新たな人事、そして―― ~双璧と半身~

 
 ブルーマ防衛戦は、グレート・ゲート大いなる門の破壊により、シロディール側の勝利として終わった。
 マーティン・セプティムは急激に民衆の支持を得て、ここに新たな皇帝が誕生した。
 オブリビオンの動乱も、少しずつ収束へ向けて進んでいる。
 
 

「オレインさぁん、クロードさぁん、よくできました。戦士ギルドのマスターとして、あなたたちを誇りに思っていまぁす」
「それほどでもないです!」
 
 戦士ギルドマスターの緑娘が、ギルドメンバーにねぎらいの言葉をかけている。 
 もう一人参加していたように見えるが、殉死したのか、自分の故郷へ帰ったのかはわからない。
 たしかレヤウィンの人だったから、コロールには帰ってこないのだろうな。
 クロード・マリックも、雇い主のウンバカノがネナラタと化してしまったので主人を失ったが、俺達の勧誘で戦士ギルドに参加し、今はコロールのギルドハウスに滞在しているようだ。
 ブラックウッド商会にかなりやられてしまったが、戦士ギルドも少しずつ賑わっていけばよいだろう。
 もっともそのブラックウッド商会も、今更復讐戦に燃えているみたいだけどな。
 
 

 コロールを離れ、魔術師大学に戻ってきたところで、エルスウェアの戦士グ=ジューナに会った。
 
「今回はよくたたかってくれたよ、ありがとうグ=ジューナ」
「クワザーニ族は、いつでも君の味方だぞ。それに、シロディールの脅威はエルスウェアの脅威にも繋がるからな」
「また何かあったらよろしく頼むよ」
「了解した!」
 

 そしてグ=ジューナはエルスウェアへと帰っていった。
 今度また彼と会えるのはいつだろうか?
 それは版元の予定だけが知っているのだった……
 
 

 さて、魔術師大学へ戻ってきました。
 俺は、今回のブルーマ攻防戦の結果を持って、ある人事を行うことを決めていた。
 長らく忘れていた昇格人事、ラミナスさんと相談して今回の功績に報いることにしたのだ。
 
「まずはテフラ、スターク島で遺跡の謎を暴いてポーレから金鉱を奪取した功績により、ウィザードへと昇進する」
「あたし別に魔法使いやらなくていい」
「さらに、ブルーマ攻防戦の功績により、マスターウィザードへと昇進させる」
「また二階級特進?」
「忘れていただけだ。まとめて昇格させただけ。これからもアークメイジの副官として、彼に協力するように」
「はぁい」
 
 今度はジ=スカール先輩に振り向いた。
 先輩もいろいろと働いてくれた。
 金塊を与えていればそれで喜ぶような人だが、地位も与えておいたほうが使いやすい。
 
「えっと、先輩の階級って今何でしたっけ?」
「ジ=スカールは忘れた。イヴォーカーだったと思うが、地位など金塊に比べたらどうでもよい」
死霊術師と戦った時に昇進していたような……。うろ覚えだけど、そこから新たにこれまでの功績を称えて地位を上書きしますよ」
「地位よりもっと金塊をよこせ。地位は上がっても給金は増えない」
「まぁまぁそう言わずに。えっと、エルスウェアで俺の気晴らしに貢献してくれた。昇進、コンジュラーとする」
「魔法使いだな」
「次、ブラヴィルのオブリビオン・ゲートを閉じてくれた功績により昇進、マジシャンとする」
「ジ=スカールは手品は苦手だ」
「そして、スターク島では――何もしてないな。釣りして魚食って酒飲んで金塊を輸送しただけだな。ただの輸送では推薦状は出せるが昇格にはならないな」
「金塊の輸送は大変だったぞ」
「どのくらい着服しましたか?」
「う……」
「というわけで、スターク島関係では昇進無し。でもブルーマの決戦に参加してくれた――って透明化して俺の傍に居ただけだな……」
「ラムリーザのために赴いてあげたのに、その言い草は何か!」
「わかったよ、ウォーロックに昇進。ちょっと早いけど、俺の腹心としてアークメイジの塔二階にある会議室への入室を許可する」
「ジ=スカールは会議は嫌いだ」
 
 次はリリィさん。
 リリィさんも、いろいろと役に立ってくれたので、その功績を報いてあげないとな。
 アークメイジとして、そのくらいはやらなければ。
  
「えっと、リリィさんの今の地位は何でしたっけ?」
「ウィザードですよ」
「さすがにもうそこまで昇格していましたか。じゃあもう残るは一つしかない。これまでの功績全てをひっくるめて、マスターウィザードへと昇進」
「ありがとうございます」
 
 よし、これで腹心にマスターウィザードが二人できた。
 マスターウィザードの上はアークメイジしかないので、実質最上位だ。こんかいの二人以外では、ラミナスさんだけなのだよね。
 元々は先代アークメイジの評議員であった二人、カランヤとアーラヴ・ジャロルがマスターウィザードだったけど、マニマルコ騒動でお星様になってしまっていた。
 ジ=スカール先輩も、まだまだ伸びしろがあるということで、今後に期待――できるのかなぁ?
 最後にニラーシャだ。
 
「ニラーシャさんは見習いでしたっけ?」
「推薦状はもらっていますから、修行者になっています」
「それじゃあグ=ジューナに手紙を出したその機転を評価して、イヴォーカーに昇格」
「ありがとうございます」
 
「以上の事をラミナスさんに伝えておくので、後で正式に辞令を頂くように」
 
 一応人事の管理はラミナスさんが取り仕切っているからね。
 
 

 そしてリリィさんと先輩を、アークメイジ会議室へと招待。
 そのついでに、先輩にアーラヴ・ジャロルが着ていた白衣のローブを授ける。
 これで現アークメイジにも、評議会メンバーが出来上がったのである。アーラブの立場にジ=スカール先輩、カランヤの位置にリリィさんである。
 リリィさんは自作製のローブを着ているので、カランヤのように青いローブは着ないけどね。
 
 もう一人のマスターウィザードである緑娘?
 そりは俺の半身のようなものさ。双璧よりもさらに上の存在だ。
 たとえシロディールの全臣民が敵に回ったとしても、緑娘だけは俺の味方をしてくれるだろう。
 アークメイジの御前での武器携帯を認めないなどというミスは、絶対に犯さないものである。
 
 
 

「どうだ。ジ=スカールのことを、これからは白衣の天使と呼べ」
「あらまー、美しいローブだねー」
 
 さっそくローブを自慢している先輩。
 何が白衣の天使だ、白のジ・スカールとでも名乗っておけ。名前負け感ハンパないけどな。
 ニラーシャも、見習いのローブから魔術師のローブへと衣替え。
 む、先輩はピアスをはめていたのか。イタズラ先輩の癖におしゃれだな!
 
 

「こんにちは、私のかわいいラムリーザや」
「うわっ、アリーレさんっ」
 
 そうだ、アリーレさんもブルーマ攻防戦の功績を評価してあげないとな。
 元々コンジュラーだったので、マジシャンに昇格。
 それと同時に、辺境だったアイレイドのダムの管理人は他の物に代わり、大学で過ごすことになったのだそうな。
 バトルメイジという立場でもあるので、大学の治安維持に貢献してくれたまえ!
 
 どうでもいいけど、緑娘はなんでアリーレさんに対してだけ威圧的なのだろうか?
 緑娘も認める美人だと言うことで良いのかな?
 
 
 以上、魔術師ギルドでの人事考課は終わった。
 精進して新しい地位の立場を固めるように!
 
 
 
 さて、クラウドルーラー神殿に――
 
「ういいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ――」
「やかましいわ!!」
 

「うわあっ! イグナーだよっ、サヴリアンからあんた宛ての手紙を預かっているんだよっ!」
「普通に挨拶しろ、なんだよブレーキの壊れたダンプカーじゃあるまいし」
「ウィーじゃない、ういっすだよ!」
「じゃあそう言え。さっきのは何や? まぁえーわ、それで?」
「闘技場および城の修復が終わった今、町は完全に復旧されたんだ。帝都には行ったことないけれど、こことは比べ物にならないでしょうね」
「うつけか? お前の今立っている場所が帝都だよ」
「こっ、これは――」
 
 やっぱりこいつはおかしな奴らしい。テンションだけやたらと高い伝達兵。
 俺は未来のこいつの子孫を占ってやる。ダケイルさんじゃないけどな。
 
 当ててやろうか? こいつの子孫は裸で手紙を運ぶ配達人になるかな?
 
 
 
 サヴリアン・マティウスからの手紙は二つ。
 

 一つは先ほど聞いたように、クヴァッチが完全に復興されたことを喜ぶ手紙。
 そうだった、マーティンの事を大きく感じていたけど、マティウスも俺のことを友と呼んでくれたな。手紙の上では。
 なるほどそうか、マティウスは隠居することになったか。
 そうだな、俺もオブリビオンの動乱が終わって、マーティンの帝国が始まったら、隠居して緑娘と二人で羊でも飼ってのんびり暮らすか。
 最近はそれでもよいような気がしてきたんだ。
 
「もう一つの手紙も預かっている。なにやら城の地下牢を清掃中、隠された扉を発見したようだ」
「なんか変な物を掘り出したか?」
 

 またデイドラ?
 ひょっしてブルーマの攻略に失敗した深遠の暁教団は、今度は再建したクヴァッチに再進撃してきたということか?
 
 これはほっとけないな。
 クラウドルーラー神殿へ行く前に、先にクヴァッチの問題を見ておく必要がありそうだ。
 
「そういうわけで、手紙は届けたぞ。じゃあまたのぉーい、やっ!」
 
 
 俺は、駆け去るイグナーの後を追って、クヴァッチへと急いだ。
 
 
 
 




 
 
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Posted by ラムリーザ