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偏執の貴婦人 前編 ~奴の顔がちらつくが?~

 
 さて、シェオゴラスにこの世界について学ぶよう、二人の公爵を訪ねよ、そして二人の望みを叶えよと命じられた。
 マニア地方の公爵セイドンと、ディメンシア地方の公爵シルの二人だ。
 二人に会うと、シュー・シェオスが何たるかを思い知るというが……、別に驚くことはないはずだ。
 
 どちらから訪ねてもかまわぬが、クルーシブル地区に行く予定もあるので、まずはシル公爵の方から会うことにした。
 

「こんにちは。いや、こんばんは」
「何言い寄ってきてるの? 死にたいの?」
「根暗おばさんだなぁ――あーいやいや! シェオゴラスからの託ですよ!」
「狂神の使い? それなら大丈夫ね。指定した相手以外とはしゃべらないように」
 
 一瞬いらんことを言いかけた――というか言ってしまったが、シェオゴラスの名を語るとこちらのことを信用したようだ。
 なんだよ?
 じじいの名は、免罪符にでもなるのか?
 
 
 シルの話では、誰も信用できなくなったとのことだ。
 周囲が裏切りやスパイでいっぱいで、いつも監視されているのだと言う。
 どうやらそのスパイは、いつでも彼女にナイフを突き立てる機会をうかがっているのだとか。
 
「誰がそんなことを?」
「みんなです。誰も信用できない……」
「不信の時代とも言うからな。ま、せいぜい神でも信じることだ」
 
 一応彼女は、シェオゴラスを神だと認識している。
 だがこの時俺は、ちょっとした既視感というか、嫌な予感を覚えたのであった。
 
「うん、あなたが一番頼りになりそう。あなたの力でなんとかしてください」
「――で、何をすれば?」
「反逆を企てる者を探すのです。そうですね、あなたを最高尋問官に任命します。黒幕を暴いて、罰を与えるのよ。秘密を握る者の正体を突き止めなさい!」
「尋問官って、罰を与えるって何? そもそもそんな反逆など?」
「ハーディルと話しなさい。もしも誰も見つからなければ、あなたの責任です」
「なんでやねん」
 
 このおばさん、パラノイアじゃね?
 

「あっ……(。-`ω´-)」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない……」
 
 嫌な奴の顔が一瞬フラッシュバックしたような気がして身震いする。
 かつて居ただろう?
 自分が人々に監視されていると妄想という偏執というかして、俺に妙な仕事を依頼した奴が。
 そいつのせいで、種族そのものに偏見を持ってしまう原因となった奴が。
 お前だよ、スキングラードの――
 
 
 とまぁシルの妄想かどうかは、調査を進めていく中で判断すればよい。
 もしもただのシルの妄想で、最終的に俺に殺しを依頼してきたら――
 
 その時は誰に報告したらいいのか?
 最高幹部の公爵が狂っていたら、誰が正すのか?
 
 
 いや、ここは狂気の世界。
 それが正しい姿なのかもしれんな……(。-`ω´-)
 
 

「こら、牢屋の番人ハーディル」
「なんでしょう? ディメンシア屋敷の娯楽室へようこそ」
「こいつも狂ってたか……」
 
 少なくとも牢獄を娯楽室だと抜かすやつとは、仲良くなりたくないねー。
 しかしこの際仕方ない、仕事だと割り切って付き合ってやろう。
 
 俺は、シル公爵から最高尋問官に任命されたことを伝えた。
 そして、ハーディルから何をすべきか尋ねたのであった。
 
「簡単なことだ。クルーシブル中を調査して、裏切り者を洗い出すのさ」
「裏切り者って、本当に居ると思っているのか?」
「調べてみないとわからんだろう。さしあたり側近から聞き込みを始めるぞ」
 
 

 そんなわけで、手始めに側近の一人であるアンヤから当たることにした。
 
「もしもし、シル公爵が陰謀とか言ってますが、何か知ってますか?」
「陰謀の事は何も知らない!」
「そんなに強く否定すると、怪しいですぞ?」
 
 俺は、ハーディルを見て尋ねた。
 
「この場合どうすれば?」
「私に命じれば、拷問して吐かせますよ、最高尋問官殿」
「ん~、よくわからんが、拷問してみてん」
「わかりました」
 

 次の瞬間、ハーディルはアンヤめがけて雷撃を放ったのだ。
 霊峰の指か? 俺がやると、アンヤ殺してしまうぞ?
 
「やっ、やめてっ! 私は仲間じゃない! 何もしていないわ! シル様の側に通すよう頼まれただけ!」
「仲間って、マジで陰謀が起きているのか?! 仲間って誰だ?」
「マ=ザーダよ! 他の誰かの代理人なの! 協力しないと大変なことになるぞって脅されたのよ!」
「誰だそいつは? 協力って何?」
「シル様を排除する必要があるって言ってきたのよ! シル様を裏切りたくないけど、監視されているかもしれないから……」
「ん~……」
「お願い! 何とかして!」
 
 これはいったいどういうことか?
 以前の偏執病では、個人が騒いでいるだけだった。
 しかし今回は、公爵だけでなく、側近も監視されていると言う。
 
 これは本物か?
 それとも、集団で俺をかつごうとしているのか?
 
 
「とりあえず、マ=ザーダって奴を当たる必要がありそうだな。名前からしてカジートっぽいが、ハーディルは知っているか?」
「マ=ザーダですか。クルーシブル地区に住んでますな。早速向かいましょう」
 
 俺の想定通り、クルーシブルへ向かうこととなった。
 調査が長引くようなら、病弱バーニスの酒場で休むのもありだし、その時に奇跡の水をついでに届けてやるのもありだ。
 それに、珍品博物館やなんでも屋にも用があるからね。あと、カッターの鍛冶屋にも。
 
 
 

「ほれ、ここがマ=ザーダの家だ」
「ん、鍵がかかっる。不壊のピックでちょちょいのちょい」
 
 実際はちょちょいのちょいではないが、壊れないのだから何度でもやり直し可能だからね。
 
 

 さて、俺の予想通り、マ=ザーダはカジートだった。
 そんな名前をしがちなのだよね、ジ=スカール先輩とか、ボーダーウォッチのシャーマンであるリ=バッサとか、ス=ドラッサとか。
 まず一文字あって、それから名前につながるのがカジートの特徴だ。
 ビーシャみたいな例外も居るけど、例外以外は基本的に当てはまる。
 あと特徴を挙げるとすると、一人称が名前なところかな。
 
「こらっ、陰謀とは何か?」
「そんなことよりも、全部無くしちまったんだ! あんた、何か見なかったか?」
「何を無くした? 金塊か?」
「違う、マ=ザーダの物だ。マ=ザーダは、返して欲しいと思っているだけだ。他の奴らは盗みの口実だと言うけどな」
「盗んだ奴は、たぶんブライサールだよ。それよりも、陰謀について答えろっ!」
「マ=ザーダは陰謀など知らない」
「ハーディルさん、懲らしめてやりなさい」
 

 なんかニヤニヤが止まらんね。
 この雷撃がどれだけ痛いのかわからんが、これがディメンシアのやり方か。
 そういえばゼディリアンの罠でも、マニアの考えが精神的攻撃に対して、ディメンシアの考えは肉体的攻撃だったね。
 
「ふんっ、好きなだけ痛めつけるがいいさ。だが陰謀の証拠が見つからない限り、マ=ザーダは何もしゃべらない」
「懲らしめが足りないようだな。ハーディルさん、もう一発やってみようか?」
 
 ずどーん――
 
「ふんっ、こんな拷問、マ=ザーダは何とも思わない」
 
 これは、ハーディルの雷撃が弱いのか?
 しかし俺がやると霊峰の指になって、殺してしまうからなぁ。
 加減が難しいとはこのことだ。
 
 
 俺たちは、一旦マ=ザーダの事は諦めて、他を当たることにしたのだった。
 
 
 中編に続く――
 
 
 
 
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