、入り口の門に当たる部分に、オブリビオン・ゲートを表す記号が彫られていたりする。
現在起きている動乱と、何かの意味か繋がりがあるのだろうか……
中へ入ってみたところ、デイドラが待ち構えているのかな、などと思っていたけど迎えてくれたのはゴブリン。
どうやら、雪山にあるゴブリンの巣だったようで。
それとも、オブリビオン関連の遺跡に住み着いただけかな?
今更ゴブリンなど恐れないが、戦いの経験の無い民衆にとっては未だに脅威だったりする。
どこぞの開拓民は、ゴブリンの抗争に巻き込まれて追い出されてしまったという話もあった。
これは壁に投げつけたら引っ付いて、ねばーっと落ちてくるやつな。所謂スライムってやつだ。
毒を食らってしまったら、こいつの上に少し立っていたら治るといった効果もあったりする。
ただし赤いスライムは、猛毒を持っているから要注意しなければならない。
遺跡と言うより洞窟内は、ほとんどゴブリンの巣同様であった。
ゴブリンをちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返して辿りついた奥には、アイレイドの遺跡の入り口があった。
あれだな、東部連峰にあった失われた寺院と同じような感じだね。
青白い光の遺跡、ウェルキンドストーンの輝きでこんな色になっている。
そして久々にオーガが出現した。
オークは友好的だが、オーガはただの野蛮人。間違えないようにしないと、大変なことになってしまう。
ここの通路は、ボタンを押すことでシャッターが開く仕組みになっていた。しかし、すぐに閉じてしまうので、急いで潜り抜けなければならない。
シャッターは複数あり、その度にボタンを押して潜らなければならないので、少々めんどくさい。
しかしオーガは馬鹿なので、スイッチを押すという行動を考えられない。だからシャッターの向こうでじたばたしているオーガを尻目に先へ進むことができるのだ。
そして、ついに遺跡最深部へと辿りついた。
そこは、広めの空間が広がっていた。
天井から鎖で松明が吊るされているが、広さに対してそれほど役に立っているとは思えない。
そして奥には、燃え盛る炎に包まれた、何か巨大なモノが――
悪魔――かな?
ゴブリンが犠牲になっているけど、おそらく何も知らずに奥までもぐりこんで、こいつにやられたというのだろう。
そして悪魔のような奴が持っているのが、燃え盛る魔剣であった。
ひょっとしてそれが、妖刀サマラームかな?
悪魔に恨みは無いが、魔剣を頂く為に戦いを挑むことにした。
どうせほっといても、その巨大さゆえにこの遺跡から出てくることはできないだろう。
だから、ディザームでも仕掛けて魔剣だけ奪ってしまえはそれで済むけど、相手が巨大すぎる為にそう簡単にはいかないだろう。
相手が巨大な悪魔でも、勇猛果敢に突っかかっていく緑娘。
ん、前衛は任せた。隙を作ってくれたら、そこに魔法を叩き込む。
巨大な魔剣の一撃を、床に転がって回避する緑娘。
恐らくこの悪魔、大きな敵に対しては立ち回れるが、人間など小さな相手の攻撃には想定されていないのだろう。
その動きは大きく破壊力はありそうだが、全く小回りが利いていない。
悪魔は魔剣をぶんぶん振り回しているが、当たらなければどうってことはない。
悪魔の攻撃をかわして、緑娘は跳躍する。
ん、なんか俺、見ているだけだなw
エネルギーを溜めるのに時間がかかるのだ。とりあえず言い訳。
緑娘の蹴りが、悪魔の口の中に炸裂した。
食われているように見えるが、そうではないようだ。
暴獣口蓋捻りという技らしいが、詳しいことは知らん。いや、ちょっと違うな。
それと同時に、霊峰の指改をぶちこんでやった。所謂コンビネーションというやつだ。
見たらわかるが、悪魔は完全に緑娘の方へ意識をやっていて、こちらに対してはノーガードになっている。
そうすることで、難なく急所へ一撃を打ち込めるのだ。悪魔の急所がどこだか知らないけどね。
悪魔は大きくのけぞり、断末魔の叫びを上げる。
その勢いで、緑娘も弾き飛ばされたかに見える。
アクロバティックな戦士ですね。
緑娘は俺と違ってパワーが無い分、身軽な動きで相手を翻弄したり、鋭い針を突き刺したりして欠点を補っている。
「よし、悪魔を退治したぞ。陽動作戦ご苦労」
「この悪魔の名前は何なのかしら?」
「ん~、バルログとでも名付けておくか」
「ひょーっ」
「――?」
こうして、悪魔バルログとの戦いは終わったのである。
さて、戦利品の魔剣でも頂くか。
巨大な悪魔が使ってたというのもあり、普通のサイズの剣と比べて少し大きかったりする。
この魔剣は、地面に落ちても燃え続けているのだ。松明代わりにもなりそうだね。
「どうだ、妖刀サマラーム。かっこいいだろう」
「あなたと同じぐらいの長さをした剣なのね」
「鍔の部分より先は魔力が主な割合をしめているのか、それほど重くは無いぞ。君の使っていた大鎌と同じような物だね」
「でもそれ、どうやって運ぶのかしら?」
「むろん背中に背負って――」
「…………(。-`ω´-)」
「熱くないの?」
「ちょっとこれは、持ち運びに難がある武器のようだ……」
扱いに困る魔剣だが、折角手に入れたものを捨てるのはもったいないので、大学に持ち帰って飾っておくことにするか。
リリィさんが使いたいといえば、譲ってあげてもいいけどね。
以上、カザ=ダンの遺跡での探検はおしまい。
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