戦いの日々 後編 ~塩分濃度の高いチャンピオン誕生~
闘技場で戦う日々は続いている。
俺は魔術師ギルドのアークメイジ、しかし半分戦士ギルドだからこんなマネをやっている。
闘技場の報酬も、一戦300Gまで上昇していた。それでも他のギルドに比べたら少ないけどな。
そしていよいよ転機を迎える時がやってきたようだ。
「お前はどんな状況でも塩にできる才能を持っているようだな!」
「ではお手本を見せてください(´・ω・`)」
「まあよい、どんな手であれ三人を倒すとは驚きだ。お前はヒーローに昇格」
「宇宙ヒーローですか?」
「そんな妄想みたいなものではない。お前の次の相手はイエローチームのチャンピオンだ。剣術使い、射手、そして呪文使いの三人相手な」
「またハンディキャップマッチか?! 絶対に俺を殺そうとしているだろ!」
「大丈夫だ、お前の味方としてポークチョップと組ませてやろう」
「誰だよそれ!」
「三人に勝てば、チャンピオンの称号はお前のものだ。幸運を祈る!」
「こいつ聞いてねーし」
しかもチャンピオンって何だよ?
俺は既に戦士ギルドのチャンピオンだぞ?
同じじゃねーか! ちょっとはひねりを入れろよ!
しかし振り返って見ると、そこで訓練していたはずのおばさんの姿は無かった。
そっか、マジであのおばさんと戦う日が来たわけか……(。-`ω´-)
そして俺はいつもどおりに通路を進んでフィールドへ――
?(´・ω・`)?
ひょっとしてポークチョップって、ブラッドワークスで飼っていた猪?
…………(。-`ω´-)
本気で闘技場関係者は俺を殺しにかかっているな?
そんなにしょっぱい試合が気に入らないですか?!
「ブルーチームのヒーロー! この勇敢な闘士は、三人の相手を葬り、新チャンピオンの座に就くことができるのか?! ごらん頂きましょう!」
チャンピオンと対戦するときは三人相手、これはグランドチャンピオン相手の時は五人ぐらい相手にしないといけないかもしれないな。
こんな無茶なカードばかり組んで、チャンピオンを保護してきたのだろう。
闘技場、けっこう汚い場所ではなかろうか?
などと考えていたら、試合が始まっていて一気に間合いをつめられていた。
チャンピオン! お前もマスクマンかよ!
まぁチャンピオンだから強さの証にはなっているのだろうから、おばさん顔を隠しているのだろう。
ポークチョップもなんかがんばっいてるけど、相手は全然気にしていないのな。
めんどくさいので、チャンピオンともう一人は封印させておいて、先に射手から片付けることにした。
この魔法は、水の塊を噴出して、一定時間相手をその中に閉じ込めておくといったものだ。
そして俺は、一気に射手との間合いをつめた。つめる必要は無いけどな。
どうやら遠距離から一方的に仕留めるのは「塩」らしい。射手は「塩」にならないのか?
食らえ、元祖霊峰の指!
一対一なら負けることは無い!
もっとも、三人相手でもそれほど悲観しないけどな。
射手を退治して振り返ると、水の塊を抜け出した相手がこちらに駆けてきているところだった。
十分時間稼ぎになったし、手前に呪文使い、奥にチャンピオンと一列に並んでいる。
ここは――
必殺の霊峰の指改!
この一撃を至近距離で食らった呪文使いは、即座にノックアウトしてしまった。
しかし遠くに居たチャンピオンは、呪文使いが少しは盾になったか、それでも俺に向かって突っかかってきた。
しかしこうなったら、チャンピオン対俺とポークチョップの逆ハンディキャップマッチだ。
ポークチョップが役に立つのかどうか不明だけどな。
とどめはフリーズ・レイ!
チャンピオンを絶対零度が襲い掛かり、哀れ氷柱と化してしまったのだった。
この魔法の命中率も改善されたな、よいよい。そして俺の勝ちだ。
「シンジよ、新チャンピオンが誕生しました! ブルーチームに喝采を! チャンピオンに栄光を!」
どうやら俺はチャンピオンになったようだ。
チャンピオンの防衛戦は三人がかりOKなのだったら、俺の時は緑娘とリリィさんと組ませてもらうようにしよう。
たぶん負け無しだろうな。
ところでシンジって誰だ? ドラゴンズレアのラスボスか?
途中からポークチョップ全然見かけないなと思ったら、最初の乱戦でやられていたようでした。
やっぱりそうなるよなぁ、アーメン(。-`ω´-)
ブラッドワークスに戻った時、オーウィンは割とご機嫌なように見えた。
俺の姿を確認すると、半分笑いながら言ってきたものだ。
「やっちまったな! お前は最後の一人までやっちまった! それにさっきの試合は割と塩分濃度が薄かったぞ。イエローチームが復活するのに、どれだけ時間がかかるか分かるか? ふはははは!」
「興行とかそんなの考えていないのね。相手を叩き潰すのが目的なら、塩でも何でもいいじゃんかよ」
「我が友よ、偉大なる名誉と共に、お前はチャンピオンのランクへと上がった!」
「いえ、既に戦士ギルドのチャンピオンです。……待てよ、二冠王ということでこれはこれでいいか」
「さて、お前はアリーナでの通常の試合を全て達成した。あと残っているのは、グランド・チャンピオンへの挑戦しかない……」
「今度は五人相手ですか?」
「グレイ・プリンスに立ち向かえる自信があるのなら、イザベルに話してみろ。俺はお前の勝利を信じているぞ。だが塩分濃度は低めで頼むぞ」
「知らんがな(´・ω・`)」
慌しく登り詰めたような感じではあるが、俺は一気にアリーナのチャンピオンへと登り詰めたのだった。
他のギルドとかと違って、旅をする必要も無し、仕事をこなす必要も無し。ただ単純にイエローチームの刺客と戦い続けるだけでよかったのだ。
簡単と言えば簡単、命がけと言えば命がけ。
しかし、マニマルコやリザカールと比べたら、イエローチームのチャンピオンも大した事無いのだろう。リザカールとは戦ってないけどね。
こうしてアリーナに、若干塩分濃度高めの新チャンピオンが誕生したのであった。
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