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ブルーマ防衛 中編 ~勇者達~

 
「私は戦場に行く! クラウドルーラー神殿に隠れるのは終わりだ! 来てくれ、ともに戦いに行こう!」
 
 
 マーティン・セプティム。
 
 彼は、この国で出会った人達のとは違った人だった。
 なんでもかんでも丸投げしてくる人たちとは違い、自分で行動を起こすべきだと言ってきた。
 それに、俺のことを友と呼んでくれた。
 人は俺のことをグランド・チャンピオンだのクヴァッチの英雄だのと持ち上げるばかりだ。
 特に最近の人などは、みんな同じ台詞でグランドチャンピオンを表面上褒め称えるだけ。また、クヴァッチの英雄と呼んでおけば、なんでも問題を解決してくれるとでも思っているのだろう。
 だがマーティンは違った。友として、一緒に戦おうと言うのだ。
 それに協力せずに居られるものか。
 緑娘の誘惑に辟易していたが、今なら言える。俺はマーティンを全力で支えていこうと。
 そして緑娘も、ようやくマーティン支持を表明してくれたのであった。
 
 ん、クヴァッチのマティウス隊長も、俺のことを友と呼んでくれるけどね。
 

「おっさきにーっ!」
「おー、伯爵の説得よろしくたのむぞーっ」
 
 説得は丸投げされたが、そのくらいは別に構わない。
 一緒にデイドラと戦うか、それが重要なのだ。帝国の衛兵は、オブリビオンゲートで戦ってくれるか? 戦わないだろ?
 ブルーマのバード隊長は見込みがあったけどな!
 
 
 マーティンの立てた作戦は、こうだ。
 
 マンカー・キャモランの楽園への扉を開くのに必要な最後の鍵は、グレート・シジル・ストーン。今回の戦略上目的は、その石を奪うこと。
 まずは敢えて、深遠の暁教団の計画を見逃して、ブルーマ郊外に3つの囮ゲートを出現させる。これは、以前スパイから奪い取った計画書に記されていた内容だ。
 どうやらグレート・ゲートとやらを開放するには、まずは3つの囮ゲートが必要になるらしいのだ。
 そこでグレート・ゲートが開けば、その隙に素早くゲート内からグレート・シジル・ストーンを奪ってしまうのだ。
 しかし、グレート・ゲートの出現は、ブルーマ攻撃のための攻城兵器を呼び出すことにも繋がる。そう、クヴァッチが襲撃を受けたときのように。
 だから作戦で重要なところは、グレート・ゲートを出現させて、攻城兵器にやられる前に、グレート・シジル・ストーンを奪う。
 少しでも遅れては駄目だ。ブルーマがクヴァッチの二の舞になってしまう。
 壊れたらまた再建すれば良いというのは無しな。守れるならば、守らなければならない。
 今回はクヴァッチの時とは違う。
 カリスマ的英雄マーティン自らが指揮を執ることになるし、この俺も無駄に牢屋に閉じ込められているわけでもないからね。
 
 

 そしてブルーマの城門前には、選ばれし勇者が集まっているのだ。
 各町から派遣された衛兵、戦士ギルド、魔術師ギルドの精鋭、また遠くエルスウェアからの戦士も訪れていた。
 雄たけびをあげているこの石像は誰かな? 二階堂盛義かな? 誰やそれ。
 
 

 場内謁見の間の入り口で、トルガンが待ち構えていた。
 説得などさせぬ作戦か?
 
「伯爵夫人は、重大な問題が進行中であるというクラウドルーラー神殿からの言葉を受け取りました。ですか現時点では、他に何も心配していません。いったい何が?」
「任せておけ」
 
 俺は短く答えて、トルガンを押しのけて先へと進んだ。
 事はシロディールの運命を左右するもの。執事ごときがでしゃばる場面ではないのだよ。
 
 
 そして俺は、ブルーマの伯爵であるナリーナ・カルヴァイン伯爵夫人の前に膝をついた。
 そういやあまり伯爵の前で膝をつくことなんてなかったね。例えばスキングラードのハシルドア伯爵とはいつも立ち話だし、アンヴィルの伯爵の前で膝はつきたくない。
 
「ごきげんよう。クラウドルーラー神殿からの知らせとは?」
 
 そこで俺は、マーティンから聞いていた戦いの計画を、伯爵夫人に語った。
 予想通りであったが、伯爵夫人は怪訝な視線を向けてきた。
 
「確かに決死の作戦ですね。しかしあなたの言う殿下……陛下? マーティンという方は、グレート・シジル・ストーンを得る為に、私の領地を危険に晒すつもりなのでか?」
「ここでアミュレットを奪還しなければ、ここだけでなくシロディール全土が危険に晒されます。いえ、すでにブルーマだけでなく、シロディールの危機だと考えてください」
「オブリビオンの侵攻を止めるには、この方法しかないのですか?」
「わざわざ敵が用意してくれたチャンスです。それに、俺も戦いますよ。クヴァッチでやれたことが、ブルーマでなぜできないと考えるのですか? 俺はデイドラにも負けません、絶対に勝ってみせますよ」
「あなたが初めてですね、デイドラに勝つと宣言してくれたのは。あなたはブルーマ近郊に出現したゲートもバード隊長と共に閉じてくれました。その言葉は信用するに値します」
「それほどでもない」
「戦況は絶望的ですが、踏みとどまって勇者の出現を待つしかないと考えていました。クラウドルーラー神殿に匿われていたという世継ぎは、勇者なのですか?」
「彼だけじゃありません、勇者なら集まっていますよ。最近城門前を見た事がありますか? みんなブルーマのため――いや、シロディールの未来を考えて集まってくれた勇者達です」
「――いいでしょう。疑っているわけではないのです。ブルーマの歴代領主は、神殿と長い付き合いがあります。我々の主人が誰であるかは心得ております。あなたの言うとおり、タロス教会でマーティンに会いましょう。そして、ゲートの封印を中断して、戦いの準備をするよう部下に命じます」
 
 

 そしてブルーマの伯爵は、バード隊長に守られてタロス教会へと向かっていった。
 城門に集まったみんなを見て驚くなよ。
 
 まぁあれだ。
 勇者だの英雄だのって一人である必要はないのだよね。
 俺に言わせてみたら、フラーも勇者だ。声のでかい大した勇者だ。本名は忘れたがw
 あと誰が言っていたっけ、英雄は酒場に行けばいくらでも居るが、歯医者の治療台には居ないと。
 ほら、酒場に行けばかつての英雄赤のラグナル――って誰だそいつは!
 
 
 というわけで、伯爵夫人が向かった、マーティンも待っているはずのタロス教会へと俺も急いだ。
 

 そこでは、丁度マーティンと伯爵夫人が対面したところであった。
 
「殿下。ブルーマ伯ナリーナ・カルヴァイン、参上いたしました」
「そう畏まる必要はありません。私はまだ皇帝ではないのだから。それに、帝位継承者という立場にも不慣れです」
 
 いや、ここは皇帝ですときっぱり言ってくれ。
 せっかくこっち側に引き込んだ緑娘が、まだチャンスがあるとまた要らん野望を抱いてしまう。
 でもマーティンは、この戦いで自分が帝位継承者としてふさわしいことを世に示したいと思っているのだろうな。
 これまでのマーティンは、クヴァッチでは俺に守られ、神殿ではブレイズに守られているだけの立場だった。
 今はまだ俺にしかわかっていないマーティンの志を、好きなだけ臣民に見せ付けてやるがよかろう。
 
 

「友よ、準備はできたか?」
「ふえ?」
「君の準備が整い次第、伯爵夫人は町の外にあるゲート封鎖を中断するよう部下に命じることになっている。その時が戦いの始まりだ」
「アークメイジよ、あなたさえよければ、私は戦いの準備はできています」
 
 突然俺に話を振ってくるマーティンと伯爵夫人。
 いや、マーティンが行こうと言えば行くよ。俺はあんたについていくだけさ。
 
「さあ早く出発の時を告げてくれ」
「えーと、やしゃしーんとでも言えばいいのかな?」
「なんだそれは?」
「俺も知らんよ、――ってかマーティン、これはあなたの戦いです。あなたが行くぞと言ってくれたら、俺はどこまでも共に戦いますよ」
「そうかありがとう」
 
 そして、マーティンは一呼吸置いて言った。
 
「それじゃ、ぼちぼち行こうか!」
 
 
 
 
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