真面目になったジ・スカール先輩 ~イタヅラはおしまい~
久しぶりにブルーマを訪れたということで、これまた久しぶりにブルーマの魔術師ギルドに顔を出してみようと思った。
ジ・スカール先輩は元気にやっているだろうか?
「あれっ? ジ・スカール先輩がギルドマスター?」
「いや、ジ・スカールはマスターではない。代理人を任されているだけだ」
「代理人って嫌われる傾向があるから、とっとと身を引いたほうがいいわよ」
「そうなのだ、ジ・スカールも代理人はそろそろ飽きてきた」
そういえば最後に訪れた時も、マスター代理をしていたな。
ジュラーエルさんはやっぱり研究で忙しいのだろうか。
「あー、ここの階段ね、覚えているわ」
「いやまぁ、あの時は君が無茶苦茶怖かったからなぁ。いよっと」
この場所から階段へ飛び降りて、後を追ってきた緑娘から逃げ出したっけ。
いきなり現れて「許婚」だと言って、知らんと言えば約束を反故にされたと大きな鎌を振りかざす女、普通逃げるわ!
まぁ俺が記憶無くしたのが原因なのだがな……(。-`ω´-)
「地下に追い詰めたと思ったけど、反対側にも出口があるなんてね」
「ここには住んでいた時期もあるから、地の利があったわけだ」
「さて、今後の予定でも再確認しようか」
「アザーンの仕事は終わったから、次はバーズに会いに行くわ」
「となると、向かう先はシェイディンハルだね」
「その先はどうなるのかしら……。オレインさんは追放されたし、絶対マスターはあたしのこと良く思ってないわ」
「そうだな、味方を増やすか。アザーンやバーズは君の事を良く思ってくれているみたいだし、ギルドメンバーにも知己を得ればいいと思う」
「誰なのかしら、マグリール先輩は裏切ったし、ヴィラヌスは死んじゃったし。そうだわ!」
「なんやね」
「ミーシャちゃんを戦士ギルドに誘っちゃおう」
「こらこら、少女を入れるんじゃない。せめてあと10年は待とうな」
そう考えてみると、戦士ギルドって上司以外にこれといった人材にめぐり合えないな。
魔術師ギルドのジ・スカール先輩やアリーレさんに該当する人は誰なんだろう?
マグリールはいろいろとネタにできそうだったけど裏切っちゃったからなぁ。
「こうして地下の居住区を通り抜けてきたら、あなたの姿はもうなかったの」
「まぁあの時は、ここのマスターを任せられる人を探す必要があって急いでいたからなぁ」
「しょうがないからそこにいるラスカル先輩にあなたの行きそうな場所聞いたけどね」
「ジ・スカール先輩な」
「この二階は何かしら?」
「ん、マスターの部屋」
お邪魔してみたら、ジュラーエルさんは昼寝中だった。
ジ・スカール先輩にマスター代理やらせて昼寝とは暢気な人だ。
それよりも、絶対アークメイジの私室よりこの部屋の方が住み心地良いよなぁ……
………
……
…
しばらくのんびりしていて、ジュラーエルさんも活動を始めた頃、ジ・スカール先輩に「ちょいとちょいと」と呼ばれてしまった。
なんだ? イタヅラの手伝いはやらないぞ?
「実はジ・スカールは帝都の大学に行こうと考えている」
「先輩にしては珍しく前向きな考えですね」
「元々ジーンヌが無能なのにコネだけでマスターになったのが気に入らなくてイタヅラをやっていたのだ。それとは逆に、ジュラーエルはしっかりとした実績もある。試しにイタヅラを仕掛けてみたが、あっさりと見破られてしまいつまらない」
「それで仕方なく大学へ、ですか?」
「それもあるが、ラムリーザがいろいろとがんばっている噂を聞いていると、ジ・スカールもしっかりやらなければと考え始めたのだ」
「もっと早く気がついてくれれば、ブルーマギルドのマスターを任せたのに」
「うむ、残念だ。この者はこれからその遅れは取り戻していくつもりだから、これから帝都に向かわなければならない」
ジ・スカール先輩が改心して真面目になってくれた。
なんだかうれしいのと、俺たちもこれからシェイディンハルへ向かおうと考えていたので、折角だから途中まで同行することにした。
「ラムリーザは変わった馬の乗り方をするのだな。その娘がそんなに好きか? いや、婚約者だったかな?」
「俺が変わった乗り方をするのではない。この娘が変わった乗り方を強要するのだ……(。-`ω´-)」
「なによ、あたしと一緒に乗るのが嫌なの?」
「嫌ではないが、さすがに人に見られると恥ずかしい」
「あたしは恥ずかしくないわよ」
「ジ・スカールも馬を買おうかな、と考えた」
馬に乗るのはいいが、ローブで馬にまたがったらどうなるのか?
横座りか、足丸出しで乗るしかないのではないか?
魔術師なら魔術師らしく、テレポートなどできればいいのだが、残念ながらそういった技術は発達していないようだ。
俺もテレポートしたいよ、アンヴィルからシェイディンハル、レヤウィンと国内横断も大変なのだよ。
ブルーマやブラヴィルなどの戦士ギルドが、ただの詰め所になっているのがいかんのだ。
その点魔術師ギルドは、全ての町が拠点みたいになっていていいもんだな、と。
というわけで、帝都への道と、シェイディンハルの道が別れている場所に到着。
ジ・スカール先輩と、互いの発展と栄達を祈りあい、再会の日まで壮健なれ、と分かれたのであった。
これが、ジ・スカール先輩との最後の別れになるとは、この時は思いもよらなかったのである――
――などとやれば、ドラマチックに見えるか?
ん? 待てよ……このネタは二度目か?
いかんな、想像力の欠如が発生しておる。
冗談は置いといて、ジ・スカール先輩がんばれだ。
俺もがんばるから、当面は戦士ギルドの仕事だけどな。
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