ペライト ~魂の抜けた信徒達~
ペライトの祭殿は、ニーベナイ渓谷、シルバーフィッシュリバー沿いの高台にひっそりと佇んでいた。
細いドラゴンのような神体を祭っており、その周囲には五人の信徒が微動だにせず立ち尽くしている。
……ん?(。-`ω´-)
――微動だにせず立ち尽くしている。
何をやっているのだ?
スキャナーの力を共有する儀式でもやっているのか?
「こんにちは!」
「…………」
「この神様はペライトですか?」
「…………」
だめだ、全く反応が無い。
信徒の一人に近寄ってみる。
どうやら目をつぶったまま、意識を失っているようだ。
「これは何なのかしら?」
「どうやらデイドラっぽいな、こいつら何かやらかして呪われているんだ」
「どうするの? またお人よしを発揮して助けてあげるの?」
「このまま放っておくのも気の毒だし、仕方ない、語りかけてみるか。変な要求をしてきたら全力で逃げるから、その準備をしていてくれ」
「なんだかよくわからないけど、わかったわ」
というわけで、俺はペライトの声に耳を傾けた。
『この者は動いておる! 望ましい変化だ、定命の者よ!』
なんか俺が動いているひとが嬉しいらしい。信徒が動かなくなったから、嘆いているのかなぁ?
『あの者どもは、我が困惑の種となってしまった! おの愚か者どもは我を召喚しようと呪文を唱えたのだ。高慢で愚かな行為だ! ゆえに相応しい結果を招いた!』
こいつデイドラだよな、語りかけてきているし。
邪神っぽいデイドラを召喚しようとするやつら、ひょっとしたらこのまま放っておいてもいいような気がしてきた。
『我は汝に彼らの肉体と魂を元通りにして欲しいのだ! 肉体はこの世に、魂はオブリビオン、二つの世界に囚われておる!』
人殺しじゃなくて人助けを依頼してくるデイドラ。
う~む、まだ良識派のようだな、このデイドラは。
「このデイドラは、悪いことは考えていないみたい。むしろ危ないのは信徒の方」
「それで、助けるの?」
「人助けで報酬がもらえる系の話だから、やっておこうと思う」
「情に流されると、ろくなことにならないよ……」
………
……
…
気がつくと、俺は赤々とした世界に転移していた。
ここは見覚えがある、ボエシアの世界とそっくりだ。
俺はここで、五人の信徒の魂を発見して、元の世界へと送り出さないといけないのだ。
蜘蛛の化け物とかが襲い掛かってきたりする。
わりとめんどくさい空間のようだな。
蜘蛛を退治して、周囲をしばらくうろついていると、なにやら霊体のようなものに遭遇した。
アルゴニアンみたいだが、これが信徒の魂か?
魂に触れると、その霊体は消え去ってしまった。
これで魂は帰還したとでも言うのだろうか?
敵もしつこい。
二足歩行のワニのような化け物まで襲い掛かってくるのだ。
待てよ? 以前ヴァーミルナの件でアルクェイドの塔を訪れた時、そこでも見かけたような記憶がある。
血虫の兜を持ち出したアーラヴも、デイドラの使いのようなものにやられていたが、そこにもこいつは居た。
デイドラの住む世界には、こいつがいるのは当たり前だというのだろうか。
別の霊体を発見、これで二人目だ。
確か外に居た信徒は、五人で輪を作っていたはずだ。
あと三人も探し続けないとダメなのか、結構広い空間みたいだし大変だな……(。-`ω´-)
魂の救済だけではないのだ。
蜘蛛、ワニに加えて悪魔のような奴まで襲い掛かってくる。
こんなのが住んでいる世界を持っているデイドラ、やっぱり悪魔だ、邪教だ!
でもこのペライトは、信徒を救って欲しいというだけであって、特に無茶苦茶な要求をしてきたわけではない。
シェオゴラス、メファーラ、サングイン、お前たちは絶対に許さんからな!
三人目の霊体。
触れようとしただけで輝いて消える。これで救ったことになっているからこっちの作業は楽なものだ。
敵がめんどくさいのと、探して回るのがめんどくさい。
その傍には、巨大な塔が建っていたりするが、今回はスルー。
どうやら魂は、平野部にしか居ないみたいなのだよね。
別の島まで、水上歩行の首飾りを使って一気にショートカット。
溶岩みたいなものも水の一種のようで、首飾りの魔力で水面を歩行できるのだ。
履いている下駄は、緑娘の靴みたいに極端な形状をしていないので、普通に気にせず渡れる。
緑娘のニードルヒールは踵の部分だけが持ち上がっていて靴底が斜めになっているから、踵だけが水に沈むと後ろに倒れてしまうのだ。
そういうわけで、四人目を救済。あと一人だ。
しかしデイドラを呼び出そうとする信徒も信徒だ。
まぁ俺もサングインとかを呼び出して、一発ぶん殴ってやらないと気がすまないけどな!
この世界は気味の悪い繭のような物の中に宝が入っていたりする。
こんなの中に入っていたものは使いたくないが、お金と宝石ぐらいは貰っておく。
しかし荒っぽい世界だ。
ペライトはこの世界のことをオブリビオンと言っていた。
もしも地獄というものが存在するとしたら、おそらくこんな風景の場所なのだろうな。
というわけで、最後の一人の魂も救済した。
これで任務は完了したはずだぞ?
すると、ボエシアの時に見たものと同じゲートが出現していた。
よかった、これで元の世界に戻れる。
………
……
…
「あっ! よかった戻ってきた」
「ただいまー、かな?」
「もう、また別の場所に飛んでいったのかと思って心配しちゃったじゃないの……」
「まぁ、確かに別の場所、というか別の世界に飛ばされていた……(。-`ω´-)」
そっか、緑娘が居ないなと思っていたけど、ペライトは俺だけをオブリビオンに飛ばしたのか。
ところで緑娘には、ペライトの声は聞こえていたのだろうか?
『我が信徒たちを連れ戻してきたな。これで在るべき秩序は回復した、感謝しようぞ。我が祝福の下、これを進呈しよう。それが汝に秩序をもたらさん事を』
「などとペライトが言っているけど、聞こえてる?」
「何が聞こえているの? あたし何も聞こえないよ?」
「う~む……(。-`ω´-)」
俺はデイドラに好かれているのか?
デイドラと交信できるのは、何か特別な力を持っている者だとでも言うのだろうか?
でも考えてみたら、これまでに訪れたデイドラの祭殿でも、他の信徒は俺がデイドラと会話していることについて一度も触れてこなかったな。
振り返ると、信徒達は何事も無かったかのように振舞っている。
話を聞けば「我々は戻ってきた!」などと言っているので、一応オブリビオンに魂が飛ばされたということは認識しているみたいだ。
「ところでペライトからこんなもの貰ったよ」
「どれかしら?」
「どうだ、かなり大きな盾だぞ。君の蹴り攻撃も防いでくれよう」
「……キャプテン・ラムリーザ」
「えっ? なんだって?」
「なんでもないわ」
以上、今回のデイドラはまともな部類でよかった。
オブリビオンの世界は、二度と行きたくないような場所だったけどね。
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