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危険な薬 ~老兵の毒殺~

 
 海賊船長や囚人、薬物中毒の男と、一見社会のクズを始末しているようにも見える闇の一党。
 だがそれを必要悪と黙認する奴は、自分が被害に会っていないからそう言えるのである。
 自分の親兄弟や子供を殺されても、暗殺者は必要だと言い切れるか?
 
 居るのだろうな……
 フランソワ・モティエールのような、自分が生きる為に親を売るような奴が……
 

「準備ができているのなら、新しい契約があるわ。一瞬の気配を悟られることのない、その能力が頼りとなるのよ」
 
 気配を悟られる事が無い、か。
 グレイ・フォックス――というより、透明化の魔法を持った俺には、気配とか関係ないものだったりする。
 魔術師崩れの盗賊や暗殺者が、一番恐ろしい存在なのかもしれない。
 
 今回の新しい契約は、サッチ砦に居るロドリックという将軍だ。
 ロドリック将軍と言えば、禁呪といった使用することを制限されていた魔法を乱用したために、民に見捨てられたという話だ。そして今では宮殿の奥で、必殺剣を教えてくれるとか――
 ん? 違うか? 何かと記憶が混同しているのか?
 微妙に名前が違う? まあよい。
 
 そんなロドリックも、今では病気にかかり意識も無く、強力な薬の定期的な摂取のみで生き長らえている状態だという。
 そこで今回の任務では、サッチ砦に侵入して、ロドリックの薬を毒薬とすりかえることだ。気づかれること無く、ロドリックが病で亡くなったかのように装う事が肝心である。
 つまり、一瞬の気配を悟られることのないとは、そういうことなのだ。
 
 
 

 というわけで、アンヴィルの北にあるサッチ砦へと向かうこととなった。
 ブリナ・クロスの宿屋から北に向かい、ドラッド卿の畑を通り過ぎた先にその砦はある。
 近くにマラキャスの祭殿があるが、オークの神には特に用事は無い。祈ることなどなにもないからな。
 

 しばらく進むと、半分壊れた砦が姿を現した。
 周囲には、人の気配は無い。打ち捨てられられた砦なのだろうか。
 

 砦の中に入ってみると、すぐにレバーで開閉する扉があったりした。
 そしてすぐ傍で、衛兵が見張りをしている。
 あの見張りに気づかれること無く潜入するのは不可能に近いのではなかろうか?
 
 そこで俺は、テイナーヴァの言っていたことを思い出した。
 サッチ砦は自然の要害だが、弱点はあると言っていた。
 元々サッチ砦寺院というものがこの一帯に広がっており、塔からそう遠くない場所に別の遺跡が存在していたらしい。
 

 そこから侵入すれば、地下の浸水したトンネルを通って、サッチ砦までいくことができるらしいのだ。
 抜け道のようなものがあったが、暗殺者はその抜け道から侵入してきて襲い掛かる。
 どこかの皇帝陛下の末路みたいだな……
 

 テイナーヴァの言っていたとおり、別の入り口から侵入した先は水浸しになっていた。
 浸水した通路、そして「あたし濡れるの嫌い」か……
 しばらく水路を進むと、上り坂になっていてサッチ砦に入り込んだようだった。
 

 砦には衛兵が屯していたが、暗闇に潜んでいれば見つかることはない。
 普段着だと透明化の魔法も考えなければならないが、闇の一党の正装だと、ほぼ完全に暗闇に溶け込んでしまうのだ。
 こちらの方が、影と共にあれ、ではないのかね。似たようなものか。
 
 

 砦の中を進んでいると、大きなベッドに横たわる人物が居るところまでやってきた。
 この病人がロドリック将軍というわけか。
 ほっといてもその内死んでしまいそうな感じだけど、毒薬にすり替えてまで早く殺すことに意味があるのだろうか?
 それとも、元々元気なうちにライバルが暗殺を依頼してきたけど、砦に隠れていたのでずっとわからずじまい。そしてようやく今になって居場所が分かったので刺客が送られてくることとなり、たとえ病人でも任務は遂行せよということかな?
 ありそうだな、一度暗殺を依頼すれば、その対象に暗殺する必要が無くなったとしても、暗殺者はそんなことはお構いなく殺しに来る。
 
 やはり暗殺者組織、闇の一党は末端から頂点まで消し去るべきだ。
 

 ロドリック将軍も、その崇高な任務の礎となってくれ。
 文句があるなら、いずれ黄泉の国で――
 

 あーめん……
 
 
 これで任務は完了。
 ロドリック将軍は、すり替えられた毒を飲んだとき、死んでしまうであろう。
 
 

 さて、あとは見つからずに脱出するだけだが、正面の門は見張りが離れずにじっと待ち構えている。
 やはり来た道を戻り、水没した通路を通って遺跡の入り口へと戻るしかないだろう。
 

 こうして俺は、サッチ砦に忍び込み、誰にも発見されること無く薬を毒薬と置き換えたのだ。
 その結果を受けて、オチーヴァは俺のことを闇に隠れる達人だと褒めてくれた。
 
 俺は、正しいことをやっているとは思えない。
 だが、正しいことをやっていない組織に対して、正しくないことで対抗するだけだ。
 毒をもって毒を制するとはいったものである。
 
 
 
 
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