ブルーマギルド再興 その一 ~アークメイジ最初の仕事~
ある日俺はラミナスに呼ばれて、まるで監獄のようなアークメイジ自室から外に出た。
いや、大学内なら自分も他のメンバーに混じって割りとうろうろしているんだけどね。
ジ=スカール先輩も一緒に呼ばれたらしく、先に集まっていた。
「こんにちは、アークメイジ。ブルーマの伯爵夫人からあなたへのメッセージがあります。ブルーマギルドに関するものだから、ジ=スカールにも集まってもらった」
ラミナスの話は、ブルーマ魔術師ギルドの支部を立て直すということだった。
それで、その伯爵夫人は直接俺と話し合うことを望んでいるそうだ。
やった、これで外に出られるよ!
「ジ=スカール先輩のギルドを再建できるかもしれませんよ!」
「うーん、妖蟲の王の脅威も去ったし、そろそろ戻ろうかなと考えていたところだ」
「早速ブルーマへ行きましょう! 行く! 行けば! 行く時!」
しばらくの間、閉塞感ハンパないアークメイジの部屋に閉じこもっていたせいか、テンション上がりまくりんぐの俺。
元々ブルーマギルドのメンバーだったジ=スカール先輩を連れて、再び世界へと羽ばたいていくのだった!
って大げさすぎ!
ブルーマの魔術師ギルドは、マニマルコの襲撃の際に壊滅させられてしまっていた。
マスターのジーンヌを始め、ジ=スカール以外のメンバーは皆殺しにされ、今残っているのは先輩だけだ。
ん~、アークメイジになった今も、先輩は先輩か、それもいいや。
ブルーマギルドは、最後に立ち寄ったときは燃え上がる炎に包まれていたが、今では鎮火していて落ち着いている。
遺体も片付けられているが、これからここを再建していくんだ。
早速ブルーマの城へと向かう。
城に行くのは逮捕された時以来だな……(。-`ω´-)
ブルーマの領主であるナリナ伯爵夫人は、俺と再会できたのを喜んでくれたが、ん、俺が城に来たのは逮捕された時だがよいのだろうか?
まぁそれは良いとして、伯爵夫人も魔術師ギルドで起こったことを悲しんでいるようで、再建に関してできるだけの援助をしてくれるというのだ。働き手や資材の費用は全て引き受けてくれるらしい。気前の良いこった。
まずは働き手を捜すということで、ノルドウィンド商店のオルファンドと話をしてみてはいかがと勧められた。
どうやら彼は、重労働に詳しい人を知っているらしい。
確かにギルドの人は皆魔術師だから、重労働は苦手だろう。ここは外部から人を雇うしかない。オークとか力が強そうだけどな。
というわけで、ここがブルーマの武器屋でもあるノルドウィンド商店だ。
なんか物乞いが「お恵みを~」とか言ってきたので、お金を渡してあげる。街の外に出て追い剥ぎするもよし、樽の中の物を売るもよし。数Gのが欲しいなら、樽漁りでも稼げるぞ、などと教えようかと思ったけどやめた。
早速オルファンドに会う。
すると、彼の兄であるタイターが、この仕事に丁度いいということを教えてくれた。
ジョン・タイターですか? 未来人ですか?
住んでいる場所は地図に印をつけてくれたからいいけど、狼には気をつけろと言ってきた。なんでも彼は、ウルフマンと呼ばれていて、彼の飼っている狼を傷つける奴を憎んでいるそうな。
大丈夫だと思う、なんかウルフマンと聞いても噛ませ犬みたいな印象しか受けないのは何故だろうか? 最近は勝ったみたいだけど。
そういうわけで、タイターに会いに行こうと店を出たところ、トルガンという人に突然呼び止められてしまった。
なんでもナリナ伯爵夫人が直接話したいことがあるそうだ。ギルドの話はさっき直接やったばかりなのになぁ?
なんか俸給の証としてお金を少し貰ったが、話が見えない。ギルド以外の話があるというのだろうか?
とりあえず後回しにして、タイターが住むというブルーマの南の方にあるという小さな掘っ立て小屋を目指すことにした。
えーと、ここから少し西に進んだところに居るらしいな。
こんな街道がしっかりできているのに、初めてコロールに向かったときは何故山奥の道を選んだのだろう。まぁ街道に熊やライオンが出る国だから、どっちでも関係ないけどね。
しばらく進むと、二匹の狼がまるで番でもしているような小屋にたどり着いた。
狼が相手でも魅了してしまえば怖くない。これで大人しくなるのだから楽な魔法だ。オーガにも今度使ってやろうかな?
「俺の狼に何をしているのだ?」
「おっと、ついでにあんたにも!」
狼の相手をしていると突然横から話しかけられたので、ついでに魅了しておく。
これで俺は、狼に変な魔法をかけている不審者から、狼をあやしている友好な者へと変身だ。
彼がタイター。オルファンドから話は聞いているそうだ、早いな。
俺の知らない高速通信方法でもあるのだろうか?
ブルーマギルドの再建について話しかけると、面白い冗談や話を知っていれば引き受けると言ってきた。
「何か面白い冗談はないかな?」
「そうだねぇ、こういうのはどうだろうか? 魚屋のおっさんが驚いた、魚っ(ぎょっ)!」
「うわーっはっはっはっ、あんたのギルドは五日で仕上げてみせよう!」
……こんなんでええのか、冗談のつもりだったんだけどな……(。-`ω´-)
そういうわけで、ギルドが建て直るまでしばらくの日数を要するらしい。
俺は、現場監督としてジ=スカール先輩を残すと、再びブルーマの城へと向かっていった。
なんか知らんけど、ギルドの話以外にも直接会って話がしたいとか言っているみたいだからな。
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