アークメイジの帰還
シロディールの皇帝は死んだ。俺に王者のアミュレットという物を託して……
そう、皇帝ユリエル・セプティムは死んだんだ。
いくら呼んでも帰っては来ないんだ。
もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ。
そのアミュレットは帝国の統治者の聖なる紋章で、ジョフリーという者に届けなければならない。
バウルスの話では、その者は騎士団ブレイズのグランドマスターだと言うのだ。
彼なら皇帝が秘密にしていた隠し子の存在を知っている。皇帝の血を引く者の末裔だ。
そしてジョフリーなら、コロルの郊外にあるウェイノン修道院で、僧侶として静かに暮らしているのだ。
こうして、チャーリー・ラムリーザの極秘任務の旅が始まった――
誰や、チャーリーって!
とりあえずは、この地下通路から外に出ないとね。
バウルスが言うには、この先が下水道に通じていて、そこから外に出られるというのだ。
そしてそのバウルスは、陛下の亡骸を守り、後から俺を追うものが居ないことを見届けると言うのだ。
所謂一つの、ここは任せて先に行け、というやつだ。死ぬ気かな?
皇帝の極秘任務を遂行するために、バウルスから譲り受けた「下水道の鍵」を使って先へと進む。
これは以前、究極の強奪で通った下水道とそっくりだね。――ってここは下水道だったか。
あの時は、旧道という場所を目指していて、下水道は途中から石造りのアイレイドの遺跡風な場所へと繋がっていた。
ひょっとして先ほど通っていた道は、旧道の一部だったのだろうか?
ネズミ発見、噛まれたら鼠咬症にかかるかもしれないから油断はできない。
特にこんな下水道に住み着いている物はより危険だと思う。
しかし、破壊音を聞きつけて、ゴブリンまで現れたのだ。そういえばバウルスが、この先にはネズミやゴブリンが住み着いていると言っていたっけ。
なんか盾で防がれたり、二匹目は脇をかすっただけに見えるが、前者は盾も貫通させているので問題ない。後者はもう一発落ち着いて撃ち込めば問題ない。
何故拾った刀を使わないのかだって?
なんかブレイズ名誉の殿堂に納めるとかなんとか言って、没収されてしまったのだ。
まあいいけどね、アークメイジは魔術師らしく、魔法で戦えと言うものだ。
死屍累々……w
結構長い間牢獄でくすぶっていたので、久々に戦闘となるとこの辺りの敵が丁度良いのかもしれない。
ほんと、もしも皇帝一行が来なかったら、俺は何年グレイ・フォックスとして刑期を過ごせばよかったのだろうか……
さて、下水道だがそれほど入り組んでいるわけでもなく、少し階段を上ったりしているうちに、すぐに出口らしき場所へと辿りついた。
フフフ、久しぶりのシャバだ。目指すは地球だ……
――って、地球って何だ?
この世界はニルンではなかったかね?
戻ってきました、シロディールの大地。
正面に見える遺跡は、確か以前行ったことがあり、隠された奥の部屋には死霊術師が住み着いていたっけな。
とりあえずは、魔術師大学に戻ろうか。
前はグレイ・カウルをつけたまま入ったので、その場で逮捕されてしまったのだ。
その頭巾はもう無くなった今、俺はアークメイジとして受け入れられるはずである。
もしも「お前はグレイ・フォックスの正体!」などと言われたら、亡命も考えるか……(。-`ω´-)
牢獄でどれだけの期間を過ごしたのかわからんが、シロディールの世情はどれだけ変わったのだろうか。
白銀の塔はあいかわらず立派にそびえたっているが――、そういえば皇帝が暗殺されたのだったな。
俺には極秘任務があり、王者のアミュレットを一刻も早くコロルの郊外にあるウェイノン修道院に住むジョフリーという者に届けなければならない。
しかし、ちょっと大学で一息つく猶予ぐらいはあるはずだ。
インペリアルシティの外壁に沿って南西へ目指す。
大学のみんなは心配しているのだろうか? そして緑娘も……
まぁ大学の連中は、それぞれ勝手に研究しているみたいだから、俺が居なくても上手く回っているはずだけどね。
それに、人の管理をしているのはラミナスさんだ。ラミナスさんなら、皇帝が暗殺されたことをどう受け取るだろうかね?
緑娘なら皇帝が暗殺されたことを知ったら――やばい! 変な野望を抱くこと間違いなし!
彼女は俺に皇帝になれとか言っていたもんなぁ……
そういえばインペリアルシティの外周はそれほどじっくりて見て回ることは無かった。
こんな和む場所もあったなんてね。
水辺に生えている木、他の木と違って青緑っぽいところが美しいではないか。
さあ見えてきたぞ、俺の愛しの魔術師大学ちゃん――って気持ち悪いわ!
道は橋の下に続いているが、その道なりに進むと遠回りになるので、ここも外壁沿いに進むことにする。
ちょっとした絶壁みたいになっているが、あまり気にならない。
そして、アークメイジの帰還!
元々この話はアークメイジの復讐というタイトルだったが、高潔なアークメイジに復讐という言葉はそぐわないと考え、アークメイジの帰還に変更したのだ。
割と嘘だけどね。誰に復讐するのだ? グレイ・フォックスか?
念のために、入り口傍で大学を守っている衛兵に話しかけてみる。
もしも話が変な方向に進むようなら、ここならすぐに逃げ出すことができるのだ。
「衛兵さんこんにちは!」
「おお、アークメイジ。久しぶりですな!」
「グレイ・フォックスはどうなったっけ?」
「数週間前かな? 突然大学に現れたので、衛兵をかき集めて捕まえてやった」
「それはごくろうさま……(。-`ω´-)」
どうやらグレイ・カウルの無くなった今、俺はグレイ・フォックスではなくなったようだ。
これで一安心、少しアークメイジの私室で休憩してからコロルへ向かうか。
あの部屋は閉塞感が酷いけど、港湾地区にはしばらく近寄りたくないからね。
前の話へ/目次に戻る/次の話へ