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野蛮な世界だな!

 
 新しい朝が来た、たぶん希望の朝だと信じたい。

 とりあえずここがどこなのか知りたい。そのためには、この世界に生きる人と出会う必要がある。
 いや、まだ死後の世界と決め付けたわけではない。しかし、以前どこで何をしていたのか? 思い出そうとしても何も思い出せないのだ。
 
 誰か居ないのか?
 そう思いながら、昨夜泊まった塔を離れて少し進んでみる。
 ちょっと見ただけだと、木々や山肌はどこにでもあるようなものだ。ただ、人気が全然無い。
 周囲を観察しながら歩くこと数分、俺は遠くに何者かの気配を感じた。

 誰だかわからないけど、たぶんここの住民だと思われる人……
 人か? えっらく原始的な感じを受けるが、とにかくここで初めて出会った人物だ。
 言葉が通じるかどうかは不明だが、ひとまず挨拶してみよう。

「おはよう、ここはどこですかねぇ?」
 朝の挨拶はおはよう。これはどこも同じはず……
 いや、この世界では朝はこんばんは、かもしれないが、その時は笑って誤魔化そう。

「うがーっ!」
 ダイナミックな挨拶だな、両手を振り上げる挨拶なんて初めてだ。
 いや、この世界ではこれが礼儀なのかも。
 しかし「うがーっ!」ってなんだ? ほとんどうなり声じゃないか?
 とりあえず、郷に入れば郷に従えた。俺も倣って腕を振り上げ――

「げぼっ!」
 ――?!
 なっ、なんだ?! 突然殴られたぞ?!
 腕を振り上げたのは挨拶じゃなくて殴りつけるためだったのか?!
 あ、ひょっとして昨晩勝手に塔を使ったことを怒っているのか?
 よく見ると、相手の表情からは好意的な感じは全然見えない。どちらかと言えば、敵意丸出しだ。
「あっ、ちがっ、昨夜は勝手に――」

「――ぐわっ!」
 そ、そんなに怒ることないじゃないか!
 これはひょっとしてヤバい奴か? 最初に出会った人物がこんな奴だなんて?
 何故怒っているのかさっぱりわからんが、もう一度挨拶だ。話せばわかってくれる、はず!
「と、とにかくこんにちは! 俺の名前は――」

「――ぎゃあ!」
 だ、ダメだこいつ!
 話を全然聞いてくれねぇ!
 いや、ひょっとしたらやっぱりここは俺の知らない世界で、言葉が全然通じないのかもしれない。
 しかし何だよ、野蛮な世界だな! いきなり殴りかかることないじゃないか!

 ダメだこいつ、ここは逃げるしかない!
「なんだかよくわからないけどごめんなさい! ここはどこですか?! 君は誰ですか?!」
 逃げながらも声をかけてみる。自然と丁寧語になってしまう。とにかく怖ぇよ!
 しかし奴は、全然聞いてやいねぇ。やたらとうなり声をあげるだけで、そのぶっとい腕をブンブン振り回してきやがる。
 やっぱり危ねぇ奴だな! 何だよこいつは!

 岩陰に逃げ込んで息を潜める。
 奴はしばらくの間、うなり声をあげながら徘徊していたが、俺を見失ったのか次第に大人しくなっていった。

 さて、どうしたものか……
 話が通じないとなれば、これはどうしようもない。
 しかもだ、岩陰から顔を出して、奴と目が合った瞬間、奴は再びうなり声をあげて暴れ始めたのだ。
 岩の向こうから手を伸ばして殴りつけようとする、やっぱり野蛮な奴だな!
「お前何だよ! 名前ぐらい名乗ってみろよ! 何を怒っているんだよ!」
 どなりつけてみるが、態度は全然変わらねーな!
 話し合いができないのならば、この場から消してしまうしかない。

 あまりやりたくはないが、俺は実力行使に出ることにした。
 この魔法は、転移の術。
 相手を殺すわけではないが、どこか別の場所に転移させてしまうという、その場しのぎにもってこいの技なのだ。
 以前の記憶は消え去ってしまっているが、知識として覚えた分は残っているらしい。

 奴の背後に出来上がった空間の穴。
 その穴は奴を吸い込み――

 暴れまわる奴は、ひとまずはここから消し去った。
 
 これで一時凌ぎにしかならないけど、この場は一安心。
 もしも奴がこの世界の住人であれば、殺してしまうのはまずいと思うのだ。
 人にも野蛮なのや、温和なのが居るように、奴は狂ったような危ない奴なだけかもしれない。
 その内まともな奴に出会うことができれば、その時にいろいろと話を聞いてもらえばいいんだ。
 
 そう思いながら、俺はこの野蛮な世界からどう逃げ出せばいいのか考えていた。
 次に会う奴は、もっとまともな奴でありますように!
 
 
 
 
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