ハマーフェル路とコロヴィアホーン ~石像だらけの山地~
前回から引き続いて、コロヴィア台地のコロヴィア山にて。
山頂にあった砦は、入り口の無い謎の砦だった。何のためにあるのか、何のために造られたのかは謎。どこか別の場所に、秘密の入り口でもあるのだろうか?
さて、地図を見ると、この付近には他に「ハマーフェル路」「コロヴィアホーン」という場所がある。
コロヴィア山には他に見るべきものが無いので、次の場所へ向かうことにした。
砦の裏側から見下ろしてみると、山頂からずっと階段が続いている。
ずっと続いている。
ひょっとして岩山登りをせずに、こちらから来るのが正規ルートだったのでは? と思うけど、そんな道は見当たらなかったのだから仕方が無い。
「がう」
「がうじゃない、野蛮人」
「がう」
「もうよい!」
なんか野蛮人オーガが居たりする。
霊峰の指を放つと、後ろから舌打ちが聞こえたりする。そんなにこの魔法が悔しいですか?
そのうち抵抗力をさらに鍛えるから、霊峰の指を撃ちまくりの修行につき合わされるかもしれない。
でもな、俺はなんとなく思い出してみるのだった。
霊峰の指の魔力自体は、緑娘は抵抗していたのではなかろうか?
ただ衝撃力がハンパ無いので、ふっとばされて木に激突したからダメージを受けたのではなかろうか?
ぶつかったのが木ではなくて、後ろにやわらかいマットなどを置いて衝撃を吸収できるような場所で食らえば、魔力自体は耐えられるのではなかろうか?
ただそれでも、衝撃は防げないから気に入らないということになりそうではあるが。
階段を降りきると、そこから先は道なき道。
遠くに見える砦を目印に、岩がごろごろしている荒地を進んでいく。
「がう」
「がうじゃない、熊」
「がう」
「もうよい!」
今度は熊が出てきたりする。
先ほどから緑娘は、山登りで疲れたのか戦意が落ちているのか動こうとしない。
そんな体力じゃ、戦士ギルドで一人前になれないぞ、と。
たぶんここら辺が、ハマーフェル路。
どこが「路」なのか分からないが、とりあえず「路」だそうだ。
監視塔みたいなのがあるけど、あれに登れば何か発見できるかな?
登ってみた。
コロールの町、そして遠くにうっすらと帝都なのは変わりない。
思えば遠くにきたもんだ?
広いようで狭い、でもやっぱり狭いようで広い。それがシロディール。
振り返れば、山の頂にそびえる砦。あれがコロヴィア山だ。
階段を降りていたときはそれほど感じなかったけど、こうして遠くから眺めてみると、結構な高さなんだね。
反対方向を見てみると、そちらには木々に覆われた少し高くなった場所。コロヴィアホーンか、ホーンって何だろうね?
さて、監視塔を降りて一休みすることにした。
先ほどから緑娘が一言も発していないのが気になったからだ。
戦士ギルドに入って栄達したいなどと言うから、この程度で参らない体力ぐらい持っていろと思って動き回っていたのだが、さすがに気になったりする。
俺も少しばかり疲れたからな、小休止としよう。
何が路なのか分かりにくいハマーフェル路、監視塔の裏側には小さな水場があったりした。
ニードルヒールを脱ぎ捨てて水辺に飛び込む緑娘、丸太の上に大の字で寝っころがる俺。
「あー、生き返ったわ!」
「そんなに疲れているのなら、疲れたと言ってくれればよかったのに」
「それを言ったら負けだと思ったから黙ってた」
「まあ俺も、君が戦士ギルドに入りたいなどと言うから、あえて気にせずに動き回ったんだけどな」
「それでいいの、今度は山道にも歩き慣れるから」
「やっぱりあの普通は歩けないような靴が悪いんじゃないかー」
「そんなことない、平地はもう何ともなくなったもん。これからはもっと山道でも鍛えるから。登りはあまり気にならないのよ、問題は下り……」
今頃になって気がついた。
ユニコーンに乗って山登りすればよかった――、と。
………
……
…
一時間ほど休憩して、再び移動開始。
目指すはコロヴィアホーン。ホーンが何かわからんが、コロヴィアホーン。百万ホーンだと宇宙が跡形も無く消し飛ぶらしいが、はてさてどうなのやら。
「やあ! ホッテンプロットさん!」
「や、やあ? ホッテン……?」
山のもっと下あたり、雲天に向かう途中の分かれ道にあった石像と同じものがあったりする。
一体これは誰をモチーフにした石像なのだろうか?
ホッテンプロット? 知らん、適当に名づけているだけ。本当は誰かは知らんのだ。
コロヴィアホーンの山頂付近に近づくと、そこにはコロヴィア山と同じように砦が一つ。
どうやらこの砦も、入り口の無い用途不明の砦のようだった。
そんな砦よりも気になるのが、こちらの石像。
誰だ? 騎士か? ハゲてるぞ?
鉄仮面を被っている時は勇ましそうだったのに、素顔を晒してみたら残念だった系か?
いや、意味分からんけど。
ここは一つ、この石像に倣ってポーズを取らなければなりませんな!
「三人揃ってサンバルカーン!」
「何よそれ?!」
「真ん中のリーダーである騎士が鷹、そして俺が虎」
「あたしは何?」
「サメだな」
「あたしサメ肌じゃないよ?!」
「顔がサメに似ている……(。-`ω´-)」
「そっ、なっ、どういう意味よ!」
うーむ、一休みしたら緑娘が元気になったw
シロディールと逆の方角、ハンマーフェル方面の景色はこんな感じ。
全然町とか見えないね、あの山の向こうまで行かないと、居住区は無いのかな?
「というわけで、これからコロールへ帰ることにする」
「これからずっと下り道ね、はぁ……」
「なんだよ、まだ見足りないのか?」
「下り坂は足が……」
「よくわからんけど、つま先を地面につけずに踵だけで降りるとかいかんの?」
「あ、それだといいかも。折れないようにミスリルで作ってあるし」
山から下りる道、後ろからザクザクという足音がついてくる。
怖く感じる足音は、後にも先にもこんなものぐらいだろう。
その途中、馬に乗った騎士? の石像が飾られていた。
この方面、やたらと石像が多いのは気のせいだろうか?
「ユニコーンに乗ってきたら、山登りも楽だったんじゃないのかしら?」
やべっ、緑娘が気がついてはいけないことに気がついてしまった。
だから俺は、こう言ってごまかすことにした。
「二人も乗せて登っていたら、さすがにユニコーンもへばっていただろうな」
「あたしだけ乗って、あなたは手綱を引っ張ってくれてたらよかったのよ」
「ユニコーンは非処女は乗せんのだ。男の俺が乗ることでユニコーンの感覚がマヒして非処女も乗れるのだ」
「なんかムカつく。コロールに戻ったら一発ぶっぱなすから相手しなさい」
「そっちはぶっぱなされる方だろ?」
――などと実りの無い会話をしながら、こんな道を通って降りていく。
そしてしばらく降りると、見覚えのある場所へと戻ってきた。
「ちょっと、行きに通ったあの岩山より、この帰り道に通った道の方が行きやすかったんじゃないの?」
「あっ! 松明神(まつあきがみ)が松明に宿った! 神は言っておる、右の石段の先も見聞しておけと!」
「ごまかさないで、だいたいマツアキガミって何よ?」
「炎を司る神様だ。俺は松明神の初代教皇となるのであった」
緑娘は無言で右の石段を登り始めた。
さすがにこの演技は寒すぎたか?
でも誤魔化すしかないじゃないか、コロヴィア山に登るのに楽な道があったのに、わざわざ岩登りをしてしまった事実は覆らないのだしな……
雲天とは逆の道、その先にあったのは石でできた棺とまたしても新しい石像。
何だろう、何を埋葬しているのだろうか、こんな辺境に……
「やあ!」
「いい加減くどいよ」
「だめだぞ、挨拶神ホッテンプロットにちゃんと挨拶しないと祟られるぞ」
「どんな祟りが来るっていうのよ」
「世界中の人たちが行列を作って、君に挨拶をし続ける。君はその全ての挨拶に応じることが出来ないのならば、呪われても仕方がない。呪われても仕方がない。呪われても仕方がない」
「…………」
まあそんなわけで、俺たちのコロヴィア台地放浪記はこれにておしまい。
また機会があったらコロヴィア山の登山日記を書こうと思うが、一度見れば済むようなものばかりだったのでもう来ることはないだろうなぁ……
前の話へ/目次に戻る/次の話へ