適材適所 ~カジートのイタズラ再び 災厄を引き起こす者再び~
シェオゴラスの指示で、ゼディリアンへと向かう旅が続いている。
その途中で、村らしき場所を見つけたりした。
特に立ち寄る必要は無いけど、いずれは俺の臣民となる人々が住む集落だ。
ちょっと覗いていってもいいだろう。
村の入り口で、レランという者に会ったりする。
彼は、村で害虫駆除の仕事をしているらしい。
確かに村の中にある水辺には、椅子のような植物がたくさん生えている。これは、水浸しのキャンプで見た物と同じだね。
「もっと歯があればなぁ。こっちが食われる前に、あっちを食ってやるんだ」
「こっちが食われる恐れのある害虫が付くのな……(。-`ω´-)」
戦慄の島では、農民も命がけらしい。
村へと続く橋で、今度はシンダンウェという者に会った。
彼女はこの農場の主であり、住民を使ってウォータールートという植物を育てているそうな。
つまり、この椅子みたいな植物は、ウォータールートという名前のようである。
しかし気になるのは、彼女の後をつけているどろぼうさんみたいなカジートだ。
「こらっ、お前怪しいぞ」
「ラナル・ジョーを助けてくれるのか? でも君はグルかもしれないので信用できない……」
「誰とグルだって?」
「あの女だよ。みんなを洗脳して――おっと、口が滑ったか?」
「なんだか問題が起きているみたいだな。何かしてやろうか?」
「ラナル・ジョーのキシャーシと話せ。彼女が信用するなら、ラナル・ジョーも君を信用しよう」
別にカジートを助けてあげる義理は無いが、ちょっとだけ顔を突っ込んでやろうか。
ラナル・ジョーはシンダンウェの召使のような者で、常に彼女に付いて回っているようだ。
とりあえずのこっそり歩きを止めろ、怪しいだけだぞ。
キシャーシとは誰ぞ? ――と思ったが、この村には農場主とカジート二人、そしてさっきの害虫駆除役しか住んでいないらしい。
ラナル・ジョーがシンダンウェと一緒にうろついていて、害虫駆除レランが村の外をうろついているということは、実質働き手はこのキシャーシだけか。
「私はキシャーシ、フェルムーアはキシャーシの所有物です。キシャーシを女王と呼ぶ人も居るのよ」
「話が見えんぞ……(。-`ω´-)」
えーと、フェルムーアの農場主はシンダンウェだよな?
そしてこのキシャーシは、フェルムーアの所有者で、女王と呼ばれているらしい。
どっちかが嘘をついているな?
いや、カジートだからと言って、最初から疑ってかかるのは差別だからな。
ここはじっくりと話を聞いて、真実を見つけ出そう。
「シンダンウェが農場主と聞きましたが?」
「そうなのよ! 他の者はみんなシンダンウェが主だと言う! 嘘吐き共めっ!」
「お前が嘘つきだ……(。-`ω´-)」
やっぱりカジートダメだよ先輩……
どうしてこんな困ったちゃんだらけなのだね?
キシャーシの話では、自分は女王であり、戦慄の島の正当なる支配者だという。
嘘つきだけでなく、誇大妄想狂でもあったわけか……
女王なのに、毎日5つのウォータールートの種子を集めなければならないと不満を口にしている。
たった5つで良いのか。一人で充分な仕事だな。
「ラナル・ジョーから話を聞いたのだが?」
「彼の言いつけなの? でも仕事を手伝ってくれなきゃ話聞いてあげない」
「はいはい」
ウォータールートから種子を集めるだけの、簡単なお仕事です。
ただ、一つの株から一つしか手に入らないので、5つの株を探らなければならない。
「ほらっ、種子5つだぞ」
「ほんと、よくやったわ。えっと、ラナル・ジョーは戦慄の島の王なのよ。シェオゴラスよりも前にね!」
「ジーク・カイザー、ラナル・ジョー! ホーフ・カイザーリン、キシャーシ!」
信頼を得るために、話を合わせてやっているだけだからな。
本当にこいつらが支配者だとは思っていないので、念のため。
「で、ラナル・ジョーの件だが」
「はい、貴方を信用しましょう。このスプーンを渡せば、彼もわかってくれるでしょう」
「フォークじゃないのか、残念。戦慄のスプーンですかな?」
「昔、そのスプーンでミノタウロスを退治したことがあるのよ。それは、強力なデイドラの遺物なの!」
「すごいですね!!」
話を合わせてやっているだけだから、念のため。
フォークならともかく、こんな小さなスプーンでどうやってミノタウロスを退治したのか、状況再現でもやってもらいたいものだ。
俺の知っている遺物に近いスプーンと言えば、身体が突然小さくなってしまうおばさんのことだが、はて、それは何だっけか?
りんごの森の子猫たちに聞けば、思い出せるかな?
とりあえずキシャーシの信頼は得られたので、ラナル・ジョーの元へと向かう。
「こら、王様!」
「王様? キシャーシから話を聞いたな」
「このスプーンでミノタウロスを退治したのだってな、すごいぞ王様!」
「おおっ、彼女も信用してくれたか。ではラナル・ジョーも信用しよう。シンダンウェの悪を阻止するんだ」
「どうやって?」
「奴の家に忍び込んで、無茶苦茶にしてやれ。奴は整然とされているのが好きだからな。そして奴のノートを奪い取るんだ」
「ほーお」
しかし、こいつらの話を進めていって大丈夫か?
結局のところ、シンダンウェがトップに居るのが認められないので、イタズラして困らせてやろうということだろ?
……ん?(。-`ω´-)
なんか既視感を感じるぞ?
頭の女である農場主が気に入らないから、家でイタズラをして、さらにノートを奪わせて困らせたい。
頭の女であるギルドマスターが気に入らないので、姿を消して困らせて、さらに魔術の手引きを奪わせて困らせたい。
どこの世界でも、カジートのやることは同じなのだなぁ……(遠い目)
なんだかこいつらに親近感を感じたので、依頼を遂行してやることにした。
ジ・スカール先輩、スタークの島で金塊に埋もれて元気にしているかな?
ちなみにこの後、シンダンウェと話をしてノートの話をしてみたら、ちょっとだけなら見てもいいと貸してくれた。
やっぱりこっちの方がまともな人じゃないか、ごめんねシンダンウェ。
ノートの内容は、日記と言うか詩というか、あまり重要な内容では無かったりする。
「こら王様! ノート取ってきてやったぞ」
「ダメだ。まだシンダンウェの家を荒らしていない。ノートよりも、むしろそっちの方が重要だ」
「まったくこのイタズラ小僧共は……」
仕方がないので、緑娘に家の前で見張りをしてもらい、その隙に俺は忍び込んで荒らすことにした。
俺も同じ手しか使わないな。
これって、どろぼうさんをする時の手口じゃないか……
シンダンウェの家では、机目がけて元祖霊峰の指を放ったりする。
圧縮した改良版と違い、この元祖版は威力よりも拡散力の方が強いのだ。
この一発で、テーブルや棚の上にあった食器や食料、飲み物などは宙に舞うのであった。
ほんとごめんよ、シンダンウェ。
でも、荒れた家なら元通りにできるのだから、辛抱してくれ。
別に誰かを暗殺するわけでも、所有物を盗んだりするわけではないのだからな。
しかし、俺のやっていることに、何の意味があるのだ?
いや、シンダンウェを困らせたいだけだったな……(。-`ω´-)
「こら王様! シンダンウェの家は無茶苦茶だぞ」
「よくやった! これで奴は元に戻すのに、数ヶ月もかかるだろう。これはお礼だ、もう奴の邪悪な洗脳魔法を防ぐ必要は無いからな」
「このノートは?」
「どれどれ? やっぱり奴はラナル・ジョーを抹殺することを企んでいたんだな」
「そんなこと、どこにも書いていない……(。-`ω´-)」
ダメだこいつ。
イタズラ小僧だったジ・スカール先輩じゃない。
こいつ、グラアシア成分をかなり含んでいる……
「ほらほらさあさあ、誰かに見つかる前に立ち去るんだ」
「勝手にしろ、俺はもう知らん!」
戦慄の島、奇妙な人が数多く生息する狂気の世界――
自分を王様や王妃だと思い込んでいるカジート。
シンダンウェのようにまともな思考を持った人間は、迷惑を被るばかり。
そして俺は、奇妙な人に言われるままに、村に災厄を引き起こす役目を引き受ける。
……ん?(。-`ω´-)
これもなんかすっげー既視感を感じるな!
あと、念のために様子を見に戻ってみたが――