ギルドメンバーに加わります ~緑娘の名前はテフラ・リサウィリス~
二度目のシェイディンハル訪問となるのであろうか。
以前来た時は、魔術師ギルドの推薦状を書いてもらうのと、ジェメーン兄弟の件で調べ物といった感じだったかな。
当時ギルドマスターだったファルカーが、実は死霊術師と通じていて、後に巨大な黒魂石を作成しているところへ乗り込んで奪ったのは良い思いで。
思えばあの時から、死霊術師との因縁が始まっていたようなものだったな。
緑娘は、シェイディンハルの環境を気に入ったようで、「過ごしやすそうな場所ね」などと言っている。
まぁ悪のギルドマスターは居なくなったし、元祖汚職衛兵も始末した。初めて訪れたときよりは、過ごしやすい街になっているだろう。
絵の中とかに行ってみますか?
そして、今回の目的である戦士ギルドだ。
「ラムリーザ、物語が始まるよっ」
「俺の物語はアークメイジになりました、めでたしめでたしで終わっているぞな、もし」
「あたしとあなた、二人の物語は?」
「二人は戦死ギルドという破滅への道筋へ足を踏み入れたということは、まだこの地点では知る由もなかった――(。-`ω´-)」
「戦士ギルド!」
「読み方は同じだから問題ない」
緑娘は、頬を膨らませて不満顔になり、戦士ギルドの建物の中へと入っていった。
おれも手伝ってあげると宣言した手前、入ってあげる必要はあるか。
戦士ギルドで新人の募集を行っているのは、コロール、アンヴィル、そしてここシェイディンハルの三箇所だ。そしてここでは、バーズ・グロ=カシュというオーク族の男性が取り仕切っていた。
「ずいぶんと顔色の悪い人ね」
「あまり大きな声で言わないように」
どうやら緑娘も、初めてオーク族を見た時の俺と同じ感想を抱いたようだ。
今ではマゾーガ卿と組んで戦ったこともあるし、アルゴニアンよりはまだ――、う~ん(。-`ω´-)
まあ怖い顔です。オークのマゾーガ卿がやっぱり怖かったので、君と向き合うことにしたんだから、オーク族には感謝しとけよ、って何で上から目線なのだろう。
とりあえず、主導権は緑娘ということで、俺は彼女がギルドマスターと話しているのを傍で聞いていた。
ギルドマスターのバーズは、「仕事をよこせというのなら、戦士ギルドに入らなければならない」とか言っている。使えるやつかどうかはわからんと言っているが心配するな、その緑娘、戦闘力はそれなりに高いから。
よく考えてみたら、オークも緑族だな、顔色が緑、髪の毛が緑、どっちも緑。草原で保護色、いかん、話が逸れて行っている。
で、何やら前科が無くて賞金首でなければ使ってあげると言ってる。すまん、俺は前科二犯だ、サングインにそそのかされてと、ブルーマで仕事で……
そういうわけで、緑娘は戦士ギルドの準会員となったようだ。こっちのギルドも準会員から始まるのな。
緑娘の処遇が決まったところで、バーズは傍で聞いているだけの俺に話しかけてきた。
「ところでお前さんは何だね?」
「その娘の付き添いです」
「あたしの婚約者です」
いや、余計なことは言わなくていいからね、俺は記憶に無いから。
「その婚約者が何の様だ? ここはカップルの聖地ではないぞ」
「じゃあ今度聖地を紹介――じゃなくて、俺も戦士ギルドに参加します。魔術師ギルドと掛け持ちでもかまいませんか?」
「仕事をしてくれるのならそこは自由だ。しかし魔術師ギルドでも忙しくないのか?」
「アークメイジまで登り詰めたら暇になりました。監獄のような私室に閉じ込められるよりは、世界を回りたい。そして、戦士ギルドと魔術師ギルドの架け橋となり、それぞれのギルドが協力して世界征ふ――平和のために働きたいと考えております」
危ねぇ、緑娘の影響で世界征服って言いそうになってしまった。
それでも、戦士ギルドもここのところ人員不足だそうで、掛け持ちでも参加はさせてくれた。
いいよ、俺は万年準会員でも。栄達したがっているその緑娘に手柄は全てくれてやろう。
「ではこの名簿に署名してもらおう」
そう言って、バーズは俺にギルドメンバーの名前が書かれている名簿を差し出してきた。
うむ、その辺り魔術師ギルドよりはしっかり管理しているようだな。
それとも、戦士ギルドは脳筋の集まりで物覚えがよくないので、メンバーリストを作って管理しているのか。
おそらく魔術師ギルドでは大学で管理していて、推薦状が届いた地点で人員名簿に加わっているのだろう。
「それじゃあここに書けばいいのだな」
「あっ、ちょっと待って、それダメ!」
名簿に目をやったところで、緑娘が慌てたような声を出して駆け寄ろうとしてきた。
何だ? やっぱり俺は加わらなくても良いというのか?
しかし緑娘が駆け寄るよりも早く、俺は一番下の新しい場所へと名前を書いた。
これでよし――、ん?
――――
戦士ギルド・新人名簿 第27期
アドリアン・アドニス
ダニー・スパイビー
シュバルツ・ネーベル
キラー・ブルックス
メアリ・ノートン
ワイルド・サモアン
アックス・デモリッション
テフラ・リサウィリス
ラムリーザ・フォレスター
――――
あ、この自分の名前のすぐ上に書かれている名前は――?
テフラ・リサウィリス? それでこの緑娘の名前なのか?
その名前について考えたとき、再び俺に強烈な頭痛が襲い掛かってきた。
「ぐ、ぐおごごご……」
「ちょっ、ちょっとラムリーザ?!」
「なんだ? どうしたんだ?」
「なんでもないの! 気にしないで――」
なんだかバーズと緑娘がやりあっているような声が聞こえていたが、その声もだんだん遠くなり……
………
……
…
薄れ行く意識の中、再び頭の中に何らかのイメージが浮かび上がった――
「ねぇラムリーザ」
「なんだいテフラ?」
「キスしてみよっか」
「ほぉ――」
今回のイメージは、前回見たのと同じ場所。ただし、緑娘が加わっていた――
「んっ、ラムリーザ、ラムリーザ……」
「テフラ、死が二人を分かつまでずっと一緒に居てあげるよ」
「あたし、うれしい」
何かを思い出したような気がした、しかしそれが何かわからない――
…
……
………
気がついたら、俺はベッドに寝かされていた。
窓の外は茜色、昼間中意識を失っていたわけか。
「あ、気がついた」
「ここは?」
「戦士ギルドの休憩室よ。えっと、何か思い出した?」
「えーと、テフラさん?」
「……さん付けはやめてよ、そんな他人行儀な」
「テフラ、死が二人を分かつまでずっと一緒に居てあげるよ……、か」
「えっ? その言葉?」
「妙に懐かしい場所、桃色の花びらの散る木の下で、君に似た娘にそんなこと言っている場面が浮かんだ」
「それ、あなたが言った言葉そのまんまよ? 思い出したのね!」
「まだ完璧にってわけじゃないけど、君が大切な人だったんだなってのは思い出したと思う」
「……うん、それでいいわ。少しずつ、思い出してね」
こうして、戦士ギルドの一員としての物語が始まった。
ギルドのベランダから二人で眺めるシェイディンハルの街並み。
この構図にも覚えがある。