粘板岩室の謎 中編 ~ヴェロシの幽霊~
何人かの兵士が奥へ行ったきり消えてしまった洞窟、粘板岩室。
この神隠しの洞窟の謎を解明すべく、中へと突入した俺達だが、突然入り口が塞がってしまい閉じ込められてしまった。
再び外に出るには、別の出口を探さなければならなくなったのだ。
兵士が消えたというのは、入ったきり閉じ込められて出られなくなったからではないのだろうか?
洞窟内部の広間に、兵士の装備が落ちていたりした。
出口を探して洞窟内部を探索していたところ、これまでには見たことも無い造りをした建物を発見した。
内部の構造も初めて見るものだったが、ドレモラが出てきたりしたので、アイレイドとはまた別の遺跡なのだろうと判断した。
いくつかの扉を潜り抜けた先に――
「幽霊だな……」
「この地方って、不幸な人がたくさん残っているのね」
「成仏できない理由、何なのだろうか……」
ヴェロシの幽霊は、とくに何も語るでもなくそこに立ち尽くしているだけだ。
襲ってくるでもない、何かを訴えかけてくるわけでもない。
ただ、この部屋にもやたらと人骨が散らばっている。
かつて昔、ここでも争いがあったのかもしれないな。
この部屋の幽霊からは何も情報を仕入れられなかったので、部屋の奥にあった通路を一つ選んで奥へと進んでみた。
すると奥にあった部屋では、ヴェロシの幽霊とドレモラが戦っていた。
ということは、ヴェロシの幽霊は敵の敵で味方ということかな?
しかしヴェロシの幽霊は、ドレモラを始末すると今度はこちらへ攻撃を始めてきたのだ。
「なんだよ、敵の敵も敵かよ」
「敵ばかりならあたしが退治するわ!」
「待て、幽霊だから物理攻撃は効かないぞ!」
「あたしにはこれがある!」
おーおー、魔術師ギルド謹製の魔剣ね。
がんばってくれたまえ、コンジュラーの緑娘よ。
魔剣を振り回す緑娘にかかったら、幽霊など相手にならない。
あっという間に蹴散らし、幽霊は全て消え去ってしまった。
「そしてまたこの壷か」
「また盗品集め?」
「んや、これは盗品にならないみたい。普通の遺物だな」
しかしこんなに壷や瓶を集めてどうするのだろうか?
盗品以外はやはり壷屋として処分するしかないのかな?
そしてこの部屋では、これが全てだった。
墓のようでもあり、祭壇のようでもある。しかし他には何も無い。
仕方が無いので来た道を戻り、別の部屋へ行ってみることにした。
次に見つけた部屋は、棺のようなものが並んだ部屋。やはりここは墓場か?
その時、背後から近づく足音がいくつか聞こえてきた。
乾いたような音で、何か硬いものをぶつけているような音だ。
「あっ、骨がたくさん迫ってきている!」
「やっつけまぁす!」
骨の群れに緑娘が一人で突っ込んでいった。
まぁあの魔剣を使うのなら、振り回しているだけで退治できるから、お任せしてこの部屋の調査を続けるか。
魔剣の効果か、時折緑色に輝く。
骨の群れは、どんどん退治されているようだね。
そして残念ながら、この部屋にも何もありませんでしたとさ。
「うーむ、これは出られるのだろうか?」
「 デ レ ナイ ?」
「その隙間は一体何だね?」
「知らないわ」
そんなわけで、別の通路を探すことにした。
結果的に、最初に入ってきた幽霊の居た部屋には、三本の通路が隅から延びていたのだ。
最後の一本の望みをかけて進んでいると――
「むっちゃくちゃわかりやすいな、落ちてくるから急いで進むんだ」
「何が落ちてくるのかしら?」
「いいから走れっ」
「ほらみろ、思ったとおりだ」
「古典的なトラップね」
「足元ばかりだけでなく、上にも注意するんだな。空から来る物体にはご注意を!」
「洞窟の中なのに?」
まあどうでもよいw
古典的なトラップを潜り抜けて先に進むと、再び例の悪趣味な鉄格子が現れた。
その一つは、なんだかこちらに駆け出してきているような幽霊が居たりする。
なんだろう? 鉄格子が目に入っていないのだろうか?
なんだか気の毒なので、開けてやることにしたのだ。
「奴らがみんな殺した! 獣が! 魔術師が召喚した獣どもが!」
「話が見えません!」
「彼は私達全員を殺すつもりよ! 逃げなきゃ!」
えーと、何だったんだろうね?
一応警告のような物と考えていいのだろうか?
それでもやはりここでも召喚が行われていたようだ。
先ほど遭遇したドレモラも、召喚されてうろついていたものだろう。
念のために、幽霊が向かってきた通路の奥へと進んでみると、そこには埋もれた都市の召喚室で見かけた悪魔のような魔物が居たのだった。
「任せる」
「任せられた!」
悪魔を退治する緑娘、しかし緑娘の身体も輝き――
「また反射を食らったな……(。-`ω´-)」
「もう! やっぱりこの剣嫌い!」
「リリィさんに、麻痺は不要だから外した版を作ってもらうよう依頼しておくか」
………
……
…
さて、幽霊が居た場所と別の場所に向かってみることにした。
ここで一つ、現状の地図を確認。
この場所は「実験室」だったのか、いったい何を実験していたというのだ?
やはり召喚術かな?
「さて、この部屋には宝箱が一つあっただけか」
「ちょっと待って、小さなレバーがあるよ」
「ん、これを動かすと隠し通路が開くのかな?」
「じゃあ動かしてみるね」
緑娘はうれしそうにレバーを下げる。
ゴゴゴゴゴ――
――と、音はしなかった。
「何も起きないぞ?」
「う~ん、壊れているのかな? てっきり目の前の岩がバックリ開くと思ったのになぁ」
「諦めるのは早い、他の部屋で何か変化が起きているかもしれない」
「じゃあさっき入った部屋に一つずつ戻ってみる?」
「うん、そうしよう」
こうして行ったり来たりの洞窟、いや、実験室の探索は続くのだった。
ヴェロシの幽霊が言っていた「魔術師が召喚した獣」とは何か?
粘板岩室から脱出することはできるのか?
そしてここでも遺物は見つかるのか?
続く――
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