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迎えられし日 ~偽りの家族~

 
「メファーラよ、我の行く先をお守りください」
 

 ルシエンに示された家族へ赴く前、俺は神に祈りを捧げていた。
 九大神ではなく、デイドラに。
 
 メファーラは、偽り、性交、殺人などを司る、デイドラ王子の一人。
 俺はこれから暗殺を主業とする闇の一党へ加わることとなる。
 神頼みなどやったこともないし、デイドラと言えば先日タムリエルへ侵攻してきたメエルーンズ・デイゴンと戦ったばかりだ。
 それでも俺は、あえてデイドラに力を借りようと考えた。なにしろデイドラは、エイドラと違って人々の前にその存在をはっきりと示すからな。
 

 俺はかつて、メファーラにそそのかされて暗殺に手を染めることとなり、村を一つ壊滅させたことがある。
 ひょっとしたらあの時、俺の未来は決まっていたようなものだったのかもしれない。
 一度メファーラのために働いてやったのだ。今度は俺に力を貸してくれても良いだろう。
 この暗殺の神よ、ふっふっふっ……
 
 

 というわけで、シェイディンハルへとやってきた。
 ルシエンの話では、東の城壁近くにある廃屋を訪ねよ、との事だったので、この通りのどこかに廃屋があるはずだ。
 

 そしてすぐに、それらしき建物を発見した。
 扉や窓に板が打ち付けてあり、怪しげな雰囲気を放っている家。
 ただし玄関の板は扉の部分にだけ打ち込まれていて、普通に開くことができたりする。
 遠目に見たら封じられているように見えるが、確かに誰かが密かに出入りできるように作られているのだった。
 

 だが建物の中は、誰も使っていないように荒れ果てていた。
 蜘蛛の巣までそのままで、ここに住んでいる人は一見誰も居なさそうに見える
 実際に三階まで見てきたが、誰も居なかった。
 

 しかし、地下であるものを見つけた。
 そこは壁が壊れており、奥へ続く通路があったのだ。
 闇の一党というだけあって、隠れて住んでいるということなのだな。
 

 そしてその通路の奥は、赤黒く光る不気味な扉へと通じていた。
 その扉は、手のひらを太陽にかざしてみた太陽に照らされた、母と子供?
 ルシエンは、ナイトマザーがどうのこうのと言っていたような気がする。夜の母とでも言うのかな?
 
 その時、扉から不気味な声が響いてきた。
 
「夜の色は何か?」
 
 マーマレード色の空ではないだろう。これは合言葉だ。
 そしてその合言葉は、ルシエンから聞いている。
 
「赤く染まれり、我が兄弟」
「よくぞ帰られた」
 
 そして不気味な扉は、ゆっくりと開いた……
 

 その奥には居住空間が広がっているようで、何人か人の姿も見える。
 
「ごきげんよう! 私はオチーヴァ、この聖地の主人です。あなたのことはルシエンから聞いていますよ、闇の一党へようこそ!」
 
 ルシエンは、確かオチーヴァという者の指示を仰げと言っていた。
 

 アルゴニアンの女性だろう、黒っぽい衣装に身を包んだオチーヴァと名乗ったものは、さらに話を続けてきた。
 
「あなたは今、我等の聖地に居ます。あなたの新しい家、安住の地となりますように」
 
 そこで俺は気がついた。
 こいつが着ている衣装こそ、緑娘を襲撃してきた者と同じであることに。
 敵はブラックウッド商会ではなかった。この闇の一党、ダーク・ブラザーフッドであった。
 
 オチーヴァの話では、ヴィセンテという者が仕事の管理をしているらしく、準備ができたら彼を訪ねるとよいと言ってきた。
 そして、家族からの贈り物と称して、防具一式を用意してくれた。
 それはオチーヴァの身に着けているものと同じものだった。ということは、やはりこいつらだったのか……
 
 オチーヴァからは、他にもいくつか聞いた。
 ナイトマザーの儀式というものがあり、殺人を祈る者に耳を傾けているのだと言う。
 儀式を行ったものはスピーカーから接触を受けて、それから任務を実行する者に指令が下るのだ。
 
 誰だ?
 緑娘を殺すことを依頼した者は?
 ブラックウッド商会ぐらいしか、緑娘を恨んでいる奴は居ないと思うのだが……
 
「さあ行きなさい、親愛なる同胞よ。ナイト・マザーの冷酷な愛があなたを包みますように」
 
 そしてオチーヴァは、その場を立ち去った。
 改めて周囲を見回す。そこは、格子状に柱が立っている空間であった。
 オチーヴァ以外にも、何人かの者が住んでいるようで、皆同じ衣装を身にまとっている。
 そうか、これが殺人集団か……
 
「シシスにかけて、あれは大変な任務だった。戦士ギルドのマスターを葬る為に、何人が犠牲になったことか……」
 
 その時、聞き捨てなら無い噂話が俺の耳に飛び込んできた。
 

「もしもルフェーブルがしくじったら、今度は私の番だった。彼女は強敵だったね」
「すまないが、その任務について聞かせてくれないか?」
 
 俺は二人の噂話に割り込んだ。
 
「ようこそブラザー、やっと会えてとても嬉しいわ。私はアントワネッタ、うまくやっていけるといいわね」
「俺はテイナーヴァ、我々の組織、そしてこの聖地へようこそ。ナイト・マザーの冷酷な愛によって、ここがあなたの帰すべき場所となりますように」
「よろしく。で、その戦士ギルドのマスターは強敵だったのかい?」
 

「ええ、そうよ。最初に乗り込んだパストーレは、シェイディンハルで夜の寝込みを襲ったけど、あっさりと返り討ちにあってしまったのよ」
「そうか……」
「次にムーアを送り出して、今度は帝都のアリーナ裏で狙ったけど、それでもだめだった」
「…………」
「アップルトンは、ブルーマでグレート・ゲートの戦いで、どさくさに紛れて消そうとしたけど、敵は察しが良すぎて戦場で倒すのは不可能だと気づいたわ」
「それで結局その者は殺せたのか?」
「ええ、ルフェーブルは最後までじっくりと機会を伺っていたのよ。そして、マーティンがアカトシュに変化したとき、唯一の隙が生まれたようで、彼はその一瞬を逃さなかったわ」
「すごい奴も居たんだね、彼にあってその腕の教えを請いたいな」
「それがダメなの。戦士ギルドのマスターは討ち果たせたけど、ブレイズに捕まってやられてしまったわ」
「そうか……」
 

 やはりこいつらさえ居なければ、緑娘は死ぬことはなかったんだ。
 こいつらは宿敵だ。家族などと言ってくれるが、そんなのはまやかしの家族に過ぎない。
 こんな家族よりも、緑娘を返せ――
 
「幸運を、ブラザー! 殺されないといいけど! ――じゃなくて、うーん……えっと、分かるでしょ?!」
 
 分かるよ、お前ら全員死ねというものだ。
 俺はシロディールを去る前に、こいつらを皆殺しにすると誓ったのだ。
 アントワネッタと言ったっけ? 俺のことを殺されないようにと心配するのも滑稽な話だな。お前らが殺されないように祈るのだな。
 

 俺は、敵を欺く為に敵の衣装に身を包んだ。
 そう、以前クリムゾン・ブレード賊に潜入した時のように。
 あの頃に戻れるなら、戻りたいものだ……
 
 

 アントワネッタに斬りかかろうと思ったが、ここはひとまず私怨は抑えておこうと考えて留まった。
 こいつら末端の実行員を消したところで何の意味も無い。
 
 やはりここは、しばらく任務を忠実にこなして、この組織の幹部とやらが出てくるところまで出世しなければならない。
 こいつらだけでなく、ルシエンという奴も消さなければならないのだ。
 もしももっと上の組織があるなら、そこまで入り込まなければならない。
 
 盗賊ギルドの時は、グレイフォックスの仕様によってグダグダで終わってしまったが、今回はそうはならないように考えて行動する。
 それに盗賊ギルドにはそれほど被害を受けたわけではない。精々フローミルの氷杖を盗まれただけだ。自作自演で……
 だがこいつら闇の一党は、俺の一番大切な緑娘を奪った。
 だからこの組織全てを消し去ることにしたのだ。
 もしもマイト・マザーの儀式を行ったとしても、何もできないぐらいに徹底的に――
 
「そうだわ、あなたの名前を聞いていなかった。何って言うの?」
 
 俺が魔剣を片付けるのと同時に、アントワネッタは振り返って聞いてきた。
 名前か、考えてなかったな。だが、本名を名乗るのはまずかろう。ラムリーザという名前は、アークメイジ、そしてシロディールの英雄として知れ渡りすぎている。
 ラムリーザ……、Ramlyza……、Lazymar……、ラジィマー……、レイジィ・マー……
 
「俺はレイジィ。レイジィ・マーだ」
「よろしくね、レイジィ」
 
 こうして俺は、レイジィとしての偽りの家族生活が始まった。
 
 
 
 
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