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浄化の儀式 ~復讐の時、第一章~

 
 闇の一党潜入作戦は、ここにきて大きな転機を迎えた。
 ルシエンは、俺に「浄化の儀式」を命じてきたのだ。
 浄化とは、闇の一党への懐疑者や背信者を粛清する行為であり、処分された者達は、忠誠の対象としてシシスに捧げられるのである。
 その内容は、聖域に滞在する者を全て始末することで、その過程で裏切者を始末すればよいということだ。
 樽の中の腐ったリンゴが、樽全体をダメにするという。それならば、その樽を処分してしまおう。
 闇の一党の浄化とは、こういった乱暴な方法で、腐ったリンゴを抹消するといったものなのだ。
 

 もしもルシエンの言う裏切者が聖域に潜んでいるのなら、その者だけはなんとか知り合って味方に引き込みたいものだ。
 しかし、頼れるのは己の力のみという教訓もある。
 ここは一つ、復讐を成就させるための礎となってもらおうではないか。
 
 
 

 さて、どこから手をつけようか。
 乱戦になってもいいが、できれば誰にも覚られるところ無く密かに片付けたいものだ。
 山賊や海賊と違って、罪も無い人間を殺すところを他人に見られるのには抵抗がある。
 
 …………
 
 違ったな。
 この聖域に居る者は、殺されて当然な奴らばかりだ。
 まだ山賊や海賊の方が、堂々と悪事をやっている分清々しいものがある。
 ここに居る者は、居る必要の無い者達ばかりだったな。
 
 俺は、まずはここの責任者の立場にあるオチーヴァから狙うことにした。
 可能であれば、末端から潰すよりは頭から潰すほうが効果的なのだ。
 頭が残っていたら、いざと言うときに統制の取れた反撃を受けるかもしれないからな。
 
「おかえり、ルシエンとは会ってきたのね? よろしい、彼から下された任務は、何であれ全力で慎重に遂行するのよ」
 

 オチーヴァの部屋に入った俺は、彼女の台詞を聞きながらさりげなく扉を閉めた。
 言われなくとも、全力で慎重に遂行するつもりだ。
 
 オチーヴァは、俺の事は気にかけない様子で本を読みふけっている。
 扉を閉めたことも、気にしていないようだ。
 

 ルシエンが下した契約は、どんなことがあっても実行しなければならないのだ。
 疑問を抱く余地無く……
 
 一人始末、あと六人――
 
 
 オチーヴァの部屋から出た途端、たまたま廊下を歩いていたテイナーヴァと鉢合わせした。
 だが、彼はついさっき起きた出来事について気づいていないようだ。
 
「極秘の契約を授かったそうじゃないか、出世街道まっしぐらだね。おめでとう」
 

 ――どういたしまして。
 
 二人始末、あと五人――
 
 

 こいつはただの見張り、木偶の坊だから放置していてもよかろう。
 俺を敵とみなして襲い掛かってこない限り、な。
 
 
 二人を始末してメインホールへと戻ると、丁度ヴィセンテがこちらへ向かってきた。
 ここには他に誰も居ない、彼はここで始末してしまおうか。
 
「レイジィよ、お前の能力を最大限に信頼しているからこそ、ラシャンスは契約にお前を選んだのだ。その信頼に応えなさい」
 

 ――応えましょう。
 
 三人始末、あと四人――
 
 
 次は、居住区へと向かってみた。
 そこには、オークのゴグロンと、テリィンドリルの二人が居た。
 

 位置的にも、一人をやればもう一人にはすぐに気づかれてしまうな……
 
「俺もかつてはラシャンスから特別な任務を受けた事があるぞ。はるばるサマーセット島まで行って、30人ほどハイエルフをバラしたんだぞ、すごいだろう!」
 

 ――それは暗殺とは言わん、ただの虐殺だ。
 
 ここで俺は、高圧縮した霊峰の指を放ってやった。
 プラズマと化したエネルギーの束は、ゴグロンの身体を貫いて、テリィンドリルを椅子ごと串刺しにしたのだ。
 お前らに合わせてこそこそしていただけだ、こっちの方が本業なのでな。
 ただ破壊音が凄まじいので、この仕事に向かないだけなのだ。

 五人始末、あと二人――
 
 
 ここでふと、ルシエンの言っていたことを思い出した。
 彼が俺にこの任務を命じたのは、この聖域に裏切者が居るからだそうだ。
 場合によっては、その者は俺の味方となりうる者だ。
 助けられるものなら助けてあげたいものだが……
 
 俺は、残りの二人を求めて訓練所へと向かった。
 そこにはアントワネッタとムラージ=ダールが居るはずだ。
 前者は暗殺者にしておくにはもったいない美人、後者は俺に否定的なカジートだ。
 
 
「ああレイジィか。ムラージ=ダールはずっと考えてたんだけど、お前さんを邪険に扱ってきたことを詫びなきゃと思うんだ。これまでお前さんがこなしてきた任務を見て思ったんだが、本当に聖地にとって貴重なメンバーなんだ。仲直り、できないかな?」
「違うな……」
「ん? 秘密の任務だろ? よぉよぉ、ムラージ=ダールとは古い付き合いじゃねーかよっ。ヒントだけでも教えてくれよ、誰をやるんだい? ムラージ=ダールの知っている奴か? へっへっへっ――」
 

 ――オマエだよ。
 
 アントワネッタからは死角になっている場所だったので、そのまま隠密に済ませてやった。
 これで後一人だ。アントワネッタは裏切者だろうか?
 
 

「何でしょう? 親愛なるブラザー。何かお役に立てることはありますか?」
「……俺はルシエンから、この聖域に裏切者が潜入していると聞いて、全員を始末しろとの契約を受けた。オチーヴァを始めとして、君以外の者は既に終わった。言いたいことはあるかね?」
 
 闇の一党五教義その二、決して闇の一党と秘密について話すべからず。
 しかしルシエンは言った。今回の発令に際し、闇の一党の教義に縛られることはない、と。
 だから、最後の一人となったアントワネッタに、契約の真相をバラしてやった。もしも彼女が裏切者なら、この契約に関して何か言うことがあるはずだ。もしも裏切者なら、事情によっては俺と同じ境遇かもしれない。
 むろん下心込みだ。美人の彼女をできれば仲間に引き込みたいという、悲しき男の性って奴だね……
 しかし――
 
「そう……」
「…………」
「わかったわ、私も闇の一党に殉じて、その契約を受け入れます。一思いにやってください……」
 
 アントワネッタは、俺から視線を逸らして後ろを振り返ると、そのまま何事も無かったかのように練習台の人形を叩きだした。
 
 
 違ったか……
 
 

 
 
 ………
 ……
 …
 
 

「よくやったぞ、浄化の儀式は完了した。シシスの怒りは鎮まり、お前の揺るぎない忠誠が認められ報われる時が来た」
 
 俺は、ファラガット砦のルシエンの元へと戻った。
 聖域を無くしてしまい、この先闇の一党はどうなるのだ? などと考えていたところ、ルシエンは闇の一党の秘密を語りだしたのだ。
 まず聖域での活動はもう終わり、代わって闇の一党の上部組織、ブラックハンドに仕えることとなる。
 そして今後は、ルシエン直属のサイレンサー、静かなる者として影の道を歩むこととなった。
 契約は直接ルシエンから授かることになるようだ。
 
 良い傾向だな。
 闇の一党の核心へと、さらに一歩近づいたようだ。
 ブラックハンドは、一人のリスナーと四人のスピーカーから構成されているそうだ。
 そしてこのブラックハンドという組織を壊滅させることができれば、俺の復讐は成就することとなるのだ。
 シシスとナイト・マザーの存在が謎だが、それはまた追々考えることとしよう。
 
 
 新しい時代の幕開けだ。
 暗殺者は復讐者に討たれる。闇の一党のカレンダーも残り少ないぞ――!
 
 
 
 
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