単独での窃盗2 ~被害者の居ない泥棒二人目~
グレイ・フォックスを探るために盗賊ギルドに潜入したのはよいが、スリ改め山賊呼ばわりされてしまった。
これは盗賊ギルドでの階級らしいが、これまで退治してきた山賊は、みんな盗賊ギルド所属だったのか?
もしそれが本当なら、グレイ・フォックスの逮捕だけでなく、ギルドそのものを壊滅させてやる必要があるかもしれない。
しかしまだグレイ・フォックスに接近することもできないのだ。
そして、またどろぼうさんをするように言われてしまったのだった……
「スキングラードへ行くぞ」
「またあの家でどろぼうさん?」
「遺品整理だ……(。-`ω´-)」
というわけで、今回も緑娘テフラに見張りをさせて、俺はグラアシアの家から金目の物を持ち出すのだった。
壷とかグラスは高く売れそうだが、全然売れないから気をつけなければならない。
武器や防具があればそれなりに金になるのだが、日用品はとにかく安いのがこの国だ。
そもそもちょっとした日用品なら、小銭と同じように街中至るところにある樽に入っていることが多い。
ひょっとして外にある樽の中も、誰かの所持品だったりするのだろうか……?
そこで俺が目をつけたのが本だ。
本なら小額ではあるが、確実に売れるのである。
不本意ながら、盗本屋さんと化してしまうのだった……(。-`ω´-)
砂時計やハサミは金にならないから、持ち出してはいけないのだ。
そしてある程度本を持ち出せば、今度はブルーマに行ってオンガーに買い取ってもらう。
今の所、被害者の出ないどろぼうさんをやっているが、それにも限界はあるだろうなぁ……
………
……
…
しかし――
「う~む、次の仕事を任せるには、まだまだ足りんな」
「なんだとぉ?」
オンガーは首を横に振って、ダメ出ししてきたのだ。
持ち出した本を買い取ってもらったが、どうやらまだまだ足りないみたいだ。
グラアシアの家にある本だけでは、これ以上の出世は望めなくなってしまったか。
さて、どうする……?
「どうするの? どこかの家に強盗に入る?」
「それは嫌だ、君がやってくれ」
「あたし盗賊ギルドに入ってないもん」
「やっぱりいっしょに盗賊ギルドに入って二人でどろぼうさんをやろうじゃないか」
「盗賊なんてやだ」
「俺もやだよ、でも盗賊が居たら宝箱の罠を外してくれるぞ」
「あたしウネム使うから大丈夫よ」
「なんやそれ……」
しかしどこかで盗みをしなければ話は進まない。
グラアシアの家に戻って、食料も持ち出すか? 食料も一応1Gとかにはなるみたいだし。
実際は本も安いものは1Gにしかならないけどね。
その時俺は閃いた!(`・ω・´)ピコーン!
「思い出したぞ!」
「何よ急に」
「こっちに来るんだ」
俺はあることを思い出したので、緑娘の手を引っ張ってブルーマの市街地へと連れ込む。
この町にも居ることを思い出したのだ、グラアシアみたいに事件の中で死んでしまった人が居た事に。
「ここだ」
「ここって、誰の家よ?」
「アルノア・オーリアの家。ある事件で死んだ」
「あなたって、事件に関わりまくっているのね」
「知らん、この国の人々が、全部俺任せで自分で解決しようとしないのが悪い……(。-`ω´-)」
そう、初めてブルーマの町に来たとき、恋人にお金を盗まれた女性の手助けをしてあげたことがある。
だが彼女は、恐らく不正を働こうとした衛兵に殺されたのだと思う。
事件が終わった時には、すでに殺されていたのだった……
そこで今回も緑娘に見張りをさせて、俺はアルノアの家に忍び込んだ。
どろぼうさんじゃないぞ、遺品整理だからな!
あの事件からどれだけの月日が流れただろうか?
すでに遺体は片付けられていて、その後代わりに住み着いた者も居ないようだ。
しかしこの家には本は少ないな……
グラアシアが本を集めすぎているのか、アルノアが書物に興味が無いのか、どっちだろうね?
地下室を探索していると、毒の治療薬が見つかった。解毒剤ってところだね。
これなら高く買い取ってくれそうだね。
アルノアかぁ、どんな人だったっけ?
確かこの地下室で、魔法撃ってた記憶があるけど違ってるかな?
ボーイフレンドはジョランドルだったかな?
まだ牢屋に居るのだろうか……
結局アルノアとジョランドル、どっちの意見が正しいのかは分からずじまいだった。
あとこの事件は、俺が生まれて初めて投獄された事件でもあったりするのだw
そういえばこの事件も汚職衛兵がらみの事件だったな。オーデンスに始まったことじゃなかったのだ。
全くこの国の衛兵は、役に立っているのかどうかわからんものだ。
レックス隊長にしても、日中はうろうろ巡回しているだけだしなぁ……
そんなわけで、足りない分を盗んだ解毒剤で補い、ようやく次の仕事に取り掛かるだけの実力を見せたのだった。
どろぼうさんじゃなくて遺品整理だと言い張るために、これまでの事件で亡くなった被害者の空き家となっている所を思い出していかなければなっと。
ところで、名声じゃなくて悪名が広まっているような気がするのは、気のせいだろうか……?
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