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九大神修道院 ~聖騎士のキュイラス~

 
 九大神の修道院にて――
 

 先程の遺跡探索中に見つけたアミエル卿の手記を改めて読んでみたところ、九大神修道院について書かれていたのだ。
 手記にはさらに、指輪を使って地下室に入れとも書いてあった。
 そこで、九大神修道院へとやってきたわけだ。
 

 この場所は知っている。
 なぜなら、この修道院から少し東へ行った場所に、リリィさんの隠れ住んでいた家があったからだ。
 何度かリリィさんを訪ねた時、その都度素通りしていたので場所は覚えていた。
 

 初めて入る修道院の中は、もう何十年も人が住んでいた気配もないぐらい荒れ果てていた。
 だが手記には、封印された地下室だけは無傷のまま残っているだろうと書いてあった。
 そこで、地下室への入り口を探すことにしたのだ。
 

 それらしき物は、あっさりと見つかった。
 この魔方陣らしき模様以外には、めぼしい物は何も無い。
 手記によれば、ここで指輪を使えばよいとあった。魔方陣の中央には、確かに何かをはめ込むような窪みがついている。
 
 俺は、アミエル卿の遺骨の傍に落ちていた指輪を手に取ると、魔方陣の中央へと押し当ててみた。
 

「おっ、地下へと通じる道が開いたぞ」
「この奥に、キュイラスが隠されているんだよね」
「手記ではそうなっているが、荒らされてなければな」
 
 俺は、マシウと共に地下へと降りていった。
 

 そこは、戦士ギルドの地下室で見たような間取りだった。
 鍛冶台があって、奥に訓練場。どこかで見たような気がするのだよなぁ……
 

 だがさらに奥へと通じる扉だけは、戦士ギルドでは見かけなかった、と思う。
 それほど戦士ギルドに入り浸っていたわけじゃないからわからない。
 俺のホームタウンは、魔術師大学だったからね。
 
『一人ずつ参れ』
 
 俺が扉に手をかけたとき、確かにそう聞こえた。
 
「何か言ったか?」
「いえ、何も言ってません。でも……」
「でも何だ?」
「一人ずつ参れと聞こえました」
「ふむ……」
 
 これは罠か?
 俺達を分断しようと言うのか?
 まあいいか、そういうなら乗っかってやろう。
 別に俺は一人でもやっていけるからな。
 
 俺はマシウに「先に行ってくる」と告げて、一人で奥へと進んでみた。
 
 

 地下二階は、結構立派な場所だった。
 中央に一階で見た魔方陣のようなものがあり、それを囲むように壁際に遺体が安置されていた。
 ここは地下墓所のような場所だろうか?
 
「ナインのお力とお導きにより、聖戦士のキュイラスを求めてこの聖なる場所に至り、我々の前に現れし者は誰ぞ?」
 

 突如空間に声が響き渡ったかと思うと、俺は八人の霊体に囲まれていた。
 霊体はみな同じ格好で、衛兵のような――騎士と言ってあげるべきか?
 正面には鎧が飾られている。霊体の言うとおりならば、あれが聖騎士のキュイラスなのだろう。
 俺が黙ったままで居ると、正面の霊体はさらに言葉を続けてきた。
 
「冒険者よ、前に進み我ら全員と一騎打ちをするのだ。誓いを生きて果たせなかったゆえ、我等は死してなおさまよい続けておる」
 
 どんどん勝手に話が進んでいく。
 どうやら俺が騎士として相応しいか、その実力を計ろうというのだろう。
 とりあえずこいつらは、サンクレ・トールの遺跡に残っていたブレイズの霊体みたいなものだろう。
 何かの理由で成仏できないのなら、俺が力を貸してやろうではないか。
 

 そして騎士のうち一人が、俺に挑んできた。
 九大神の騎士、ナイツ・オブ・ザ・ナインの許しなくして、価値無き者が聖なる遺物に触れることは決して許されないようだ。
 

 問題は、俺は騎士ではなくて魔導師だということだ。
 こいつらは、俺と正々堂々一騎打ちで剣の腕を試したいのだろうが、申し訳ない、俺はこっちが本職なのだ。
 お前は魔導師だ、騎士ではないと言われればそれまでだが、そうなるなら改めて剣で戦ってやろう。
 
「グレゴリー卿、あなたは打ち負かされた。カシミール卿、前に出よ」
 
 どうやら認められたようだ。
 魔術での戦いも、騎士道にのっとった戦いとなるらしい。
 

「うおっ?!」
 
 突然反対側から襲い掛かってこられて戸惑う。
 こいつら一応名前があるようだが、俺にはそんなのわからないし、霊体だから全員同じにしか見えない。
 正々堂々と戦うのならちゃんと名乗ってからにしろよ、不意打ちは騎士道精神に反しないのか?
 

 なんとか体勢を整えて、マグマ・ストリーム一閃。
 不意打ちばかりしてくるのなら、こちらも全体攻撃ぶちかまして一発で全員やつけるぞ!
 
「面白い。そなたはカシミール卿を打ち負かした。次はラルヴァス卿と勝負したまえ」
「待て、不意打ちはいいのか? 俺はそっちが誰だかわからん。せめて名乗ってから挑んで来い」
 
 別に不意打ちされてもかまわんが、めんどくさいので注文をつけることにした。
 切られたら痛いからな。かといって防御力に極振りするような歪なパラメータは趣味じゃない。
 

 とりあえず戦い終わった奴は膝をついているようなので、そいつの前で待機する。
 これなら誰が襲い掛かってきても、すぐに対応できる。
 
「三番手、ラルヴァス卿いきます!」
 
 すると、左中央の霊体が、こちらへと向かってきた。
 名乗られても口が動いているのが見えるわけではないので、方角がわかる程度。
 でも動きがわかれば、ここから一発ぶち込むだけだ。
 
「グオゴゴゴ!」
「霊峰の指!」
「ギャアーッ!」
「ラルヴァス卿、そなたの負けだ。後ろに下がり、勝負を見届けたまえ。ヘンリック卿、前に出て実力を見せてくれ」
 
 俺はこの時、なぜ聖騎士団が滅びたのかわかったような気がした。
 こいつら、弱い――
 
「そなたは我々の半数に打ち勝った上に、まだ自らの足で立っている。恐らくカイアス卿がそなたの真の熱意を試してくれるだろう」
「四番手、カイアス卿いきます! グオゴゴゴ!」
「フリーズ・レイ!」
「ギャアーッ!」
「そなたほどの猛し信仰の持ち主を見たのは、この数百年で初めてだ。だが、次はジャンカン卿と勝負だ」
 
 これは何の茶番劇だろうか?
 まず猛し信仰の持ち主ではない。言うならば、猛し魔力の持ち主の間違いだろう。
 信仰心で強くなるのはプリーストだが、俺はソーサラーだ。
 そしてこの強さが、数百年で初めてだと言う点だ。
 これは聖騎士団が弱いだけのような気がする。たぶんこいつら、マニマルコやナイト・マザーに勝てない。
 それともこいつらが普通で、俺が強すぎるのだろうか……
 
「そなたの負けだ、ジャンカン卿。トロロフ卿よ、挑戦者に北方人の蛮勇を思い知らせてやりたまえ」
 
 おそらくウマリルという奴は、弱い。
 この時俺は思った。マシウを育成してやろうかと。
 ひょんなことから同盟を結ぶこととなったマシウだが、実力はどのくらいかわからない。
 一応遺跡で骨やリッチと戦える程の実力はあるのだろうが、そこまでは普通の冒険者ならありうる力だ。
 ここはマシウを焚きつけて彼を聖騎士とし、ウマリルに彼をぶつけてみようか。
 
「グオ(ry」
「そなたは九大神の騎士団に挑み、生き残った。しかしながら、最後の試練が残っている。覚悟せよ、私と勝負だ」
 

 周囲に居た七人の聖騎士を退治したら、最後に挑んできたのは正面に待ち構えていたアミエル卿。
 
 ん? アミエル卿?
 あの手記を書いた本人じゃないか。
 リーダー自らが、聖騎士の遺物を探しに行ったということか?
 ということは、こいつらは聖騎士ではなくて、聖騎士の卵。つまり資格があるだけの、ちょっと戦える凡人ってところか。
 そういえば手記には、アミエル卿が若い頃にカイアス卿とトロロフ卿と共にキュイラス探索に向かったと書いていた。
 九大神の騎士団とは聖騎士ではなく、聖騎士の遺物を探している者達のことであった!(驚愕の事実)
 
 まぁ凡人相手だから、俺が無双するのも無理は無いか……(。-`ω´-)
 

 そんなわけで、ホーリー・ストリーム一閃。霊体により効果がある一撃となる。
 そんなわけでそんなわけで、八人の遺物探索者を一気に返り討ちにしたのであった。
 
「騎士よ、この300年の間、我らに挑み、生き残った者は皆無であった。前に進み、そなたの正当なる権利を行使したまえ。そなたの信仰に迷いの無きことを」
 

 こうして俺は、聖騎士のキュイラスを手に入れることとなった。
 
「そうだ騎士よ。聖騎士を目指す者はもう一人居たな?」
「マシウのことか? 俺はむしろ彼を聖騎士に仕立て上げたいが」
「実は丁度聖騎士のキュイラスは二つあるのだ」
「都合がいい話だな」
「彼を呼んできなさい。彼にも同じ試練を課すこととしよう」
「わかった」
 
 俺は、一つ目の聖騎士のキュイラスを手に取ると、地下二階の広間から出て行った。
 
 
「どうでしたか?」
「サクッと返り討ちにしてきたぞ」
「わぁ、さすがシロディールの英雄にしてアークメイジのラムさんですね」
「今度はお前の番だぞ」
「えっ、僕ですか?」
「俺は魔導師だ。より聖騎士のイメージに近づけるのはお前なのだがなぁ」
「僕にできるでしょうか?」
「そうだな――」
 

 俺は、闇の一党に潜入するときにリリィさんから頂いた魔剣を取り出した。
 この奥に居るのは霊体だ。
 銀製以上の武器か、魔力を帯びた武器しか通用しない。
 
「お前にこの魔剣を授ける。この剣を使って、試練に打ち勝つのだ」
「はいっ、わかりました!」
 
 マシウは俺から魔剣を受け取ると、扉の奥へと消えていった。
 もしもマシウが試練に打ち勝つ事ができなければ、改めて一人で聖騎士の道を歩もう。
 俺は聖騎士って柄じゃないので、できるならば彼に勝ってもらいたいものだ。
 
 
 
 
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©発行年-2020 らむのゲーム日記