究極の強奪 その三 ~時代の間~
計画書その四
帝都に入るための最後の扉を開くためには、解放の矢を使わなければならない。
(大盗賊の計画より)
グレイ・フォックスから依頼された、最後の大仕事を行っている。
この仕事が成功すれば、我々の名は伝説となるだろうということらしいのだ。
ん、前回と出だしは同じだな。
旧道を抜けて時代の間に入ったが、そこはアイレイドの遺跡と同じ造りになっていた。
そういえば聞いたことがある。
帝都は元々アイレイドが住んでいた場所で、表の建物はアイレイドが造った物をそのまま使っていると……
だから、地下にアイレイドの遺跡が残っていても不思議ではない。帝都自体がアイレイドの遺跡のようなものなのだ。
通路をそのまま進むと、大広間のような場所に出てきた。
奥は暗くてよく分からないが、三つの像が並んでいる感じなのかな?
その像を近くから見てみたところ、真ん中の像はいかにもな石像だけど、両側の像は妙に生々しい。
ガーゴイルと言って、石像の外見で相手を油断させ、近づいてきたところで突然襲い掛かってくるモンスターがいる。
なんだかその類のような気がしてならないのだが、特に近づいても動く気配は無い。
考えすぎだろうか……
そして俺は、その石像の違和感に気がついた。
真ん中の石像だけ、大広間に背を向けた形になっているのだ。
この向きに何か意味があるのだろうか……
大広間で石像の反対側には、鉄格子で阻まれた狭い空間が存在していた。
部屋の真ん中は、感圧板になっている。あれを踏んだときに、何かが起きるのだろうか?
鉄格子はピッキングなどでは開けないので、どこかにあるだろう開けるためのスイッチの様な物を探して別の部屋に向かっていった。
そこもこれまでに何度も見てきたアイレイドの遺跡と同じ様子。
最近はもうウェルキンドストーンは集めてないなぁ……
千個集めたら願いが叶うとか言う話もあったけど、今ではちょっと諦め気味である。
「のうみそをくれ~」
「何ぞ?」
突然何者かが話しかけてきたと思ったらゾンビだったので、霊峰の指で一閃しておく。
死人が脳みそを求めるのは、死の痛みを和らげるためだというが、そんなの眉唾だ。
脳みそが欲しいなら、羊でも猿でも良いはず。人間の脳みそに限定しているところがよくない。
ちなみに蟹みそは脳みそではなくて内臓だからな。間違えたら大変なことになるから気をつけよう。
そんなどうでも良いことを考えながら奥へと進むと、壁にスイッチが埋め込まれていた。
これを押すことで、大広間の鉄格子が開くに違いない。
大広間に戻ると、なんだか広々としている。
鉄格子が開くだけでなく、大きな岩の壁もどこかに消え去っていた。
早速狭い空間にあった感圧板を踏んでみる。
もしもこの下に爆弾でも埋められていたら、この感圧板を踏んだことで爆発する恐れがあるので、感圧板を踏むときは慎重にな。
どこか遠くで地鳴りのような音がする――
遠くてよく分からないが、三体の石像のうち後ろ向きだった中央の石像がこちらを向いている。
その石像の胸は、青白く輝いているのだった。
感圧板から離れてみると、真ん中の石像は再びこちらに背を向けるのだった。
わかったぞ!(`・ω・´)
解放の矢は本物の矢で、この位置からあの石像の胸の部分を打ち抜かなければならないのだ。
こんなこともあろうかと、弓を一本毎回持ち歩いている。
ただし戦闘で最後に使ったのは、レヤウィンの東にあるミリディスという遺跡で、壁の隙間から巨大な蟹相手に放ったのが最後だ。ん、それが最初で最後だ。
そんなわけで、全く慣れていない弓を使って、解放の矢を石像の胸めがけて放ってみるのだ。
まあそう簡単にうまくいくわけがない。
別に俺は荒野の狙撃手というわけではないからな。
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、カランカラン……
………
……
…
バシュン、あたぁぁぁりぃぃぃ!
ようやく当たったぜ……(。-`ω´-)
解放の矢が当たった像は上へと登っていき、その下に新たな通路が現れたのであった。
しかし、左右の石像が突然動き出して、こちらに襲い掛かってきた。
やはりガーゴイルの類であったか!
襲い掛かってくるならば退治するしかない。
霊峰の指改で一閃、ガーゴイルもとい、アイレイド・ガーディアンは一撃で崩れ去った。
もう一匹の方は、衝撃波で破壊してやる。
同じ技を連発したら、またオーウィンに塩呼ばわりされるからな。
ぬ、ここは闘技場じゃなかったな……(。-`ω´-)
こうしてアイレイド・ガーディアンを二匹とも退治した俺は、新たな通路を通ってさらに先へ――
ちょっと休憩だ。
盗賊の仕事とは思えない、ほとんど冒険者の仕事ではないか。
結構長い旅だぜ……
これにて、計画書その四の項目完了。
一方その頃――
「お嬢さんは一体何者だね?」
「あたしはラムリーザの妻よ」
「ほう、奥さんであったか。盗賊ギルドには入らないのかね?」
「入らないわ。で、あなたは何者よ」
「俺はアミューゼイ、盗賊ギルドの伝達役だ」
「ふ~ん……、あ~暇っ」
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