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暗闇の刃 ~兇兆・イルオーメン~

 
「そうですか、闇の一党はほんとうに存在し、接触に成功したのですね」
「うん、存在した。そして予想通り、暗殺を主業とするとんでもない集団のようだよ」
 
 ダイビングロックでルシエンと接触した翌日、俺はこっそりと魔術師大学に戻ってきていた。
 これからは表の顔と裏の顔を使い分ける必要があるが、しばらくの間は表の顔は封印だ。
 

「リリィさん、今後はしばらく大学には戻らないつもりです」
「そのほうが良いでしょう。大学と闇の一党が繋がっていると知れたらややこしい話になるかもしれません」
「そういうわけで、今後もあなたの助言が必要な時があると思うのですが、会う場所は港湾地区にある俺の持ち家にしましょう」
「わかりました、そうします」
 
 俺は闇の一党に潜り込むつもりだが、リリィさんには細かく報告しておくことにした。
 もしもリリィさんが突然野心に目覚めて、俺を追い出して魔術師ギルドを乗っ取ろうと思うのなら、それはそれで構わない。
 俺はこの復讐戦が終わったら、シロディールから消えるつもりだからな。
 
「そうだ、あなたに渡しておくものがあります」
 

 リリィさんはそう言うと、一振りの短刀を俺に差し出してきた。
 
「ん? 見覚えがあるけど、これは?」
「あなたがサンダークリフ・ウォッチの砦から持ち帰った、メエルーンの剃刀です」
「ああ、そういえばそんなこともあったね」
「元々の魔力も結構なものでしたが、そこに改良を加えておきました。地味ですが、魔力の剣と同じぐらいの破壊力になっているはずです」
「それはありがとう」
 
 そうだった。
 リリィさんは魔術師ギルドの参謀みたいな扱いをしているが、本来はマジッククリエイターなのだ。
 魔力の篭った武器や道具の製作、改造などお手の物だった。
 
「それじゃあちょっと行ってくるよ」
「ラムリーザさん、いえアークメイジ」
「は?」
「あなたが何をしようと、私達のアークメイジであることは変わりありません。復讐戦、健闘を祈っています」
 
 リリィさんもジ=スカール先輩も、復讐戦をやり遂げて戻ってきてくれることを願っている。
 そうか、そうなのか……、わかったよ。
 闇の一党を壊滅させて、それで緑娘を失った心を満たしてくれるとは思わない。
 だが今は、復讐の心だけが俺を支えてくれるのだ。
 
「ラムたんのお兄ちゃん」
 
 大学から出たところで、呼び止められた。
 下の方から聞こえたので、見下ろしてみるとミーシャだった。
 

「ねぇ、ソニアお姉ちゃんの仇、取ってくれるよね」
「ああ、任せておけ。誰が何と言おうとも、緑娘をやった相手をデリートしてくるからな」
「ミドリムスメ?」
「はっはっは、ミーシャも大人になったらわかる日が来るさ」
「ミーシャもう大人だもん。来年から、正式に魔術師ギルドに入って活動することになったもん」
「それなら今年はまだ子供だね。それじゃあ元気で」
 
 まだ何やらギャーギャー言っているミーシャを尻目に、俺は帝都を出発した。
 アークメイジの称号も、シロディールの英雄の称号も一時封印。
 俺は、闇の一党に潜入――、いや、ダーグ・ブラザーフッドの一員として戦うのだ。
 
 緑娘を愛してくれた人々に応えるために、な。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 向かった場所は、イルオーメンの宿屋。
 

 この宿屋に泊まっているという、ルフィオという者をデリートするのが今回の任務だ。
 
 宿の主人に話を聞くと、ルフィオは相変わらずここに泊まっているそうで。
 ルフィオはなぜここに泊まっているのか。なぜ闇の一党に狙われているのか。
 しかし何も考える必要は無い。
 俺は淡々と任務をこなすだけだ。
 そう、緑娘をやった奴らと同じように、な。
 

 地下に降りると、ルフィオはまだそこで眠っていた。
 以前話しかけたときは、ルフィオは取り乱して逃げ回ったものだ。
 たぶんあの時も闇の一党に狙われていて、俺の事を刺客だと思ったのだろう。
 あの時は違ったが、今は刺客だからな……
 

 どろぼうさんの時と同じ要領。
 あの時は盗みを目的としたが、今回はそれがデリートに変わっただけ。
 どうしてもこっそりできない時は、先輩直伝の透明化を使うまでだ。
 

 リリィさんから受け取ったメエルーンの剃刀改の威力はなかなかのもので、ルフィオをサクッと一撃でデリートできてしまった。
 これは確かに便利な武器だ。
 以前の魔剣と違って小ぶりで携帯しやすいし、魔法と違って轟音が響かないので隠密に優れている。
 また、魔力で攻撃してくれるので、短刀を扱うスキルとかもそれほど必要ではないのだ。
 
 こうして俺は、ルシエンに命じられた最初の任務を、あっさりと片付けたのであった。
 

 後は知らない。
 宿の主人が気がつくまでしばらくかかるだろうし、その時に大騒ぎになったとしても俺は知らないで通す。
 誰も見ていなかったことだからね。
 
 

 すぐには宿の主人も地下には行かないと見て、俺はこの宿で一晩明かすことにした。
 ルシエンは言っていた。「事を終え、次にお前が安全とみなせる場所で眠りに付けば、再びお前の前に姿を現すだろう」と。
 
 それに、ここにルシエンが入ってきたのを宿の主人が見ていれば、ルフィオ殺しの犯人をルシエンに押し付けることができるかもしれないからな。
 主人が俺を疑うなら、俺はシロディールの英雄だと見せ付けてやればいい。
 
 とんだ腐った英雄だな……
 
 でも別に構わない。
 緑娘を殺すような世界で英雄視されたところで、何も嬉しくないからな。
 英雄になんてなりたくなかった。
 緑娘と羊牧場でも作って、のんびり暮らしていきたかった……
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
「儀式は済んだのだな」
 
 寝ていたところを、ダイビングロックの時と同じように、突然ルシエンが現れた。
 

「何故知っているのか? と言いたそうだな。闇の信徒は何でも知っているということがいずれわかる。お前は家族の一員となったのだからな」
 
 俺が黙っていると、ルシエンは話を続けてきた。
 ルフィオの殺害が契約への調印であること。
 黒手団のスピーカーとして、家族のメンバーを直接監視していること。
 その集団に加わり、与えられる様々な契約を果たすことになるということ。
 
 次にシェイディンハルへ向かい、東の城壁近くにある廃屋を訪ねよと言ってきた。
 そこが、家族の待つ場所だと。そして合言葉は「赤く染まれり、我が兄弟」である。
 オチーヴァという者と話をして、次の指示を仰げと。
 
 それだけ言い残すと、ルシエンは何事もなかったかのように宿の部屋から立ち去っていった。
 
 
 ………
 ……
 …
 
 
 翌朝、俺は宿を後にした。
 ルフィオはまだ眠っていると思われているのか、騒ぎにはなっていない。
 

 こうして俺は、最初の任務をやり遂げて、闇の一党の一員となった。
 まさに始まりの場所、イルオーメン。これは新たな兇兆となることだろう。
 
 しかし闇の信徒は何でも知っていると言っていたが、割とザルなところがあるようだ。
 俺がアークメイジであり、シロディールの英雄と呼ばれていたことを知らないみたいだからな。
 
 
 
 
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