メエルーンの剃刀の探索 その二 ~歪んだ遺跡ヴァルサ・バーリム~
サンダークリフ・ウォッチの砦の奥には、アイレイドの遺跡があった。
恐らくここが、ヴァルサ・バーリムというアイレイドの都市の入り口なのだろうが、その入り口は障壁で封印されていた。
この封印を解くには、二つの胃石が必要なようだ。
一つはすでに見つけていたので、二つ目を探すために再びサンダークリフの居住地へと戻っていった。
「さてと、居住地にはもう何も無いので、他の場所を探ってみることにする」
「ここは何かしら?」
「わからん、採掘場にも見えるけどね」
こっそりと眺めていると、鉱夫が岩を削っていたりする。
問題は、その鉱夫も近寄っていくと問答無用で襲い掛かってくるということだ。
洗脳でもされているのか、鉱夫も含めてドロスメリという山賊紛いの一味なのか?
「もひとつおまけにえんやこら~」
「何をやっているのかしら?」
「額に汗を流して働くのはよいことだぞ」
「じゃあ鉄鉱石を持ち帰るの?」
「鉱夫に化けて進むと楽かなってね」
「あたしはやだ」
さて、二つの胃石はそれぞれ指揮官と鍛冶職人頭に預けたと手紙に書かれていた。
ここが採掘場なら、どこかに鍛冶職人が居るのではないかな?
とまぁ採掘場の奥に、武器や防具が並んでいて、鍛冶台まで置かれている場所があったりする。
そして鍛冶屋も例外なく問答無用で襲い掛かってきた。
やはり山賊紛いと心を通わすことはできないとでも言うのだろうか……
奥にあったテントの中に入ってみると、そこには数個の宝石と一緒に二つ目の胃石が置いてあったりするのだった。
「これで封印が解けるはずだね」
「この胃石でも十分宝になるんじゃないかしら?」
「腹から取り出した物らしいけど、欲しいのか?」
「やっぱり要らない」
と言うわけで、二つの胃石を台座にセットしたら、遺跡の入り口に仕掛けられていた障壁は取り除かれたのであった。
遺跡の中は、しばらく細い通路が続いた後で、大きな広間に出たのであった。
「えーと、これがヴァルサ・バーリムだっけな」
「埋もれた都市の一部みたいね」
「入り口が封印されていたから中には誰も居ないと思うけど、念のために慎重に進もう」
――と思ったけど、山賊紛いのドロスメリが襲い掛かってきた!
お前らどこから入ったんやねん!
閉じ込められたのかどうか知らないが、問答無用で襲い掛かってくる奴は敵。
こっちも問答無用で迎撃してやるからな!
さて、山賊紛いを退治して周囲をうかがったところ、見ているだけで妙な気分になってしまう場所にたどり着いたのだった。
「ん? 歪んでないか?」
「変ね、あたしもそう思ったところなの」
目の前にあるのは、これまでにも良く見た大理石でできたアイレイドの遺跡。
しかし何と言うか、斜めに30度ほど歪んでないか?
「斜め2ミリ、通急か~?」
「歪みは2ミリどころじゃねーよ。というか何の歌だそれは?」
緑娘は、変な歌を口ずさみながら歪んだ遺跡を進んでいく。
埋もれた都市なのは良いが、変な感じに埋もれてしまった様ですな。
そして、遺跡の入り口まで歪んでいるのだった。
「まるでトリックハウスやなぁ」
「なんだか首が曲がっちゃいそうだわ」
「30度傾いて見たら普通だからね」
遺跡の中も当然歪んでいる。
外だと遺跡だけが歪んでいるように見えるが、中だと全てが歪んでいる。
あまりこんなのを長い事見ていたら、精神まで歪んでしまいそうだ。
歪んだ先を抜けたところにあったもの、それは緑娘を不満にさせたようだ。
「何これ! また死霊術師?」
「待て待て、死体を飾っていたら死霊術師だが、頭蓋骨だけならゴブリンということもありうる」
しかし死霊術師の可能性も捨てきれない。
実際に、山賊紛いだけでなく黒いローブの者もうろついているようだ。
「やっつけたわ、死霊術師」
「いや、これは死霊術師じゃない……」
死霊術師ならローブに髑髏の模様がついているはず。
しかしこいつのローブは確かに黒いが無地だ。それよりも、この異様にこけた頬……
「こいつ、吸血鬼だな」
「山賊に吸血鬼、なんなのよここは」
「作戦変更、見かけたものはすぐに殲滅すべし」
「はぁい!」
吸血鬼まで居るとなったら、見かけ次第殲滅するしかない。
何しろ俺は、吸血鬼ハンターの一員に加わっているのだからな。
しかしなんだか、山賊紛いと吸血鬼が争っている場面にも出くわした。
よいよい、勝手に共倒れになるがよいよいよい(残響音含む)
しばらく進むと、やはり歪んだ場所に出てしまった。
どうやらこの遺跡の大半は歪んでしまったらしい。
おなじみの入り口も、歪んでしまっていた。
どうやらここが最深部のようだ。
しかし中は大変なことになっていたのだ。
山賊紛いと吸血鬼はすさまじくやりあったらしくて、至る所にそれぞれの死体が並んでいる。
「これってやっぱりメエルーンの剃刀をめぐって争っていたんじゃないかしら」
「山賊や吸血鬼が欲しがる様な武器、これは先に手に入れて厳重に保管する必要がありそうだな」
「その保管したところに、また山賊や吸血鬼がやってくるんじゃないの?」
「アークメイジの私室に隠そう。あそこに置いていたら、普通の奴は侵入できないはずだからな」
よく考えてみたら、半分軟禁みたいなアークメイジの私室。
宝を保管するのには一番安全な場所かもしれないな。
これからここで手に入れるであろうメエルーンの剃刀も、東部連峰で見つけたフローミルの氷杖も、アークメイジの私室にしまっておくことにするか。
さて、この遺跡の最深部では何が待ち受けているのだろうか?!
続く――
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