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不慮の事故 ~(正)意図した事故~

 
「最後にやった契約について聞いたんだけど、本当かい? 全員を抹殺するハメになったんだって? 無関係の者までも?」
「噂ってのはあっという間に広がるもんだね、いやなもんだ」
 
 闇の一党の聖域とやらで過ごしていると、こんな会話が聞こえてきたりする。
 信徒の中には目的の為には皆殺しをも厭わないという奴も居るらしい。
 だが、逆の方向というものを考えると、こいつらの行動理論も説明がつくのだ。
 自分の思う正義とは逆の方向に、同じだけの正義があると考えたらどうだろうか?
 
「レイジィ殿」
 
 人によれば、海賊の船長のみを標的とするのではなく、子分もひっくるめて全て始末した奴も居たと言うことだろう。
 俺も山賊の親分だけでなく、子分もひっくるめて全滅させたことも何度かあるから気持ちはわかる。
 というより、前回の任務が海賊退治だから、別に悪者を始末しているだけと感じてしまうだけだ。
 
「レイジィ殿」
 
 意味不明なのは、衛兵の行動だろうな。
 もしも俺が、あの海賊船マリー・エレーナ号で大暴れをして、海賊を全滅させたとしよう。
 その時、衛兵は俺を逮捕しに来るだろうか?
 もしも「海賊を始末してありがとう。我々も手出しできずに困っていたんだ」などと言えば、それは正義の衛兵だ。
 しかし逮捕しに来たときは、山賊はしまつするけど海賊は見逃すという意味不明な組織となる。海賊と衛兵が癒着している、そんな風な。
 俺の正義では、海賊も山賊も同じ反社会組織だと考えているが、それは間違いだろうか?
 
「レイジィ殿」
 
 突然背後から肩を揺すられて、おれはハッと我に返った。
 
「よろしければ、契約がありますよ」
 

 振り返ると、そこには吸血鬼ヴィセンテの顔。この聖域で、仕事の管理している者だ。
 そうか、俺はここではレイジィだったな。アナグラムで作り出した偽名を忘れるところだった。
 
「頼みたいことは、事故の演出です。指定された方法で対象を始末できれば、素敵なボーナスを用意できますよ」
 
 今回の任務は、ブルーマに住むベインリンというウッド・エルフを始末すること。
 彼の家の二階には屋根裏部屋に続く隠し扉があって、そこにはベインリンお気に入りの椅子の真上に飾られている剥製の止め具があるのだ。
 20時から23時の間に、その留め金を緩める。そうすれば、剥製が壁から落ちて、椅子でくつろいでいるベインリンの頭にぶつかるというだ。 
 ただし、これらの任務を全て召使いのグロムに見つかってはいけない、と。
 そして強行策など他の手段で殺害したときは、ボーナスは出ないから気をつけること。
 
 俺は、任務を素直に引き受けておくことにした。

「闇を纏い歩め、ナイト・マザーの御子よ。シシスとともにあらんことを」
 
 ヴィセンテの呟きを背に、俺は次の任務へと赴いた。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 夜のブルーマにて――
 

 かつてこの道を、臣民に見送られながらマーティンと通った事がある。
 ブルーマのグレート・ゲート戦、今となっては遠い昔の出来事となってしまったようだ……
 

 そしてこれが、ベインリンの家。しかし表通りは衛兵が巡回している。
 
「どうやってその男の家に入るつもり? 表玄関から? 頭を使いなさい、地下室の入り口のようなもっと目立たない経路を探すことね」
 
 アントワネッタの言葉が思い出される。
 聖域の住民は、任務についていろいろとアドバイスを送ってくれるものだ。
 いろいろ思うところはあるが、今はその助言をありがたく受け取っておく。
 

 そういうわけで、裏口から侵入することにした。
 鍵がかかっていたりするが、不壊のピックを持っている俺にかかれば、そんなものは無いようなものだ。
 盗賊ギルドでどろぼうさんをしていた技術が、こんなところで役に立つとは思わなかったね。
 

 地下室を通り抜けて一階へと辿りつく。
 そこでは居間の椅子でくつろいでいるベインリンの姿を確認できた。
 明かりもつけずに薄暗いところで、何を思っているのか。
 

 そしてその頭上には、巨大なミノタウロスの剥製が。
 あれを落下させて、ベインリンを押しつぶしてしまえというわけだね。
 

 ヴィセンテの話では、ベインリンの吐く息の一つ一つがシシスとナイト・マザーへの侮辱となるらしい。
 この契約を遂行することで、信徒の名誉を守るのだそうだ。
 ベインリンはいったい何をしたのか?
 普通の考えを持つ奴なら、暗殺を稼業とする闇の一党など、侮辱に値する存在だと思うのだがな……
 

 寝室の壁は、ヴィセンテの言うとおり隠し扉になっていて、屋根裏部屋へと続いていた。
 そしてその先にある壁には、材木と留め金で剥製を固定しているものが見えた。
 触ってみると、割と緩んでしまっている。長年留め続けていたことで、経年劣化しているようだ。
 
 俺は、その留め金を捻って取り外してしまった――
 


 
 ゴトンと大きな音が居間から響いた。
 続いて「ベインリン殿?!」と叫ぶ声、恐らく召使いのグロムだろう。
 
 たったこれだけのことで、今回の任務は終わり、ボーナスを貰う用件まで達成してしまったのだ。
 

「なぜ剥製が壁から?」
 
 などとグロムは言っている。
 のんびりしていたら、屋根裏部屋を確認しに来てぶつかってしまうかもしれない。
 俺はこっそりと地下室へ戻り、裏口から外へと出たのであった。
 
 
 また一人殺してしまったよ。
 メファーラよ、こんな俺でも見守ってくれるかな?
 いや、今の俺は、暗殺を司る神にすがるしかないのだ。
 
 

 ブルーマに飾られていた俺の蝋人形は、いつの間にか石像と置き換えられていた。
 リアルすぎてあれだったのか、解けてしまったのか。
 
 心が痛むね、臣民は俺を英雄だと思ってくれている。
 しかし今の俺は、暗殺者レイジィなのだ……
 
 

 ブルーマに立ち寄ったということで、魔術師ギルドにちょっと寄ってみた。
 真ん中に飾れているジョアンにお願いして、魔術師ギルドに入ったのが、シロディールでの俺の第一歩だった。
 一度は死霊術師に破壊された支部だが、こうして今は再建されている。
 
 そうだったな……
 この再建に立ち会った時、緑娘がここまで追って来たのだったな。
 また現れて、「あっ、居た!」などと叫んでくれないものだろうか……
 

「誰かな? ギルドは常時新規メンバーを募集しているぞ」
「そうか、がんばっているんだな」
 
 魔術師ギルドのメンバーは、一部の者を除いて誰も今の俺をアークメイジとは認識していない。
 これは狙ったとおりの状況だが、それはそれで寂しいってものがあるのだ……
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
「あなたにはナイト・マザー御自身がお贈りになられた天賦があるようだ。事故を装いベインリンの息の根を止めたわけですな。お見事!」
 
 今回の任務遂行を、ヴィセンテは喜んでくれる。そしてさらにこう告げた。
 
「どうすればあなたを手助けできるのか、聞かせて欲しい」
 
 教えてやろうか?
 この闇の一党の組織図全体を教えてくれ。
 それだけでよいのだよ……
 
 
 それはそうと、闇の一党にも階級があるらしく、今回の任務成功によって、俺はスレイヤーへと昇進したのだった。
 ありがたくはないが、栄達する為に喜んでみせよう。
 
 
 
 
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