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ディメンシアの儀式 前編 ~打倒シル公爵!~

 
 翌朝、俺たちは再びサセラム・アルデン=スルの教会へと向かった。
 最初の予定ではマニアのセイドン公爵を蹴落とすつもりだったが、緑娘の策を聞いて作戦変更。
 ディメンシアのシル公爵を蹴落とすことに決めたのだ。
 

「んん? こんなものあったか?」
「無かったわ」
「この一晩で、模様替えしたのかな?」
 
 一夜明けてみると、教会にいつの間にか植木が設置されていた。
 周囲には蝶が舞っていたりする。
 蝶と言えば、この世界に入る直前、ハスキルの歓迎を受けた後に、部屋の壁が蝶化したっけな。
 戦慄の島と蝶とは、何やら密接な関係にあるのだろうか?
 
 

「というわけで、狂神よ」
「良く帰ってきたな。腹は決めたか? マニアか? ディメンシアか? それとも自決か?」
「自決と言う選択肢もあったのな。俺は一晩寝ずに考えに考え抜いてきた」
「嘘ばっかし」
「黙れ緑娘」
 
 こんなものは、劇的に言ってやればよいのだよ。
 誇大表現だって?
 そんなのこの世界にはお似合いじゃないか。
 
「決断の前に、ひとこと言わしてもらうおう」
「何ぞ?」
「どちらの後継者となるか決めたら、もう後戻りはできんぞ。後戻りしたくば、頭骨をえぐれい」
「ディメンシア公爵を継ぎます」
「ほーお、危険な選択を選んだな。だがどのみち奴は、度が過ぎている。そして誰もが打倒を考えておる。そなたなら知っておろう」
 
 そういえば、シル公爵の命を狙う者を探し出すために、最高尋問官に任命されたことがあったっけ。
 シル公爵も、後にまさかその最高尋問官に命を狙われるとは思わなかっただろう。
 
 
「これで良いのだな?」
「いいわぁ。あたしも全力であなたのバックアップするよ」
「聞こえましたぞ。シル公爵の跡継ぎになられるのですな」
 

 緑娘に結果を伝えると、そこに入ってきたのはディメンシア司祭のアークタスだ。
 
「よいことを教えましょう。シル公爵は、滅多に人前に現れず、使用人に日々の業務を行わせているそうな」
「使用人、アンヤとキスランか」
「キスランは、最近シル公爵に幻滅しているそうな」
「アンヤは?」
「いつになく公爵に忠実だ」
 
 ということは、キスラン辺りから味方に引き込んで――か。
 
 そんなわけで、教会を後にして、ニュー・シェオス宮殿にあるディメンシア屋敷へと向かった。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 

「ぬ、シル公爵は居ないな」
「チャンスよ、使用人を懐柔するのよ」
「反シルのキスランと、シル派のアンヤ両方居るなぁ」
「どうせなら同時に話してみれば? 混乱が起きて陽動になるかもよ」
 
 陽動作戦か。
 どちかん作戦か。
 

「お二方に問う。シル公爵に満足しておるか?」
 
 俺は、緑娘の助言通り、個別に話しかけるのではなく、その場で双方に尋ねてみた。
 まぁこの距離だと、個別に聞いたところでもう片方に筒抜けだというものもある。
 
「あの方と宮殿で働き続けることは光栄だ。だが絶えず後ろを見やるのはもう嫌だ」とキスラン。
「あの方は完全に身を隠されたわ。無駄な危険を冒さないためにね」とアンヤ。
 
「この俺が、シル公爵の後を継ぐと言えばどうする?」
 
 もしもこいつらがここで反抗してきても、こっちも二人+一匹だ。
 側近から始末するという、極めて野蛮な作戦も辞さぬ。
 戦慄の島の覇権を手にするため、どうせ片方の公爵は血にまみれる必要がある。
 そこに側近の血が加わったとろこで――って、俺は覇王の道を歩んでおるのか……(。-`ω´-)
 
「そうだな……、後釜としての条件を満たしているようだし」
「そうね……。マニアの炎という点が気に入りませんが、偉大なるかがり火を復活させたのは事実です」
 
 お、こいつらは意外と俺に好意的だ。
 そんなにもあのかがり火は重要だったわけか。
 
「我々に何をして欲しいと?」
「そうだな、シル公爵に近づけるよう協力して欲しい」
「それならこの鍵を差し上げよう。公爵の館なら、どの扉も開けられる」
「では私は警備の一部、そうね――二人ぐらいなら注意をそらすことができるわ」
「よろしい。早速始めよう」
 

 アンヤは警備の目を引き付けるために駆け出した。
 そして俺は、キスランから鍵を受け取って、その後を追うのであった。
 
 

「殿中~っ! 殿中ですよ~っ!」
 
 アンヤは、シル公爵の庭で叫びながら走っている。
 それに気がついた警備は、彼女の後を追うのであった。
 

「何事?! あっ、侵入者め!」
 
 しかし、アンヤの方へ向かわなかった衛兵も存在していた。
 二人ほどこちらに向かって駆けてくる。
 
「ここはあたしが引き受けるから、あなたはシル公爵の元へ急いで!」
「おう、任せたぞ。もう死ぬなよ」
「当たり前よ、二度と不覚は取らないわ!」
 

「そーらチロジャル行くぞ!」
 
 2~3人の敵など、本気を出した緑娘の敵じゃない。
 お得意の「いちにっさーんしっ」で弾き飛ばすのであった。
 その隙に、俺はチロジャルと共に、一気にシルの部屋へと向かう。
 部屋の入り口に鍵がかかっていたが、キスランから受け取った鍵を使えば問題ないのであった。
 
 

 シル公爵の寝室にて――
 
 奥にあるベッドで、公爵は寝ているようだ。
 アンヤが陽動作戦を実施してくれたおかげか、この私室には衛兵が一人も居なかった。
 

「よし、かかれチロジャル!」
 
 俺は、まずはチロジャルをけしかけて、シル公爵がひるんだ隙に特大の霊峰の指を放ってやることにした。
 しかし、チロジャルは動かない。
 寝ている公爵を、嗅ぎまわっているだけだ。
 そして公爵も、起きてくる気配はない……
 
「ん? これは……?」
 
 そう、シル公爵は既に死んでいた。
 セイドン公爵とはしゃぎ過ぎて、無理なポーズが祟ってポクリと逝ってしまわれたのか?
 つまり、あとはこいつから心臓を取り出してやれば、ディメンシアにおける継承の儀式を進められるということだな。
 思ったよりも、あっけない幕切れだったな。
 
「騙されるな! 儀式はまだ終わっていない!」
 
 俺がシル公爵の身体へ手を伸ばそうとした時、背後から突然話しかけられ驚く。
 

「なんだキスランか、驚かすなよ。シル公爵は既に死んでいたぞ」
「違う! その死体はシルではない、ただの影武者だ。本物のシルは、庭にある隠し通路を通って逃げたのだ!」
「そうか、話が簡単すぎるのと、罠ではないかなと思っていたところだ。助言感謝する」
「気をつけろよ。彼女が逃げたのは、あんたを奇襲するための策かもしれない」
「奇襲だと? これがもしも罠ならば――」
 
 その時俺は嫌な予感がした。
 俺の経験で、奇襲攻撃を食らったとき、何が起こったか?!
 
「いかん! 緑娘が!」
 
 俺は、急いで庭へと駆け出した!

 続く――
 
 
 
 
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