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第一話 ~序章~

 
 その男は牢に入れられていた。
 
 牢は薄暗く、男の表情には後悔の念が刻まれていた。
 

 
 どうしてこうなった……、という考えが頭をよぎる。
 
 そして全ての元凶はこの身体に流れる忌わしい血のせいだ、と……
 
 男は同胞団の一員であり、ウェアウルフだった。
 
 
~~~
 
 
 その力に目覚めた時は、戦うことが楽しくて仕方なかった。
 

 
 ウェアウルフの強靭な肉体から繰り広げられた力は、一撃で敵を吹き飛ばした。
 
 肉体だけではない。
 
 精神も高揚し、戦うことに対する迷いを打ち消していた。
 
「如何かしら、その力は」
 
 共に戦う女が言った。
 
 女の名前はアエラ、すべては彼女と出会った時に始まった。
 
 
~~~
 
 
 

 男は流れ者の戦士だった。
 
 旅人とも言い、冒険者とも言う。
 
 膝に矢を受けて旅が難しくなれば、どこかの街で衛兵にでもなって過ごしてもいい……
 
 そんなことも考えながら、剣の腕だけを頼りに生きていた。
 
 ある時ロリクステッドという村に向かうために、ホワイトランの農園を通りぬけようとしていた時だ。
 
 慌てた様子で駆けつけてきた農園の主に呼びとめられた。
 
「戦士様! うちの農場でジャイアントが!!」
 
 ジャイアント!
 
 本来なら大人しい性格で、ペットのマンモスが傷つけられない限り襲いかかってくることはないはずだが?
 

 
 農場を見ると、確かにジャイアントが迷い込んでいる。
 
「任せてください、追い払ってあげますよ」
 
 男はそう言うと、その両の手のひとつひとつに握り締められた双剣を、苦もなく軽々とふりかざし、ジャイアントへ立ち向かってゆく。
 
 それなりの勇猛さと正義感は持ち合わせいてるようだ。
 

 
 ジャイアントは男の姿を見つけると、雄たけびを上げ襲いかかってきた。
 
 何らかの影響で混乱してしまったとでも言うのか?
 
 だがその巨体から繰り広げられる一撃は、並の人間なら即死してしまう程の威力である。
 
 戦士として訓練してきた男でも、致命傷になりかねない一撃だ。
 
 だが、ジャイアントの動作は緩慢だ。
 
 
 男は、時に立ち向かい、時に廻りこみ、その素早い動きとしなやかな剣さばきでジャイアントを翻弄し、少しずつではあるが着実にダメージを与えていく。
 
 戦況はこちらに優位に働いてはいるが、ジャイアントのそのタフさゆえに、致命傷とはなっておらず、男にも若干の疲れが見え始めた。
 
 そのほんのちょっとの気の緩みが、思わぬミスを誘発してしまう。
 
「しまった!」
 
 だが、農場は足場が悪かった。
 
 作物に足を取られ、転倒してしまう。
 
 その隙をジャイアントは見逃さなかった。
 
 巨大な棍棒を振り上げ――
 
 男は死を覚悟したが、そこに冷静な自分が居た。
 
 ノルドの男は戦って死に、そして今日ソブンガルデに行く……
 
 それだけのことだ。
 光栄なことじゃないか、と……
 
 
「ウガッ?!」
 
 
 だが棍棒は振り下ろされなかった。
 
 ジャイアントを見ると、棍棒を持った腕に矢が刺さっている。
 
「援軍か?!」
 

 
 いつの間にか3人の戦士の一団が現れていた。
 
「イスミールの髭にかけて、命拾いしたようだ……」
 
 再び立ち上がり、新たに加わった一団と共にジャイアントに立ち向かう。
 
 そして程無くしてジャイアントの始末はできた。
 

 
 戦いが終わるとリーダー各の女が話しかけてきた。
 
「もう大丈夫」
 
「危ないところを忝い」
 
「真の戦士なら、巨人と戦う機会を楽しんだはず。あなたもそうでしょう?」
 
「まあな」
 
「だから盾の兄弟と一緒にここにいるのよ」
 
 盾の兄弟とは、男には初めて聞く言葉だ。
 
「よそ者ね? 『同胞団』のことは初耳?」
 
「同胞団?」
 
 
 
それがアエラ、そして同胞団との出会いだった。
 
 
 
 
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