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アグノンの冷たき炎 その6 ~ニュー・シェオスの大灯台~

 
 いろいろと寄り道をしたが、ようやくアグノンの炎をニュー・シェオスへと持ち帰った。
 

 向かうは、ニュー・シェオスの教会。
 ここだけは、マニア派とディメンシア派双方の司祭が勤めていて、いわゆる中立地帯のようになっているのだ。
 高台を見ると、今は炎が灯されていない。
 ここでの行動で、偉大なるかがり火が復活するはずなのだ。
 
「ややっ、これはシェオゴラスの使者殿」
「なんぞ、ウンゴルの物乞い」
「これはアグノンの聖なる炎! ニュー・シェオスの偉大なるかがり火を灯すために戻ってきたんだ!」
「なんか引っかかるな、この台詞……(。-`ω´-)」
 
 どこかで聞いたことがあるような気がするのは、気のせいだろうか?
 ひょっとしてまた住民が同じことを言っている現象が発生してないか?
 

 気にしても仕方がないので、さっさと教会に入る。
 そこでは、二人の司祭が俺の帰りを待っていたのだ。
 
「もたらされた! 聖なるアグノンの炎を、閃きと歓喜の炎を!」
「ああっ! 真実の炎、絶望の淵に揺らめくかがり火、アグノンの炎で燃え上がっている!」
「ステレオで騒ぐな、落ち着け」
 
 マニア側の司祭ダーヴェニンと、ディメンシア側の司祭アークタスは、口々に俺の帰りを褒め称えるのだ。
 ここまで喜ばれると、どちらか一方を選ばねばならぬのが辛いではないか……
 
「この礼拝堂のマニア側に偉大なるかがり火を灯せば、あなたはブリスの民の英雄ですよ! 保証します!」
「さあ、ディメンシア偉大なるかがり火を灯すのです。陰謀を照らすため! 影を深めるため! クルーシブルの民は、英雄をお待ちです!」
「ぬぅ、半分こはできん?」
「「できません!」」
 
 これって、どちらかの英雄にしかなれないってことだよな。
 
「考えは無用です、夢を見なさい! 想像の翼を羽ばたかせるのです! 正しい決断を待ってますよ!」
「心を悩みで病ませなさいる。決断に対する恐れと不安が、脳へ深くかぎ爪を残しましょう!」
 
 しかし迷っても仕方がない。
 どちらかしか選べないのなら、俺にとってベターな方を選ぶだけだ。
 そして俺は、陰気なディメンシアよりも、陽気なマニアを選ぶのである。
 
「ではマニアでよろしく」
「おおっ! あなたの瞳から真のマニアの輝きが見て取れました! さあ、聖なる炎でブリスの民をさらなる狂気の高みに誘うのです!」
「なんてことでしょう……。あなたの判断には失望しました……。マニアの浮気性を思い知ることですな!」
 
 当然ながら、ダーヴェニンには喜ばれるが、アークタスには失望されるハメになるのだ。
 しかし仕方が無かろう。
 炎の色的にはディメンシアだが、俺はそちらの考え方には賛同できないのだ。
 
「しかし浮気性ってのが気になるな」
「何よ! どうせあなたはランズ=イン=サークルに浮気するんでしょ!」
「お前はあのアルゴニーニーアンに寝取られる危険性を感じておるのな……(。-`ω´-)」
 
 思った通り、浮気と言う言葉に緑娘が噛みついてきた。
 確かによく話はしているが、向こうから勝手に話しかけてくるのだから仕方ないじゃないか……
 
「それで、どうすればいいのかな?」
「そちらのサークルに向かってください」
 

 礼拝堂の右奥が開き、そこにサークルが現れた。
 サイラーンの砦にもあった、火の灯っていない祭壇だ。
 
「しかし引っかかることがあるのだが……」
「そうでしょう。祭壇は人身供養によってのみ灯せることができるのです」
「やはりな……(。-`ω´-)」
 
 サイラーンの砦では、司令官のカナーが名誉の犠牲になることで、絶望の祭壇に火を灯せた。
 つまりここでは、俺が名誉の犠牲を遂げる――と。
 
「――というのは嘘です。安心して祭壇に進みなされ」
「…………(。-`ω´-)」
 
 これがマニア式ジョークか!
 なんなら俺の炎をダーヴェニンに移して、彼を祭壇に投げ込んでもよいのだぞ。
 
 

 ――てなわけで、祭壇に進むと体に纏っていた炎が消え、代わりに祭壇にかがり火が灯ったのであった。
 
「生きてるわね」
「よく考えたら、無から灯すのではなく、炎を移動させるだけだから、そこに代償とか発生しないわな」
「素晴らしい! 偉大なるかがり火が、マニアの汚れなき光で輝いています!」
「いや、マニアという地点で、既にいろいろと汚れていると思うけどにーにーにー」
「古のしきたりに従い、マニアに対する多大なる貢献の証として、アルデン=スルの装束を授けましょう」
「忝い」
 
 アルデン=スルとは何か? と思ったが、どうやらこの教会の名前がサセラム・アルデン=スルという名前らしい。
 それだと、ディメンシア側についたら、サセラムの装束でもくれたのかな?
 

「さっそく身に着けてみたが、どうだ?」
「貴族みたい」
「お、割と普通だな。よし、この衣装採用」
「ちょっと待って。壁怖い症候群の、アミアブルみたい。元暗殺者のオーリンサルみたい。」
「つまり、ブリス地区の普段着かよ……(。-`ω´-)」
 
 ということは、ディメンシア側だと、クルーシブル地区の普段着か。
 あまりありがたくないような気がしてきた……。
 
 まあよい。
 
 当面はマニア派として動くわけだから、この格好に馴染んでおくのも悪くない。
 一応貴族みたいと言ってくれたし、蜂とかワラジムシとか、ロビンなんとかっていうわけわからん奴でもなさそうだからね。
 

 こうして、ニュー・シェオスには再び偉大なるかがり火が灯ったのである。
 貴族の服とかそんなものはどうでもよい。
 たとえば王族っぽい恰好をして、王室に入り込むとかそんな行為が必要になれば役に立つかもしれんが、大臣に偽物だと言って追い出されてしまうだろう。
 あいつはずるいからな。本物の王子なら妹の名前を知っているはずだと言い、名前はターニアだと答えたら正解はセーラと言い、セーラと答えたら正解をクラリスにするからな。
 
 
 パチパチパチ――
 
 その時、礼拝堂の席から、拍手の音が聞こえてきた。
 

 誰かと思えば――、シェオゴラス?!
 
 
 
 
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